2007年06月30日

教育実習生に送る~⑥エネルギー問題

  20世紀は工業化の進展とともに石油が貴重な資源と位置づけられてきました。また今世紀に入ってからも従来のOECD諸国に加えBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の飛躍的な経済成長により地下資源の減少や枯渇といった問題が生じてきています。石油については常にあと30年間で無くなると言われながら新たな油田の発掘がなされてきましたが今のままだと本当に30~40年で石油がなくなりその後10年でガスもなくなりそうです。
  最近の中国を見るとエネルギーの確保を国家戦略と位置づけ、アフリカや中近東を中心とした資源保有国に急速に接近しはじめています。また紛争が続くイラクや核開発問題で揺れるイランをはじめシベリア、サハリン、インドネシアの天然ガス等エネルギーをめぐる動きはますます活発化してきています。世界の発電量という観点で見ると火力が67%(3分の2)水力(17%)と電子力(16%)を合わせて33%(3分の1)となっています。
  一方日本のエネルギー事情を見ると自給率はわずかに17~8%に過ぎません。但しこの中には原子力発電分が含まれているため厳密に言えば水力発電分の4%しかないのです。言い換えると使用しているほとんどすべてを海外に依存しているということになります。日本におけるエネルギー問題は“海外依存度を減らす” “安全性を確保する”という二つの切り口で取り組まなければなりません。
  他国の例を見てもデンマークでは20%が風力発電になっていますし、ドイツでも4%という数字になっていますが、日本独自のエネルギー対策を早急に打ち出していく必要があると思います。これにはゴミを燃やす廃棄物発電、 家畜の糞や食品廃棄物を利用するバイオマス発電、潮力発電、燃料電池、太陽電池、日本海溝に眠っているメタンハイドレート等があげられます。
 また、最近バイオ・エタノールが脚光を浴びるようになってきましたが、人間の食料をエネルギーに振り向けることに対する論議も今後大いに出てくると思います。いずれにしても日本にとって重要なテーマであることは間違いありません。

  本日で教育実習が終了しました。実習生の皆さんには、これまで掲載した内容も含めて、直筆の校長メモを10枚お渡ししました。いずれも我々にとって身近な内容であり、マスコミ等では常に報道されているものばかりです。今後の研鑽を心より祈っています。

2007年06月29日

教育実習生に送る~⑤21Cは水の世紀

  20Cが「石油の世紀」と呼ばれるなら21Cはまさに「水の世紀」です。
この意味は“水によって世界が幸せになる”というのではなく“水をめぐって世界のいたるところで紛争が起きる”ということです。
地球上に生存できる人間の限界は70億人という説がありますが、現在既に世界人口は65億人を突破しており、このままでは10年後には72~3億人、20年後には80億人を超えることになります。
  世界水ビジョンによると、2025年には世界人口の4割が深刻な水不足に直面するということになっています。今でも毎年300~400万人が水系の伝染病により、また200万人以上の児童が下痢で死亡しているという実態から見ても、水というものに真正面から取り組んでいかなければならないと思います。
 以前アラル海の悲劇が伝えられましたが、隣国の中国では三大河川の一つと言われていた黄河が干上るといった事態が起きたり、世界各地で砂漠化が急速に進行しています。水が不足することにより植物が育たなくなり土地の荒廃が進みます。これまで木に蓄えられていた水がなくなり更なる砂漠化を生み出し、農作物が育たない環境に繋がっていくということになります。米1kgを生産するには約8t、小麦なら4tの水が必要ですし、牛や豚、羊等の家畜を育てるには穀物の4~10倍位の水が必要になります。
 梅雨や台風による降雨のため定期的に水がもたらされる日本は幸運であると思われますが、食料の60%を海外に依存し、さまざまな工業製品を輸入していることを考えると、水不足は大きな影響を我々の生活に与えると思わなければならないのです。現地の水を使って作られた品物がないと、日本社会は成り立たないということを肝に銘じておかなければなりません。

 実習も明日で終了します。この期間中には多くの経験をしたことと思いますが、最後までしっかり取り組んでほしいものです。

2007年06月28日

教育実習の総仕上げ

  教育実習の期間も残り少なくなりましたが、今週に入って実習の総仕上げとも言うべき多くの授業が始まりました。
この授業に合わせて、いくつかの大学からは先生が本校を訪問され、直接学生の授業を観察されています。
  本日も朝から数多くの授業が行なわれており、私も時間の許す限り彼らの授業を見学しました。今回実習に来ている学生の全員が本校卒業生ということもあり、先輩としての自覚と誇りを持って教壇に立っているように感じました。また、教える内容についてはかなりの時間をかけて本校の先生方から指導を受けて綿密な準備をしてきたことがうかがわれました。1時間の授業をしっかりと行なうためには、どれだけ多くの時間をかけて準備をしなければいけないかを体験したことでしょう。
  また、1時限目には数学科としての研究授業も開催されましたが、担当するのは今年本校に来られた他校での教職経験のある先生です。
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本校では、年2回〝授業を磨く〟という趣旨で教科毎に研究授業を行なうことになっていますが、この授業には数学科の先生のほかに、実習生も積極的に参観し熱心にメモを取っていました。生徒を授業に引き込む力やわかりやすい教え方等参考になることが多かったのではないかと思います。
  まさに、教えることは学ぶこと、教えるためには自ら学ばなければなりません。教員は常に学ぶ姿勢を持ち、毎回の授業が真剣勝負であるという気持で取り組むことが大切であると痛感しています。
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2007年06月27日

失敗を恐れず果敢に挑戦

6月27日(水)、全校朝礼において成功するための秘訣についての話をしました。
〝人は誰でも成功して充実した人生を送りたいと思っているはずです。それではどうすれば成功することができるのでしょうか。そのためにはまず自分なりの夢をしっかりと持つことが必要です。次に夢の実現に向けて行動を起こさなければなりませんが、この段階で躊躇し、なかなか第一歩を踏み出すことができないというケースが多いのです。この原因は失敗しないだろうか、失敗したらどうしようという恐れが強すぎるからです。しかし、やらなければ失敗しないかわりに成功することは絶対にありませんし、思い悩んでいるうちに時間だけが過ぎていきます。そして、この繰り返しでは最終的に実に消極的な人生になってしまいます。
社会で活躍している人は、必ず色々なチャレンジをし、失敗をしています。言い換えると現在成功している人は最も多くの失敗の経験を持っている人なのです。何事にも失敗はつきものですが、失敗したからといって落ち込むだけではなく、これらを素直に受け止め自分が至らなかった点を反省し、次に生かしていくという姿勢が大切です。
今、定期考査も終了し順次答案が返却されていると思いますが、できなかったところをしっかりと見直して、同じ間違いを繰り返さないようにしてください。〟

