環境の大切さ
5月23日(水)、全校朝礼で、狼に育てられた少女の実話を取り上げ、人間が成長するためには、遺伝的な要素よりも環境が非常に大切であるということを話しました。
1920年、インドのミドナプールのジャングルで狼に育てられた少女2人が偶然に発見されました。推定1歳半の年少の少女はアマラ、推定8歳の年長の少女はカマラと名付けられ、発見者であるシング牧師の孤児院で育てられることになりました。この2人は姉妹ではなく、おそらく乳幼児期に別々に捨てられ、別々に狼に連れてこられ、育てられたと推測されました。この子達の身体は人間でしたが、行動はまさしく「狼」でした。四つ足で走り、地面に置かれた皿から手を使わずに飲み食いし、臭覚が鋭く、死んだ鳥の肉をむさぼり食い、喉が渇くとブーブーと音を出し、夜には遠吠えしました。また、冬の寒い日でも裸は平気で、暗闇を恐れず、暗闇で物を見ることができたそうです。そして、年少のアマラは発見されてから1年足らずで死亡してしまいましたが、年長のカマラは約9年間生き続けました。カマラは成長の過程で少しずつ人間らしさを取り戻しましたが、推定17歳で亡くなるまでに3~4歳の知能までしか発達すことができず、30語ほどしか話すことができませんでした。
前回の朝礼では、脳にさまざまな刺激を与え続けることにより、脳を鍛え活性化をはかることが大切であるという話をしましたが、いくらノーベル賞を受賞するような優秀な両親から生まれても、この狼に育てられた少女の実話からも解るように、その子どもが育つ環境が悪ければ立派な人には成長しません。
人間は生まれつき人間ではなく、人間として躾けられ、さまざまな学習を積み重ねることにより、人間になっていくのです。このことからも環境、とりわけ乳幼児期の環境が極めて大切です。赤ちゃんは狼に育てられれば狼にでもなり得る、それだけ環境に左右されるということを認識しておかなければならないのではないでしょうか。