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2012年06月29日

ロンサム・ジョージの住んでいた島

南アメリカの西に位置し、長らく人の手が入ることのなかった楽園・ガラパゴス諸島は火山活動によってできた群島です
1835年、26歳のイギリス人博物学者・チャールズ・ダーウィンは、測量船ビーグル号に乗ってここを訪れ、約1か月間の滞在中、見聞きしたことで進化論のもとになる考えを得ました

諸島の名前の由来にもなったゾウガメ(スペイン語でガラパゴ)が何種も生息しています。そのなかでもピンタ島亜種で1頭しかいないジョージ・『ロンサム・ジョージ』が死んでしまいました。新聞にも取り上げられていましたね。世界一有名なゾウガメですもの

ゾウガメは昔、食糧として乱獲され絶滅したといわれていたのですが、偶然発見された1頭がその孤独な身の上と世捨て人を思わせる風情からロンサム・ジョージ(ひとりぼっちのジョージ)と呼ばれるようになったのだそうです。ジョージを中心に島の生態系や環境問題を取り上げた1冊
ひとりぼっちのジョージ/ヘンリー・ニコルズ (早川書房)

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全長が最大150㎝、250㎏にもなる世界最大のリクガメ・ガラパゴスゾウガメを筆頭に、爬虫類なのに1時間も海に潜ることができるガラパゴスウミイグアナ等、世界のどこにも存在しないような風変わりな動物や不思議な植物の宝庫であるこの島は世界自然遺産第1号に登録され、多くの観光客が訪れています

ユニークな生態系がどんなふうに誕生し進化していったのか、ダーウィンの足取りとともに伝えるのが
ガラパゴスのふしぎ/日本ガラパゴスの会 (ソフトバンククリエイティブ)

一方、たくさんの人々が訪れることによって、外来種(大陸の植物や昆虫)や病原菌がものすごいスピードで侵入してきました。ホテルやレストランが立ち並び、たくさんのゴミも出されます。その上、エルニーニョ現象の影響でまざまな生態系に影響が出て、ガラパゴス諸島は2007年に危機遺産にも指定されました

深刻な問題を抱える現在の島の様子を見つめた
ガラパゴスがこわれる/藤原幸一 (ポプラ社)
鳥たちはゴミ捨て場から、アスベストの繊維をくわえ巣の材料に持ち帰ります。ガラパゴスペンギンたちはエサを取りにいくため車道を横切ります
人のアイデアと技術によって壊されつつある自然を、今度はそのアイデアと技術で再び人によって元に戻していかなければならないという思いの込められた写真集です


2012年06月27日

来週から期末考査

期末考査、1週間前をきりました
放課後はテスト勉強に取り組む生徒たちで混み合っています
終礼が終わった途端かけつけた高3生で、自習机はあっという間に満席
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今日は、この後、閲覧机もほとんどいっぱいに
できるだけ荷物は最小限にまとめて、譲り合って座ってくださいね・・・

2012年06月23日

体内にはカレンダーもある

先日の校長通信で「体内時計」のことが書かれていたので、関連する図書を紹介
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生き物には1日24時間でリズムを刻む体内時計だけでなく、1年365日でリズムを刻む体内カレンダーがあるって知っていましたか?動物が春先に繁殖したり、植物が秋に実をつけたりする年間のスケジュールをつかさどっているのが体内カレンダー。1日の日照時間と体内時計との組み合わせで季節の変化を知るのだそうです。「なんだか日が長くなったなあ」と体内時計、「ということは春が来たな」と体内カレンダー、というわけです

「体内時計」はいま何時?/上田泰己・太田光・田中裕二 (講談社)
NHKで放送されていた『爆笑問題ニッポンの教養』 を書籍化したシリーズの1冊。爆笑問題の二人と理化学研究所で体内時計の研究をしている上田さんとの対談形式の本です。ヒトゲノムやシステム生物学など、専門的な話題も分かりやすく二人に説明しているので、なんとなくだけど興味のある人も読んでみるといいと思います。はら時計を筆頭に生き物の体は時計だらけなんだそうです
このシリーズは巻末に、取り上げた話題に関するブックリストもついています