本学園の初代理事長である鳥井信治郎氏は常々「やってみなはれ。やらなわかりまへんで。」とチャレンジすることの大切さを訴えておられたようですが、全員が失敗を恐れず果敢に挑戦していって欲しいと思っています。

2007年06月26日

学力伸長度ランキング全国7位に

  この度、週間東洋経済(6/30増大号)が発売されました。本号には〝子どもの学力を伸ばす学校はどこか。東大合格者数だけではわからない学校の実力を「学力伸長度」ランキングとして公表する〟という特集が組まれています。早速、買い求めて記事の内容を確認しましたが、これによると全国にある数多くの私立中高一貫校の中で雲雀丘学園は第7位にランク付けされていました。
  学力伸長度とは、中高6年間でどれだけ学力が向上したかを試算したもので、算出方法は「高校卒業時偏差値」-「中学入学時偏差値」となっています。ちなみに上位の学校をあげると、1位 青稜(東京)、2位 聖徳学園(東京)、3位 暁星国際(千葉)、4位 順天(東京)、5位 賢明女子学院(兵庫)、6位 桐蔭学園(神奈川)という順位です。偏差値の高い生徒を募集すれば進学実績が上がる、その結果を大々的に公表することにより、優秀な生徒の確保をはかるという短絡的な考え方では、教育の目的が大学への進学ということになってしまいます。本校はさまざまな個性を持ち、能力的にも幅のある生徒が入学してきていますが、これらの生徒一人ひとりに対するきめ細かい進路指導が何よりも大切であると考えています。本年度より導入した高校のコース制、来年度よりスタートさせる中学の一貫選抜コース、発展コースもこの考え方がベースになっているのです。本校では日常の教科指導や生活指導においても、先生方の献身的な努力によって実にきめ細かい生徒対応がなされているように感じています。
 今回の実績を励みに、来年度は全国ナンバーワンを目指して取り組んでいきたいと思っています。
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2007年06月25日

高校囲碁選手権大会県予選で男女共優勝

6月23日(土)県立兵庫高校で行われた『第31回全国高校囲碁選手権大会個人戦県予選』において、本校は見事男女アベック優勝を果たしました。
県予選は男女とも県内の上位8名によって争われましたが、とりわけ男子については出場者全員がアマ五段以上というハイレベルであり、いずれも白熱した戦いが展開されました。本校の百田君(1年)は初戦優勝候補の滝川高校(団体戦兵庫県代表)主将の福島君(3年)に大接戦の上、3目半勝ちしました。その勢いで次々と強豪をなぎ倒し4戦全勝で見事に優勝し、7月25日日本棋院において開催される全国大会への出場権を手にしました。女子は団体戦の主将としてすでに優勝を飾り、全国大会への出場が決定している小原さん(1年)が順当に勝ち進み優勝しました。
百田秀栄君はかつて囲碁のプロ養成の「院生」に所属していましたが、中学2年でプロ棋士になることを断念し、現在アマチュア六段としてさまざまな大会に出場し対局を重ねているようです。
また、小原侑子さんは関西棋院のプロの指導を受け現在アマチュア五段として活躍しており、今年の3月には全国女子アマチュア選手権の関西代表として全国大会へ出場しています。
囲碁は黒石、白石を交互に打つことにより、最終的には陣地を多く取るというゲームですが、部分的な戦いに負けても全局的に優位に立って勝負に勝つ、相手の石を取ったと思って油断しているといつの間にか相手に取られるといったことから非常に変化に富んでおり、このため多くの戦国武将が愛好したと言われています。
そして、驚いたことに世界の囲碁人口は4200万人もおり、中国の2500万人を筆頭に、韓国900万人、日本500万人、中華台北150万人の順になっています。毎年、世界囲碁選手権が開催されていますが、参加国は60ヵ国を超え、まさに国際的な競技になっています。
これから本校の囲碁・将棋部の活躍に是非注目しておいてください。

2007年06月24日

修学旅行後記~お礼状

今回の北海道への修学旅行を終えるにあたって、生徒達に対してお世話になった数多くの方に感謝の気持を持って欲しいということを伝えました。生徒達もファームステイを受け入れていただいた農家の皆さんにお礼の手紙を認める(したためる)ことになると思います。私も休日にお礼状を書くつもりでいたところ、その前に何人かの方から逆に電話をいただき恐縮してしまいました。
お世話になったり、こちらからのお願いごとを聞き届けていただいた時には、相手の方に素直に感謝の気持を伝えることが大切であり、マナーの一つであると思います。しかし、今は昔と違って手紙や葉書だけではなく、電話・ファックス・メール等さまざまな伝達のツールがあるにもかかわらず、この簡単なことができていないようです。
本校においても色々なご支援をいただいた方に対して、礼を失しているようなケースもあるのではないかと感じます。また、私自身も講演や訪問の依頼を受けることがありますが、事前には頻繁な連絡があったにもかかわらず、事後には何の連絡もないといったこともしばしばあります。よくできない理由に、忙しくて時間がないといったことがあげられますが、高度な密度の高い仕事をされている人ほど、ゆきとどいた心遣いをされていることが多いのです。
私も今回の修学旅行でお世話になった方に、記念写真と共にお礼状をお送りしたいと思っています。

2007年06月23日

教育実習生に送る~④人口爆発とBRICs

先日、教育実習生の皆さんに世界の人口はどれくらいかという質問をしたところ、予想に反して正答率は極めて低い結果となりました。 現在、食糧、水、エネルギー、環境破壊等数多くの地球規模での課題がありますが、これらの底流にあるのは人口爆発といわれる急激な人口増なのです。
今、世界の人口は約65億人ですが、これからは毎年約7~8000万人ずつ増加しこの状況が続けば2050年には100億人を突破することが予想されています。振り返ってみると20世紀は飛躍的な工業化の進展に伴ない、100年間で人口はほぼ3倍になり物が増え続け大量消費型の社会を形成することになりました。。この結果、これまで何億年何千万年もかかって蓄積されてきた貴重な資源の大半をすべてこの100年間余で費消するということになってしまったのです。
地球上で生存できる人口の限界は70億人という説もありますが、このままでは間もなくこの数字を超えるのはまちがいありません。今はこのような人口爆発という課題解決に向けて真正面から取り組んでいかなければならない時なのです。
 現在国別の人口を見ると1位~10位は次のとおりです
 1位 中国    13.2億人 6位 パキスタン   1.6億人  
 2位 インド   11億人   7位 ロシア     1.4億人
 3位 アメリカ  3億人   8位 バングラデシュ 1.4億人  
 4位 インドネシア2.2億人  9位 ナイジェリア  1.3億人
 5位 ブラジル  1.9億人  10位 日本      1.3億人

