この記事を読んで、意見交換しました。感想として「地元のバス会社も運転手不足と言っているので、自動運転はどうか」「最低限まで減便して、あとはタクシーでいいのでは」「ジャンボタクシーへの転換」「病院の送迎サービスや、運転体験会をして運転手を募集してはどうか」「楽しいバスを企画できないか」「人を呼び込むべし」などありました。
探究ゼミ・プロジェクト〔 学内外と連携し、自由に学ぶ 〕
探究ゼミ
探究ゼミ「日本の交通網」第17回赤字バス
探究ゼミ「日本の交通網」、今日は第17回を開催し、中1~高3の合計7名が会議室に集まりました。
今回のテーマは「地方の赤字路線バスが走り続ける理由」です。
地方の路線バス事業が、極めて厳しい経営状況にあります。国土交通省によると、新型コロナ感染拡大前、2019年度の時点で既に全国の乗合バス事業者の72.3%が経常赤字でした。特に地方圏では事業者の約9割が赤字という厳しい経営環境に置かれていたところにコロナ禍でさらに悪化し、2020年度には156社全て赤字に陥りました。
かつては高速バスや貸切バスの利益で赤字路線を支える内部補助で路線網を維持してきました。しかし、規制緩和による競争激化で貸切バスの収益性が低下し、補助原資そのものが先細りしていたところに、コロナ禍が追い打ちをかけ、もはやその体力も限界に達しています。
これほど厳しい状況でも赤字路線でバスは走り続ける最大の理由は、バスが単なる移動手段ではなく、地域社会にとって不可欠な生命線だからです。特にクルマを運転できない高齢者にとって、バスは通院や買い物など自立した生活に欠かせない生活の足です。
しかし、ここに複雑な政策的ジレンマも存在し、点在する集落へのバス路線を補助金で維持し続けることは長期的に行政が目指す、居住地や都市機能を中心拠点に集約させるコンパクトシティ構想の動きと相反する可能性があるのです。
この慢性的な赤字構造に、運転手不足という更に深刻な問題が追い打ちをかけました。
2023年11月調査では事業者(68社)の99%が運転手不足を感じていると答えています。対策として、半数近くが減便を、3割以上が路線廃止を計画しており、運転手不足が直接的なサービス縮小につながっています。この問題は「2024年問題」による労働時間規制強化で一気に加速し、従来の運行ダイヤを維持できなくなり、地方だけでなく首都圏ですら大規模な減便や路線廃止が行われる事態となっています。
こうした状況を支えているのが国や自治体の補助金制度ですが、そのあり方も変化しています。かつては、年度末に確定した赤字額を事後的に補填する欠損補助が主流でした。しかしこの方式は、事業者のコスト削減努力を促しにくいという課題も併せ持っていたため、近年は、運行委託方式へ移行する動きが進み、行政もコスト意識や効率性を重視するようになりました。
従来の定時定路線型バスが限界を迎え、新たな地域交通の形も模索され、オンデマンド交通や自動運転バス実用化に向けた挑戦が全国で進んでますが、コストや技術面に加え新規参入時の複雑な許認可プロセスや現行の免許制度といった規制上の課題も多く、すぐにすべてを解決する万能薬とは言えません。
これからの地域交通は単一の解決策に頼るのではなく、幹線を担う路線バス、そこへ接続するオンデマンド交通、さらには住民同士の助け合いによる相乗り輸送まで、さまざまな交通手段を組み合わせたハイブリッドなネットワークを構築する必要があり、自治体がもはや単なる資金提供者でなく地域全体の交通を主体的に設計するモビリティ・マネージャーとしての役割を担うことが不可欠で、乗客のいないバスが走り続ける光景の裏には、私たちの社会が未来に向けて解決すべき、複雑で根深い課題が横たわっていると言えます。
第15回で、宝塚市西谷のバス廃止に関する問題を取り上げました。地元でも切実な問題です。
次回は11月20日に開催します。