養老孟司さんが小・中学生からの睡眠と脳の質問に答える
バカなおとなにならない脳/養老孟司 (イーストプレス・理論社)

人間は起きている間は意識があります。意識の働きがあるということは、秩序だった働きをしているということ。秩序ある働きをすると、かならず無秩序な部分が出てくる。例えば、部屋をきれいにする(秩序を整え掃除をする)と、きれいになったところはすっきりするけれど、一方でゴミが出る。ゴミがたまったところを見ると汚れています。秩序だてていくと、必ずどこかにゴミがたまってしまうんですね。だから起きている間に秩序活動をして脳にたまったゴミを、眠ることによって片付けることはとても大事。
眠っているのは「休んでいる」のではなく、ゴミを掃除している時間なんですね

さて、ぐっすり眠れない・・・という人
「眠れてますか?~朝までぐっすりガバッと起きる43の秘訣/岩田アリチカ(幻冬舎) や
「寝床術/睡眠文化研究所 (ポプラ社) で心地よい眠りをさぐってみますか?

体内時計にあわせて、食事も大事
「脳は朝ごはんで決まる/小菅陽子・高橋敦子 (ヴィレッジブックス)
塾で遅くなった夕食、どんなものを食べるのといいのかな?
「21時からの遅ごはん/浜内千波 (保健同人社) などなど

2012年06月22日

ミニトマトいかがですか?

「家庭でトマトを育てよう」キャンペーンに、参加中のみなさん
4月下旬に持ち帰った2株 『かんたんルビーノ』『あま~いピュアスイートミニ』、その後、様子はいかがですか?
学園では、高校校舎前の花壇に栽培中。植えたばかりの頃は、ヒョロヒョロで大丈夫?と眺めていましたが、今ではどっしり根をはり、先日の台風3号や昨日の雨にも負けず順調に実をつけています
通りがかりにのぞいてみてください。そして、あきらかに我が家のは出遅れている!と思ったら
ミニトマトの絵本/すがはらしんじ・じんさきそうこ (農文協) を見てみてはいかがでしょう。農文協から出ている「そだててあそうぼうシリーズ」は絵本とありますが、なかなかの情報量。でも絵本だけに、イラストたっぷりでわかりやすい
トマトの故郷は南アメリカ大陸・アンデスの高地で、古代アンデス文明のころからすでに栽培されていたそうです
支立てや下葉かきなどの栽培方法、種の取り方やトマトを使ったレシピ(ミニトマトビスケット!)など
ちなみにトマトは、イタリア語ではpomodoro(黄金のリンゴ)、フランスではpomme d'amour(愛のリンゴ) 、イギリスでもlove appleと呼ばれています


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     たわわに実っております
      (ミニトマトは伊語でpomodori piccoli:ポモドーリ・ピッコリ ちょっとかわいい )

*同シリーズで「ニガウリの絵本」もあり。グリーンカーテンの方法も出ています
 数年前には、食堂の脇の花壇から図書室バルコニーまでのゴーヤのグリーン
 カーテンができていました。今年もどこかにグリーンカーテンができるかな?

2012年06月14日

図書館の歴史 ⑤

<日本編> 5  市民の図書館へ

60年代に入り公共図書館は停滞します
当時の米・ニューヨークなどの大都市の図書館一館の1年間の貸出冊数が、日本の全公共図書館(750館ほど)1年間の貸出冊数より多かったのです(ちょっとびっくりですね)
イギリスの図書館視察に行った関係者も「教育し与える日本の図書館に対して、イギリスの図書館は奉仕し使われる図書館だった」と報告しています

「求める人に、ふさわしい資料を、ふさわしい時に、ふさわしい方法で提供する」サービス重視の観点に基づき、これを徹底していくのはもちろん、それを人々に知らせなければなりません。そのためには大規模の図書館よりも、中小規模の図書館で展開していこうと、データを集め計画をたてます
そして、モデル図書館として動き出したのが、東京都日野市でした。まず1台の移動図書館(自動車文庫・ブックモービル)から始めまります。これは新しい図書館を人々に浸透させていくための選択です。自発的に来館してこない人たちの手元まで本を接近させる。待っているのではなく、こちらから出かけて行ってアピールする。図書館とは建物のことではない。<閲覧室のない図書館>からのスタートです。そして蔵書の半分は児童書という児童サービスの重視。これが市民の強い支持を得て、行く先々で利用者があふれていたそうです。大成功です