これを詳細に見ると上位10カ国で世界人口の6割、中国とインドで4割を占めることになります。そして近い将来インドは1人っ子政策をとる中国を抜いて世界最大の人口保有国になることが予想されています。
また、今後大きく成長が見込まれる国として注目を集めているのがBRICsなのです。これは各国の頭文字をとったものでB:ブラジル R:ロシア I:インド C:チャイナ(中国)です。
これらの国が急速な経済成長を遂げるということは、これまで以上に食糧やエネルギーといった問題が深刻化してくるということなのです。現在世界で起っている政治、経済、外交といったさまざまな出来事と人口爆発は極めて密接に関係しているのです。
これから教員として、教科指導のスキルを磨いていくのと同時に、是非大きな視点を持つように心がけて欲しいものです。

2007年06月22日

教育実習生に送る~③これからの教師18条(Ⅲ)

修学旅行も無事終了しました。
教育実習生の皆さんも毎日新しい経験をしていることと思いますが、皆さんと生徒の年齢差は高校3年生で4歳、中学1年生では7歳です。そして、皆さんが教師になってしばらくの間はこのような状況が続くことになります。生徒達にとっては恐らく兄や姉のような存在ではないかと思います。
しかし、入学してくる子どもの年齢は変わらない一方で、自分自身は確実に1歳ずつ年をとっていきます。そして子どもとの年齢差は開いていきます。
教師だけではなく、どのような職業であっても、絶えず自己研鑽することにより、年々レベルアップをはかっていかなければなりません。現状にとどまることは退歩を意味します。変化に対応していく力が必要なのです。また、自分ひとりで何でもやるという考えは尊いものですが、一人の力には限界があります。時間がないからできないということではなく、いかに他の人の力を借りるか、素直に協力を求めるという柔軟な姿勢が大切であると思います。
これからの教師18条の続きを掲載します。


4.いつも新しい風を

  第13条 子どもも社会も日々変化している
       停滞は後退になると考えよう

  第14条 「昔からこうしてきた」だけでは行き詰まる
       五分五分なら新しいことに挑戦してみよう

  第15条 教育の原理や真理は日々の子どもたちとの
       活動の中にある それを見つけて実践に生かそう

  第16条 良い情報の公開は後でも間に合う
       悪い情報ほど躊躇せず公開して改善材料にしよう
 
5. 子育てネットワークの活用を
 
 第17条 ひとりの教師の力は小さいようで大きい
       自分の実践を内外の研究会に発表してみよう
       自分の個性と能力を学校や地域で発揮してみよう
 
 第18条 教師のひとりの力は大きいようで小さい
       家庭や地域の教育力を最大限活用させてもらおう
       様々な人との出会いをつくって社会の一員としての
       自分を磨き高めよう

2007年06月21日

北海道最後の夜

修学旅行も4日目を迎えましたが、生徒達にとって今回のファームステイは忘れえぬ思い出になったようです。
生徒達に聞くと「野菜やイチゴやトマトをお土産にいただいた」「ジャムの作り方を教えてもらった」「わざわざ温泉に連れて行ってもらった」「ジンギスカン料理をご馳走してもらった」「サイクリングや星を見に連れて行ってもらった」等農作業以外にもさまざまな体験をしたようです。
農家の皆さんには本当に親切にしていただき心より感謝しています。
お別れ式では農家の方と抱き合っている者、涙を浮かべている者、最後の写真撮影をする者等の姿が見受けられました。
その後、日本の最北端にある旭山動物園を訪れました。
この動物園は色々な工夫を凝らした結果入場者数は全国第2位で、他の動物園にはない白くまやアザラシなどの他の動物の自然の動きを見せることをセールスポイントにしています。
約3時間の見学を終え15時に出発、札幌を経由し夜、定山渓のホテルミリオーネに到着、夕食を摂った後、藻岩山に登り札幌の夜景を楽しみました。
展望台からは札幌市内が一眺できあまりの美しさに全員が感嘆の声をあげていました。
このように強行軍の一日でしたが充実した北海道最後の夜が終わりました。
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2007年06月20日

大切な土づくり

3日目はいよいよこの修学旅行のメインとなる“ひばりスペシャル大地の学校”です。
8時30分から15分間隔で順次バスに分乗し東川地区、そらの地区、富良野地区のファームやペンションに向いました。
私はサホロリゾートからバスで3時間のところに位置する東川地区のファームステイに同行しました。
農家の方との対面式を行ない生徒達はそれぞれの車で農家に向いました。
中には毎年本校の生徒を受け入れていただいている方も多くおられるようです。
昼食後、いくつかの農家を訪問させていただきましたが、生徒達はトマトの芽かき、イチゴのうね間のわら敷き、ブロッコリーの植えつけ、かぼちゃの植えつけ、木材の切断等慣れない作業に懸命に取り組んでいました。
色々とお話しをうかがうとすべて有機栽培にこだわっておりそのために牛糞、鶏糞、魚粉、米ぬか等を混ぜあわせて発酵させてしっかりとたい肥をつくっているとのこと。
この土づくりのために何年もかかったが土が良くなってくると自然に立派な収穫ができるようになるとのお話しでした。
そのためか、いただいたイチゴやトマトも甘味があり格別でした。
わが国の食料自給率は40パーセントしかなく若者の農業ばなれも進んできています。
今回の体験を通じて生徒達が食の大切さや農業の楽しさ、苦労を理解してくれることを期待しています。
生徒達を心よく受け入れていただいた農家の皆様に心より感謝申し上げます
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2007年06月19日

