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Hibari 探究プロジェクト - 雲雀丘学園中学校・高等学校
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探究ゼミ・プロジェクト〔 学内外と連携し、自由に学ぶ 〕

探究ゼミ

探究ゼミ「法律を学ぶ」第4回「オヤカク・オヤオリ」

今日の昼休み、探究ゼミ「法律を学ぶ」第4回を開催し、中1~高2の23名が60ホールに集まりました。今日のテーマは「オヤカク」「オヤオリ」です。

親の過保護・過干渉について、児童虐待が深刻な社会問題となってきましたが、最近は子ども自身が干渉を嫌がらず自覚もないまま親に依存しているケースの例として、大学の入学式や卒業式への親の出席、保護者向けの大学のオープンキャンパス、さらに就活への親の関与として「オヤカク」「オヤオリ」が行われています。会社が学生の内定を確実にするため、内定通知後に保護者と連絡を取り、内定受諾の確認や会社情報の提供をするのが「オヤカク」です。

せっかく内定を出しても辞退されると追加のコストや労力が発生するので、学生に入社する確約書を取ったり、研修などと称し身柄拘束して他社の試験を受けられないようにしたりするのはこれまでもありましたが、内定辞退の防止策の一つとして、親から猛反対され内定辞退されないため「オヤカク」をとるわけです。また、就活に際し親向けに行うオリエンテーション(説明会)を行う「オヤオリ」も行われ、保護者の理解を得るため会社のビジョンや魅力を説明し、子どもの就職先として賛成してもらえるよう努めているといいます。内定式の写真を保護者に送る、保護者を内定式や入社式に招待する、高級な贈り物や花束を贈る、「親向けレター」「企業紹介 DVD・パンフレット」「親向け内定理由通知書」を保護者に送る、経営者や採用担当者が直接家庭訪問するなど涙ぐましい取り組みがされています。これを法的に考えてみましょう。

民法は「親権」として親の子に対するさまざまな権利を定め、子の監護や教育をする権利と義務を負う「監護教育権」、子どもは親権者が指定した場所に住まなければならないという「居所指定権」、子どもは親権者の許可を得なければその職業に就けないという「職業許可権」、親権者が子の財産を管理しその財産に関する法律行為を代理して行う「財産管理権」などが含まれています。以前には親権者が必要な範囲で子に身体的・精神的な制裁を加えることができる「懲戒権」も認められ、体罰や虐待を容認しかねないと批判され、2022 年の民法改正で、懲戒権を削除し、体罰禁止規定が盛り込まれました。法律上の親権が及ぶのは 18 歳未満の子どもに対してですが、成人後も親の影響力は変わらないと思われているのでしょうか。

「オヤカク」「オヤオリ」は、親権者の子に対する職業許可権が時代的な背景にあるかもしれませんが、義務教育を終えると田舎から都市部へ集団就職していた時代ならともかく、ほぼ全員が高校に進学し、大学進学率も 6 割に上る現代、成人後の子どもの職業に対してまで親の支配下にあるかのような慣習はいかにも時代錯誤に思えます。

現在の就活生の親たちはバブル崩壊後の低成長の時代を生きてきた世代でもあり、1990~2010年代に就職活動を経験した「就職氷河期」も一部重なっています。新卒一括採用の日本型雇用の慣行は根強く、新卒時に良い会社に入ることができないと、その後も条件の良くない仕事にしか就けないという人が氷河期世代には多いです。社会的な格差が広がり固定し、自己責任を求める風潮がまん延している中、子どもには就職で失敗させたくない、できるだけ安定した大企業に入ってほしいという親心はわからなくもないが、そうした親心が過干渉となり、子どもの自立心や冒険心を萎えさせるリスクを高めているのではないでしょうか。

この記事を読み意見交換しました。

感想として、「巣立ちできないひな鳥のままになる」「就職を任せられないのは過保護」「少子化と影響しているのでは」「親権がなくなったところで介入は不要」「アドバイスはいいけど干渉しすぎはよくない」などありました。

企業の気持ちもわかりますが、成人した子どもの自立の妨げになっているのではないでしょうか。しかしこれからも続きそうです。

次回は6/24昼休みに60ホールで開催します。多くの方の参加を期待しています。参加申込をしていなくても興味ある生徒は会場にお集まりください。

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