1台だった移動車が2台に、その後まず児童図書館を建て、分館を建て数を増やし、最後にやっと、メインとなる中央館を建ち上げたのです。この日野市の取り組みが各地での新しい図書館づくりのよびかけになりました

なぜ、そんなに日野市立図書館のことを、語っているんだろう?と思われるかもしれませんが、図書館学を学ぶ人にとって「日野市立図書館」は避けて通れないキーワードです
有川浩さんも小説・図書館戦争シリーズで「日野の悪夢」として日野市を取り上げていますよね。日野市は実在します。もちろん小説のような事はありません!

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宝塚市立図書館の移動図書館「すみれ号」 利用したことがある人もいますよね
                              宝塚市立図書館HPより

2012年06月11日

ひとりひとりの味

昨日のeco弁当のできはいかがでしたか?一生懸命自分で作ったお弁当を見せ合いながら、いつもと違った盛り上がりだったのでは?
お弁当レシピ本と一緒に展示していた中から2冊を紹介

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おべんとうの時間/阿部了・阿部直美 (木楽舎)
日本各地をたずね、たくさんのお弁当とたくさんのお弁当の時間に出会った1冊
馬の看護師さん、海女さん、大学教授、海上自衛隊員、茅葺職人、おばあちゃんから幼稚園児。普通に暮らす普通の人たちのお弁当をちょっと拝見。ひとりひとりのインタビューとスナップとその日のお弁当写真。ああ、どれも美味しそう!

食べる行為に関して、人間と動物とではまるで違うところがある。「生きていくために、食べる」と「味わうために、食べる」人間はこの方向性の違う2つのことを、同時にこなすことができるんですよ、というのは、フードジャーナリストの平松洋子さん
その平松さんが中・高生向け「よりみちパン・セ!シリーズ」によせて書いた1冊
ひとりひとりの味/平松洋子 (イーストプレス/理論社)
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冷蔵庫に「賞味期限」を1週間過ぎた納豆を発見。やっぱり捨てたほうがいい・・・?
昨日のおやつの焼きそばパン「消費期限」は昨日。やっぱり食べちゃまずいかな・・・?
あなたならどうしますか?正解は?? /裏側からの自己紹介

カレー、餃子に肉じゃが、メニューだけ見れば同じだけれど、それぞれ微妙に家庭によって違います。食べているごはんが一人一人違う、家族も、暮らしぶりもみんな違う、だから何をどう「おいしい」と感じるか、それも人によって違ってきます /うちの味

食べられるのに、いやぁなもの。冷めたピッツア、袋がこわばったみかん、汁を吸ったラーメン /いやぁな味、だめぇな味

などなど。食べることに関するエッセイ集です。さて、自分が「おいしいと思う味って、どんな味だと思いますか?」十代のうちはまだまだ未知の味がたくさんあると思います。「知らなかったよ、こんな味」好きも悪しきもそんな経験がこれから待っていますね

2012年06月08日

プロのオビ

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こちらは書籍に巻かれていたプロがつくったオビです
新着図書の紹介に、図書室入口にて展示中。本を選ぶ参考にしてください


*高3ブログ「本を読もう⑤」 で取り上げられていた 
実況料理生物学/小倉明彦(大阪大学出版) 
 「図書室で買ってくれないかな」のつぶやきにお答えして、書店に注文しました。書架に並ぶまではもうしばらくかかりますが、予約受付中です