充実した2日目が終了

修学旅行2日目は6時起床、6時30分のラジオ体操でスタートしました。
バイキング方式の朝食を摂った後、アクティビティを午前に行なうグループと
午後に行なうグループの2つにわかれて行動しました。
アクティビティのコースはラフティング、マウンテンバイク、乗馬レッスン、
ステンドグラス製作体験、そば打ち体験、搾乳体験、パークゴルフ、カナディアンカヌーがあり生徒達はそれぞれが希望するコースに参加しました。
あいにく波が高くなったためカヌーは中止となりましたが各コースに参加した生徒からは次のような感想が寄せられました。
空知川でのラフティングは川に飛び込んだり泳いだりといったハプニングがあったが、思いっきり身体を動かすことが出来すっきりしました。
マウンテンバイクは往きは急勾配を下るので思った以上にスピードが出て転倒しないよう必死でした。
また、復路は逆に上りが多くて苦労しました。
ステンドグラス製作はさまざまな色のガラスをカットしたり削ったりハンダづけをする等初めての作業でしたが完成したおやすみライトを見て感動しました。
搾乳は最後にしぼりたての牛乳を味わうことができ本当に美味しかったです。
また、全員が昨年からオープンしたエゾヒグマを自然に近い形で放し飼いにしている“ベアマウンテン”を見学しました。
ヒグマは国内最大の哺乳類で北海道だけに生息していますがこのままでは絶滅のおそれがあるようです。
夕食後は7時より体育館でレクリエーションを実施しました。
男装、女装、一芸大会、鬼ごっこ、フォークダンス等大いに盛り上り2時間はあっという間に過ぎ去りましたが、生徒達の若さのパワーと思いがけない能力に驚かされました。
こうして充実した修学旅行の2日目は終了しました。
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2007年06月18日

北海道の広大さを味わう

 朝7時30分に全員が伊丹空港に集合、搭乗手続きを終え約1時間半の飛行の後新千歳空港に無事着陸しました。
空港周辺の混雑のため、やや遅れて昼前に最初の訪問先である
ノーザン・ホース・パークに到着しました。
ここのコンセプトは“こころを潤す季節と遊ぶ”ということで15万坪の広大な敷地の中にサイクリング、テニス、ランドカー、パワーゴルフ、バルーンアーチェリー、バスケット等のアミューズメントが点在しています。
日曜日ということで多くの団体や家族づれの客が訪れていました。
最初に記念撮影をした後生徒達は約1時間にわたりソフトクリームを食べたり気に入ったスポーツを楽しんだりして自由な時間を過ごしました。
ケーズ・ガーデンでカレーライスの昼食をとった後一路宿泊地であるサホロリゾートに向けて出発。
約4時間道路の両側の白樺やエゾマツ・トドマツをながめながらバスの旅を楽しみました。
途中、休憩した日高と十勝の境にある日勝峠からは十勝平野の全貌が見わたせ全員が北海道の広大さを実感しました。
このように通常内地では味わうことの出来ない数多くの体験をし、修学旅行の第一日目が終了しました。
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2007年06月17日

修学旅行に出発

本日(6月17日)から21日までの5日間、高校2年生が北海道に修学旅行に出かけますが、
今回は私も同行します。これにあたっての「旅行のしおり」の巻頭言を紹介します。

いよいよ、皆さんは高校時代における最大のイベント「修学旅行」に出発します。修学旅行では、見学・体験を通して教科書では得られない知識を広め、実物に接する経験から将来の生活に役立てること、数日間クラス・学年の友人・教員と寝食を共にして親しみや絆・信頼感を深める機会とすることができます。
訪問地の北海道は日本の最北に位置し、雄大な大地と素晴らしい自然に包まれた魅力が一杯のところです。サホロでの大自然を舞台としたアクティビティーの企画や、富良野でのファームやペンションにステイし、そこに“ひばりスペシャル大地の学校(新たな自分を求めて)”を開校して、日常生活では味わうことのできない生産の喜びや苦労、食の大切さ、農家の人達との心の交流がはかれる企画など、素晴らしい経験ができることと思います。
“経験が人をつくる”という言葉がありますが、この5日間の修学旅行を通じて得た経験は、皆さんの人生にとって何ものにもかえがたいものになるでしょう。
札幌農学校(現北海道大学)開校の有名なクラーク博士が次のように話しています。「この新設された農学校は、将来の北海道ひいては日本を支える大きな意義を持っており、ここで学ぶ生徒諸君は、その重大な責務を自覚し、そこに厚い信頼を築き上げ、そのことに名誉あることを心しなければならない。そのためには、常に健康に留意し、食欲を慎み、勤勉の習慣をつけ、真剣に努力すべきである。この向上心をもって充実した日々を過ごすべきである。」と説いた言葉があります。さらに続けて、「多くのことは必要ない、ただひとつ紳士であれ」とも説いています。この紳士の意味は、定められた規則は厳として守るとともに、自分の良心に従って行動すべきであるというものです。その後、この学校には規律正しい校風や自己の行動に積極性、および責任感が備わってきたといわれます。
雲雀丘学園は“関西を代表する素晴らしい学園”を目指しています。一人ひとりが学園を代表しているということを自覚し、自分の行動に責任と誇りを持って、活気ある修学旅行にして欲しいと思います。

2007年06月16日

第2回慶応義塾大学連携講座の開催

 6月16日(土)午後、慶應義塾大学大学院政策メディア・研究科の土屋大洋(つちや もとひろ)准教授による連携講座が開催されました。
 今回は事前に、1930年に書かれたスペイン生まれの哲学者であるオルテガ氏の著書『大衆の反逆』と1991年に書かれたノーム・チョムスキー氏の『メディア操作:世論操作のめざましい成功』の二つの課題文が示され、この内容を参考にしながら今の社会に必要だと思うことを2000字以内にまとめてレポートを提出するということになっていました。二つの文章はそれぞれ「民主主義」「大衆社会」「メディア」等をテーマとして書かれていますが、高校生のレベルとしては若干難しい内容であり、しかも締め切りが中間テストの直前ということもあってしっかりしたレポートが書けるのかどうか心配していましたが、11人がきっちりと自分なりの意見をまとめて提出しました。
 最初に土屋准教授より「慶応義塾大学の理念である独立自尊、実学の精神、半学半教」、「SFCが目指す問題解決型人間や創造型人間の育成、一生役立つ勉強の仕方を学んでもらうという教育方針の説明」、「政治とは希少な資源の配分であるということ」、「独裁、全会一致、多数決といった物事の決め方」等についての説明がありました。続いて2グループに分かれて「どうすれば政治を変えることができるか」また「エリート層と大衆層のどちらを支持するか」をそれぞれのメンバーでまとめた後、グループ間で討議しました。
 最後に、慶応義塾大学は官の力ではなく、民の力で世界を変えることを目指しており、是非皆さんは世界を変えていく人材になって欲しいという言葉で締めくくられました。
 講座は予定時間を1時間以上もオーバーすることになりましたが、生徒達は通常の学校での授業では得られない体験をし、大いに満足したようです。
 長時間にわたり熱意溢れる講義をいただいた土屋准教授に心よりお礼申し上げます。
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2007年06月15日

教育実習生に送る~②これからの教師18条(Ⅱ)