2012年06月06日

図書館の歴史 ④

<日本編> 4 「知る自由」のために

昭和期に入り、世の中が戦時体制になってくると図書館も思想統制の対象になってきます。「健全ナ図書」の選択・提供から、戦争に協力する図書への読書指導が命じられます
各地の図書館で検閲が行われ、蔵書の没収や閲覧禁止。厳しくなった取り締まりは出版物から閲覧者の思想調査にまでおよび、人々の言論の自由を脅かしました
社会科学関係の本はもちろん「日本地理体系」といった図書でさえ、防諜上の理由で閲覧禁止になっていたそうです
戦中は召集で男子職員も減り、就労の制限がされる中でかろうじて開館。しかし、スチール製の書架などあらゆる金属類は軍によって回収された上、建物も罹災者の収容施設や託児所に、中には軍司令部に転用された所もあったそうです
戦火が激しくなると空襲から貴重な資料を守るため本の疎開も行われました。それでも各地でたくさんの図書館が被災、長い長い年月をかけて収集した資料が一晩で灰になってしまいました

戦後になりGHQの指導の下、教育の民主化が進められ、まずCIE(民間情報教育局)図書館が設置されます。米国の発想を押し付けるだけでなく、日本的なものにも配慮しながら、戦後の図書館が動きはじめました。社会教育改革の中、図書館は「教育施設」ではなく「総合文化機関」というポジションをめざします

そして紆余曲折の後、基本的人権の一つ「知る自由」のため、資料と施設を提供するのは最も重要な任務であるとし、1954年「図書館の自由に関する宣言」を発表します

1 図書館は資料収集の自由を有する
2 図書館は資料提供の自由を有する
3 図書館はすべての不当な検閲に反対する

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ある人気シリーズ作品第1巻の目次。ここで目にした人も多いのでは。何の作品かわかりますか? (この作品では1979年改定後の4項目を引用しています)

2012年06月05日

中学1年生のオビ

中学1年D.E組が探究の授業で、本のオビを作ったそうです
図書室からも不要になったオビをサンプル用に提供しました。参考になったでしょうか?

最近は書籍も「ジャケ買い」した(本の内容はさておき表紙のイラストやデザインに魅かれて買ってしまう)という話を聞きます。それなら、ものすごく魅力的に本の内容をアピールしている帯を読んで、つい買ってしまったという「オビ買い」もありそうですよね

オビ買いしてしまいそうな作品はあるかな・・・教室前廊下に張り出されてある作品を見てきました
カラフルなもの、単刀直入なもの、イラスト入りのもの、なかなかの力作揃いです


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アンケート用紙を託されたので、100枚程の中から3枚を選んできました

2012年06月04日

図書館の歴史 ③

<日本編> 3 音読から黙読へ

明治にはいると新聞や雑誌が普及してきて、それらを読むため新聞縦覧所(有料だったり、無料だったり)が日本各地に生まれました。木版印刷から活版印刷になって印刷量も増え、ずいぶん読みやすくなります
そして当時の文部省が欧米の影響を受け、国立国会図書館の原型で日本初の国立公共図書館「書籍館」(しょじゃくかん)が誕生します(こちらは有料、結構高額)
資本主義の発達によって目立ってきた貧富の差をなくすために、下層の人々にも教育を、という政府の考えもあり各地で図書館設置の活動が始まりましたが、公立よりも私立図書館の方が多かったため、有料の所もありました

当時の読書スタイルですが、江戸~明治初期にかけては家族やグループで声に出して読む音読が一般的でした。しかも公共の空間でも。これは賑やかそうですね・・・
そこへ登場した図書館は、これまでとちがい「音読禁止」の規則を打ち出します。その影響か、以降、公共空間での音読もなくなっていったそうです。現在のように一人で静かに黙読するスタイルに変わってきました。ちなみに雑談・飲食禁止もこの頃からだそうです

その間、図書館単独の法律「図書館令」も公布、改定をされ1912年に図書館管理法が刊行。現在の図書館の基盤となる「図書館サービス」というものが提唱されたのもこの頃です。公立で無料開放、書庫の解放、児童閲覧室の設置、巡回文庫(図書館のない地区の人々のために定期的に本を運ぶ団体貸出のようなもの)など、図書館が新しい時代を迎えます


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  中学生の芥川龍之介も利用していたという当時の帝国図書館の様子
入口で閲覧料を払い入場。利用者は学生が7割、そして閲覧室は男女別でした