 前回に続いて、第二回目になりますが、「教師にとって命」というべき授業を磨くということが何よりも大切です。
 日々の授業は真剣勝負であるという気持で、全力投球してください。

 3. 勘に頼らず「仮説」「検証」を

  第9条 「仮説」がない授業は行き当たりばったりになる
 こうなればこうなるはずと「仮説」をたて、やってみた結果を「検証」しよう
 「仮説」「検証」のある授業は失敗してもその理由を追求すれば発展につながる

 第10条 研究授業は「仮説」「検証」を教師同士で学び合う高度な研究の場
 最大限活用しよう

 第11条 日々の授業を「研究授業」にして子どもを伸ばそう
 自分を伸ばそう

 第12条 型から始めた授業も「型」から外れて初めて自分のものになる
 自分の授業を楽しめる教師になろう  

                          ≪続く≫

2007年06月14日

教育実習生に送る~①これからの教師18条(Ⅰ)

今週から、教育実習生を受け入れていますが、本校においては学生をお預かりしているという感覚ではなく、厳しく指導していきたいと考えています。
そのため、毎日校長としての私の思いを伝えるため、毎日『校長メモ』を渡しています。そのメモの内容をこれからシリーズで紹介していきたいと思います。 
第一回目は、先日教育関係の仕事をされている方からいただいた「これからの教師が心がけなければならない18のポイント」ですが、現在教員として生徒指導にあたっておられる先生も、今一度原点に戻って是非読み直してください。

1.子どもが主人公の学校づくりを
第1条 正面から子どもに向かう姿勢と燃える情熱を仕事のエネルギーにしよう
第2条 子どもの個性を磨き、子ども達が綺羅星のように輝き合う学級をつくろう
        自分の個性を磨き教師なかまが綺羅星のように輝き合う学校をつくろう
第3条 子どものサインと願いを的確につかんで子どもに信頼される教師になろう 
第4条 学校に行くのが楽しみな子どもにしようその子を待つのが楽しみな教師になろう

2. 学ぶ意欲が湧く授業の創造を
第5条  子どもが「学ぶのが楽しい」という授業を創ろう
第6条  子どもが伸びてこそ教師の価値がある どこよりも分かりやすい授業をしよう
第7条  今や学校は教育の買手(子ども)市場 売手(教師)の得手を「売りもの」にしよう
得手が見つからなければ今からでも捜そう つくろう
第8条  他の教師の良さを見つけよう それを羨むのでなく自分を磨く発奮材料にしよう
                ≪続く≫

2007年06月13日

中学改革について~⑨特色あるキャリア教育の充実

 本校は地元の皆さんの強い思いで創設されましたが、その中心は雲雀丘学園の初代理事長であるサントリー株式会社の創業者である鳥井信治郎氏です。その後今日に至るまで、本学園は同社から人や資金はもとより、生徒の教育面に対する色々な支援をいただいています。
 一昨年の愛知万博においては「子ども環境サミット」が開催され、本校の中学生12名が日本代表として参加しましたが、これにも同社からの絶大な支援があったのです。このサミットは世界各国の子ども達が一堂に会し、それぞれの自分達の取り組みについての研究発表を行ない、より良い環境について考えるというものですが、これに備えて本校の生徒達は事前に同社のドリーム・キッズ・プロジェクトが主催する熊本県にある〝森と水の学校〟に参加し、水に関するさまざまな研究をさせていただきました。
このような経緯も踏まえ、来年度より『サントリー特別講座(仮称)』をスタートさせるという方向で、現在細部のツメを行なっています。本校においては、人間教育の充実を教育方針の基本に位置づけていますが、この講座の狙いは、現在人類の最大のテーマである地球環境の中の水や食糧、エネルギー、生態系の変化、大気汚染といった各分野についての特別授業を展開することにより、子ども達に環境についての認識を深めさせ、併せて、人間力を高めていこうとするものです。具体的には、社会で活躍している一流の人材による講演や企業の研究現場や物づくりの実践事例等の本物に触れさせることを検討しています。
 また、これまでも、本校においては将来の進路選択を視野に入れた校外学習や職場訪問、職業インタビュー、「わたしの仕事館」での仕事体験等独自の進路教育を行なっていますが、これらと今回の特別講座との連携を強化することにより、生徒達が将来の夢を見つけ出し、明確な目標を持って学習するようにしていきたいと考えています。
そして、雲雀丘学園中・高校としての特色あるキャリア教育の更なる充実をはかっていく予定です。

2007年06月12日

「AO入試」を目指す生徒に期待すること

 以前の校長通信で、慶應義塾大学や大阪府立大学のAO入試について紹介しましたが、近年、AO入試を実施する大学は、国公私立ともに年々増加しており、本校でもその対策を強化するために本年度対策チームを編成しました。
 それでは、AO入試に向いている生徒とはどのような生徒なのでしょうか。そもそも、ペーパーテストでは測れない問題発見能力や課題解決能力を重視する選抜ですから、面接や集団討論、そして小論文試験が実施される大学が多いようです。大学によっては、個性的な選抜方法を実施するところもあり「セミナー方式」「プレゼンテーション方式」「フィールドワーク方式」「ディベート方式」等、本当に様々です。
ある業者が、大学の入試担当者に実施したアンケートによると、AO入試の受験生にどのような資質・能力を期待しているかという問いには、1.コミュニケーション力 2.探求心  3.論理的思考力が上位を占めたそうです。従って、無口よりはっきりと自分の考えを主張できる生徒、課題にじっくりと取り組める生徒、そして世の中の色々なことに興味があり、自分なりの目標を持っている生徒等が向いているということになるのかも知れません。但し、一般入試合格者と比較すると、どうしても基礎学力不足は否めないなどの理由で、AO入試合格者に対する特別教育(フォロー教育)を実施している大学が多いということです。このことからもわかるように、しっかりとした基礎学力の修得の上に立ってAO入試を選択することが大切なのです。受験に際しては、テストがないからといって、基礎学力をつけることをおろそかにせず、取り組んで欲しいと思います。
 また、AO入試合格者が入学後、大学生活においてどのような能力を発揮しているか、という問いには、1.リーダーシップ力  2.コミュニケーション力  3.言語表現力 があげられました。
そして、入学後にはAO入試合格者が一般入試合格者よりも著しく学力伸長度が高く、学生たちのリーダーとして活躍しているということも多くの大学で指摘されています。

2007年06月11日

教育実習生を迎えて

 6月11日(月)、24名の教育実習生を迎え、実習にあたってのオリエンテーションを行ないました。冒頭、私の方から、「皆さんは実習生という気持でいるかも知れないが、あくまで生徒にとっては勉強を教えてもらう一人の先生である。生徒達が皆さんを見て、将来先輩のようになりたいと憧れるような言動をお願いしたい。人を教えるためには教えられる人の何倍も勉強することが大切である。この教育実習を通じて多くのことを経験して人間的にも成長して欲しい。」という話をし、数年前に教育関係の仕事をされている方からいただいた『これからの教師Ⅰ8条』のうちの最初の3項目12条を渡しました。この3項目には「子どもが主人公の学校づくりを」「学ぶ意欲が湧く授業の創造を」「勘に頼らず仮説、検証を」という表題がついています。その後、最近の新聞記事の中から抽出した一般常識20問が記されたプリントを配布し、それぞれ回答を書いて提出していただきました。日本や世界の人口、主要国のトップの名前、食糧やエネルギーの自給率、出生率、為替レート、GDP、日経平均株価、サミット開催国、文部科学大臣の名前を問うといったごく常識的なものでしたが、その答えを見て正直なところ愕然としました。また、あいさつ(挨拶)という漢字もほとんどの人が書けませんでした。彼らは間もなく大学を卒業し、社会に出ていく人達ですが、この程度のことは将来どのような仕事をするにしても必要だと思います。
 この中の何人が将来教員の道を目指すのかは判りませんが、この教育実習期間中にしっかりと自分なりのスタンスを身に付けるよう指導していきたいと考えています。

2007年06月09日

百舌鳥化工会定時総会に出席して

 6月9日(土)、大阪府立大学を訪問し、化学工学科の定時総会に出席しました。国公立大学も独立法人化され、現在多くの大学で独自の改革が進められていますが、同学科についてもさまざまな取り組みが行なわれています。その一つは『平成20年度JABEE認定』を目指しての取り組みです。耳慣れない言葉ですが、JABEEとはJapan Accreditation Board for Engineering Educationの略で、「日本技術者教育認定機構」と訳されています。
 これは、技術系学協会と連携しながら技術教育プログラムの認定・審査を行なう非政府団体であり、大学や高専の工学教育が妥当なレベルにあるかどうかを審査・認定することになっています。JABEEが教育機関に求めているのは、どのような人材を卒業させるかという成果の重視、学習・教育目標の公開、国際的同等性の確保、システムの構築、試験問題・試験結果・論文・作品などの明示等ですが、説明をお聞きし、大学改革に真正面から取り組んでいこうという強い姿勢が感じられました。
 興味深かったのは、目標設定(P)→実施(D)→点検・評価(C)→改善(A)という継続的なシステムの枠組みが構築されていることです。化学工学科教育委員会、教室会議、学生支援委員会、カリキュラム委員会、教育貢献度評価委員会、外部評価委員会、点検評価委員会、FD委員会が連携された『教育改善システム』は、大学だけではなくすべての校種の学校にも参考になるように思いました。
また、大阪府立大学では、平成20年度全国の国公立大学のトップを切って、海洋システム工学科、電子物理工学科、知能情報学科、電気情報システム工学科、化学工学科の5学科においてAO(アドミッション・オフィス)入試が実施されます。基礎学力と意欲・適性・人物を多角的に評価する選抜試験を比較的早い時期(8月)に実施し、半年間の充実した入学前教育等をめざそうとしています。
 その後、私から中学や高校の教育現場の状況について話をし、懇親会でも多くの方と情報交換させていただきましたが、「高校からの要望があればいつでも出かけていきます。」という力強い言葉をいただきました。
 従来、閉鎖的な色彩の強かった大学においても、さまざまな改革が行なわれており、まさに開かれた学校づくりが進められていることを実感しました。

2007年06月08日

中学改革について~⑧社会が求める人材(Ⅱ)

 これからの社会が求めているのはどのような人材なのかを知るためには、時代のトレンドをしっかりと把握することが大切です。これからの時代には従来の枠組みや仕組みを再構築することが不可欠ですが、これらを実現するためには、高度成長時代に社会が必要としていた〝指示されたことを正確にやり遂げる〟という能力だけでは不十分です。数年前に、関西経済同友会が会員企業を対象に求められるビジネス・スキル(能力)を調査しました。
 この結果によると1位から10位までは次のとおりです。
  1位・・・問題を発見する力
  2位・・・論理的に考える力
  3位・・・行動力・実行力
  4位・・・語学力
  5位・・・知的好奇心
  6位・・・変化に対応する力
  7位・・・自己表現力
  8位・・・情報収集力
  9位・・・コンピューター活用能力
 10位・・・交渉能力
 この中のトップは問題発見能力です。現在、日本の学校教育では自ら問題をつくるということはほとんどなく、与えられた問題をいかに解くかという能力が重視されており、答えは一つで○か×しかありません。言い換えるとこの能力が高いか低いかで評価が決まるというシステムが永年かかって作り上げられてきました。
 しかし、社会ではこれが正答といったものがありません。つまり答えは一つではなく色々あるということです。更に何が問題なのかを見つけ出す力、突き詰めていくと問題をつくる力が要請されるのです。
 今の学校教育において、与えられた問題を解くことに慣れきっている生徒達には自ら問題を発見し、自ら解決していくという力が十分備わっているとは言えません。
 このような反省に立って、今回の中学改革においては、極力一方的に与えるのではなく、創造性豊かな人材を育てる教育カリキュラムを導入していきたいと考えています。

2007年06月07日

中学改革について~⑦社会が求める人材(Ⅰ)

 教育の役割は最終的に〝社会に役立つ人材を育てること〟と考えるなら、社会がその時々に応じてどのような人材を必要としているのかをしっかりと把握しておくことが大切です。
この60年の政治・経済の動きを見ると、わが国は戦後の混乱期、復興期を経て高度成長期において世界の奇跡と言われる大発展を遂げました。その後バブル経済の中で自らを見失い、バブル崩壊後は〝失われた10年〟と言われる低迷期を迎えもがき苦しんできました。そして、やっとこの苦境から脱却し、新たな道を模索し始めているのが現状です。また、世界の中でそれぞれの国の位置づけも変わりつつあり、今後BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)やベトナム、タイ、オーストラリア等の国々の急成長が見込まれるようになってきています。
 過去の歴史を紐解くと、それぞれの時代によって社会が必要としている人材も大きく変わってきています。わが国においては太平洋戦争によって壊滅的な打撃を受け、まさにゼロからのスタートを余儀なくされたため欧米諸国に追いつくことが最大のテーマでした。そのためには、欧米の手法を真似ながら脇目もふらずに与えられた範囲の仕事を正確に効率よくこなしていくことが最重要であるとの考え方が定着し、社会もこのような人材を求めることになりました。〝出る杭は打たれる〟という言葉がありますが、この時代にあっては枠からはみ出ることはマイナスのイメージとなり、このような人は評価されませんでした。同時に、学歴によって地位や処遇(給与)が決まるという人事システムが確立された結果、大学への進学率が大幅にアップすると共に有名大学への受験競争が激化し、偏差値をベースとした知識偏重型の学校教育が定着化することになりました。これに加えて企業においても〝金太郎飴〟的な人材育成や終身雇用が主流となり、〝大量生産・大量販売・輸出主導〟に代表されるビジネスモデルが大きな成長の原動力になったのです。言い換えると学校教育や企業の人事システムによって育成された定形型の人材が高度成長を支えてきたのです。しかし、バブル経済の崩壊によって従来の仕組みやシステムが機能しなくなり、仕事のやり方を抜本的に変えなければならないようになってきました。このことは取りも直さず、社会が求める人材が変わってくるということであり、教育のあり方を見直す必要が出てきたということなのです。・・・≪続く≫

2007年06月06日

他から学ぶ

 6月6日(水)、午前中京都市総合教育センターにおいて、京都市の新任校園長に対して『学校経営について』というテーマで講演を行ないました。京都市は門川大作教育長のリーダーシップのもと、日本の数多くの自治体の中でも特徴ある教育行政を推進されており、全国から注目を集めています。明治維新の動乱期に京都では町衆の力で全国に先駆けて公の小学校を64校作ったという素晴らしい歴史を有し、この史実からも〝子どもは社会の財産であり、地域のみんなで育てよう、そのためにはなけなしのお金を出し合おう〟という実に高邁な志を読み取ることができます。
 現在、京都市では〝今、日本は混迷の時代にあり、これを乗り切るためには何と言っても人づくりが急務である〟という考え方に立って、地域をあげてさまざまな取り組みが始まっています。とりわけ中学2年生1万人の3500事業所での5日間の就労体験や廃校になった中学校の校舎を改修した「京都まなびの街生き方探求館」における経済の働きや社会の仕組みを知る体験学習等には注目が集まっています。
 午後からは立命館大学の朱雀キャンパスを訪問し、前大阪府教育委員会の教育監で現在小中高の連携を推進されている接続教育支援センター教授の成山治彦氏と情報交換させていただきました。立命館では2006年に小学校を新設し、ロボティクスやそろばん等の特徴ある授業を導入されています。また小学校から高校までの12年間を3つのステージに分けて教育目標を設定する「4・4・4制」の教育システムを志向され一貫教育の充実をはかろうとされています。一方で人事の活性化をはかるため4つある中学・高校間での教職員の交流や新たな人事制度の検討等の取り組みにも着手されています。
 本学園は地元の皆さんの熱い思いで設立されたという経緯があり、幼稚園から小学校・中高等学校までを有しています。
他での取り組みを積極的に学ぶと共に更に地域社会との連携や学園としての総合的な戦略構築が必要であると痛感しました。
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2007年06月05日

中学改革について~⑥本校の校是

 21世紀に日本が避けて通れないトレンドとしては、情報化、グローバル化、少子高齢化、真の実力主義の浸透等があげられます。このうち少子高齢化というのは日本特有の課題ですが、残りの3つは世界共通の課題です。
 これから情報化とグローバル化がますます進展する中で、世界の人口は今後ますます増加し、食糧・水・エネルギー・資源の不足や地球環境・民族紛争等への対応が迫られています。また、わが国においては少子高齢化に伴う労働力人口の減少や団塊の世代の大量退職による技能・ノウハウの伝承等さまざまな課題が生じてきています。一方、ナノ・バイオ・エコ・インフォメーションに代表される急速な技術の進歩によって、社会のさまざまな分野において、新しい仕組みやシステムが続々と構築され、この結果今までなかった仕事が次々と生まれてきます。
 これらの仕事をキッチリやりあげていくためには当然のことながら高い専門能力が必要になってきますが、それだけで十分かというとそうではありません。これらを正しく使いこなしていくための人間力が兼ね備わっていなければなりません。これからの社会が求める人材は、自己の利益や名誉・名声を優先するのではなく、世の中に貢献するという高い志に根ざした夢や目標に向かってたゆまぬ努力を続けると共に、日々素直に反省し常に自分自身を厳しく律していくことのできる〝骨太のリーダー〟です。言い換えると、社会観や倫理観、人生観、職業観といった人間としての基盤が確立しているということであり、これらは木に例えると〝根っ子〟にあたるものです。枝葉である専門能力や技能は時代と共に陳腐化するため、常に再生が必要ですが、根っ子がしっかりしている限り、次第に幹は太くなり枝葉は繁ってきます。
 多くの学校には、生徒の育成の指針となる校是がありますが、本校の校是である「高志」「自律」「努力」はまさに社会で役立つ力の核となるものです。雲雀丘学園での学校生活を通じてこれらをしっかりと身につけることにより、自分の道を切り拓き将来日本を背負って立つ人材に育って欲しいと願っています。

2007年06月04日

中学改革について~⑤学業と部活動との両立

 来年度より中学校の改革を実施するということを発表すると、「高校に続いて今度は中学改革ですね。予想どおりです。」「やっと重い腰を上げられるのですね。」「大いに期待しています。」という声に混じって、一部の人から「雲雀丘は進学だけを目指す学校になるのですか?」とか「部活動は停止するのですか?」というような質問が寄せられることがありますが、これは全くの誤解です。本校が最終的に目指しているのは〝将来社会で役立つ人間を育てる〟ということなのです。昨年度、高校に新たに三つの「特進コース」を設置するということを発表した時にも同じような質問がありましたが、最近の風潮として何か新たなことを始めようとすると、これまでやっていたことを全て否定しなければならないというような二者択一的な考え方があるようです。
 本校の教育方針の第一は人間教育であり、そのために部活動の果たす役割は極めて大きいと感じています。本年度、授業の時間数を増やしたことにより部活動の練習や試合にある程度の制約が生じてきているのは事実ですが、生徒達の様子を見るとそれなりに工夫をしながら部活動を続けているようです。 昔から『文武両道』という言葉がありますが、部活動を通じてはかり知れないものを得ることができます。しっかりと挨拶する、服装を整える、ルールやマナーを守る、チームワークの大切さを学ぶ、忍耐するといったことは将来社会に出た時に大いに役立つものです。何故なら社会では、限られた時間内に複数の仕事をやりあげるということが日常茶飯事であり、一つの仕事にじっくり時間をかけてやるということは稀なのです。そのため、社会で活躍している人は例外なく時間の使い方が極めて上手い、つまり忙しい人ほど時間管理力が優れているのは間違いがありません。部活動をやり過ぎたから勉強する時間がなくて自分の思い通りの進路が達成できなかったというのは言い訳です。学習する時間がないからという理由で部活動を止めた結果、かえって生活習慣が乱れてしまったという例も数多くみられます。事前の段取りをキッチリ行なう、何事にも集中する、短い時間を有効活用する、やり遂げる等といった力は密度の高い学校生活を送ることによって養成されるのです。
 本校では将来の職業に結びつくプロフェッショナルを育てるような部活動を目指しているわけではありません。一日の時間はすべての人に平等に与えられています。是非学業と部活動の両立をはかることを通じて、時間の有効活用をはかって欲しいと思っています。

2007年06月03日

中学改革について~④グローバル人材の育成

 これから情報化とグローバル化がますます進展する中で、世界人口の増大に伴う食糧・水・エネルギー・資源の不足や地球環境等さまざまな課題が生じてきています。また、日本では少子高齢化や団塊の世代の大量退職によるノウハウの伝承といった独自の課題も出てきています。
 一方、ナノ・バイオ・エコ・インフォメーションに代表される急速な技術の進歩によって、社会のさまざまな分野において、新しい仕組みやシステムが創出されることになってきました。この結果、活躍する場はどんどん広がってきていますが、仕事は限りなく二極分化することになり、日本においてはより高度なレベルの仕事が求められるようになってきています。まさに、これからは〝グローバルな視野と豊かな創造力をあわせ持つ人材〟が求められるようになってくるのです。
 本校では、本年度から高校におけるコース制の導入に伴い、『国際科』の生徒募集を停止しましたが、これは消極的な考え方ではなく、国際科の基本的な思想やこれまで培ってきたさまざまなノウハウを普通科に注入する、言い換えると国際科のDNAを引き継ぐことを狙いとしたものです。従って、当然のことながら、今回の中学における改革についてもグローバル人材の育成という視点を取り入れています。
このような考え方に立って、カナダへの研修旅行、ニュージーランドへの比較文化研修、海外留学生の受け入れ、海外留学、ネイティブ・スピーカーによる生きた英会話の授業、JICAとの交流研修、英語検定の取得等については、基本的に引き継ぐようにしています。
そして、日本とは全く異なる生活習慣、文化、宗教、歴史観等を有する人達との共生をはかっていくことの大切さを生徒達に理解させ、将来世界に羽ばたく人材に育成していきたいと考えています。

2007年06月02日

中学改革について~③一貫選抜2クラス設置の意味

 今回、一貫選抜コースは2クラス80名の募集を行ないますが、何故2クラスにするのかという理由を説明します。現在、多くの学校ではいわゆる「特進」や「特別」コースについては1クラスが多いのも事実であり、本校の1学年の定員は160名と小規模のため、一貫選抜は1クラスで良いのではないかという意見もあると思います。しかし、1クラスの場合、クラス替えができないという大きなディメリットがあるのも事実です。
 本校では、〝将来社会で活躍するリーダーの育成〟を教育目標に掲げており、詰め込み式の知識偏重型の教育を目指しているわけではありません。中学・高校時代は人生における最も多感な時期であり、この年代の経験の幅が将来を左右することになります。とりわけ、人との出会いは極めて大切であり、自分と全く異なる生い立ち、価値観、能力、性格、考え方等を持つ人と接することにより、人間的な成長がはかれるのです。一方で、この時期には友人関係で悩むといった事象が生じる恐れもありますし、小学校を卒業して中学に入学した40人が高校3年までの6年間、一つのクラスで学校生活を送るということになると、生徒間や先生との関係も一つの枠の中に固定されてしまうことになります。そして、次第に緊張感も薄らぎ、一部には挫折感や意欲を失った生徒が出てくることも懸念されます。
 こういった状況にも配慮し、本校では中学入学時点で、『一貫選抜コース』と『発展コース』の2つのコースによる募集を行ないますが、いずれのコースにも複数クラスを設置するのは、毎年クラス替えを行なうことにより、集団の中で生徒達の成長をはかることを目指すという考え方なのです。

2007年06月01日

中学改革について~②改革の骨子

 今回の改革の骨子は『一貫選抜コース』と『発展コース』の2つのコースを設置し、コース別の募集を行なうというものですが、これまでの経緯も含めて説明します。
中学・高校を通した6年一貫教育を強化するという取り組みは、今回が初めてではなく既に6年になります。この間の成果として、高校においては応用Ⅰ類の中から超難関国立大学進学を2桁可能にする状況が生まれてきました。そこで、本年度はこれを更に進化させるために『選抜特進』という形で集約させることにし、3コース制の導入をはかりました。
 また、中学3年生の応用クラスの中から、高校の選抜特進コースへ進む生徒が半数出てきました。
このような状況を踏まえて、今回中学におけるコース制の導入をはかることになったということです。
今回の中学改革は、本年度スタートした高校改革とセットになっており、これまで積み上げてきた〝中学・高校改革の集大成〟ということになります。
 2つのコースのうち『一貫選抜コース』は主として早くから将来の進学目標を持って努力している生徒を対象にしています。中学2年生で中学校の課程を修了、中学3年~高校2年までの3年間で高校の課程を修了し、高校3年ではセンター入試対策や国立大学の2次試験対策などの目標実現に向けた取り組みをさせる。目標とする進路は、東大、京大、阪大などの超難関国立大学と慶應・早稲田・上智などの超難関私学であり、「2クラス・80名の募集」を行ない、6年一貫のカリキュラムを準備しています。
 次に『発展コース』は進学目標のスタートという点では早くなかったが、中学の3年間で〝学ぶ〟意味や明確な将来目標を持たせる取り組みを行ないながら基礎・基本と共に十分な応用力をつけて、中学課程を修了するという生徒を対象とし、「2クラス・80名の募集」を行ないます。その後、高校進学段階で『選抜特進コース』『特進コース』に分かれ、高校から入学してくる生徒と合わせ4クラス体制で切磋琢磨していくことになります。その分、高校でのカリキュラムは多少ハードになりますが、目標とする進路は超難関国公立大学から関学・関大・同志社・立命など難関私学です。
 このように、〝生徒の能力・適性に応じた育成をはかる〟ことを狙いとした2つのコース設定になっています。