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2012年03月31日

新しい学校長へのバトンタッチ

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  本日で、中学・高等学校の校長を退任することになり、影浦新校長にバトンをお渡ししました。この6年間、影浦先生は教頭という立場で、強いリーダーシップを発揮され学校改革の中心的な担い手として私を全面的に補佐していただきました。多くの先生方の協力を得ながら、影浦先生と二人三脚で学校改革を推進してきたと思っています。私のように全く学校の状況を一から勉強しなければならないということもありませんし、これまで次年度以降の中期的な取り組みについても何度も話し合ってきました。また、入口・校内・出口を固めるためのさまざまな経営の仕組みを作り、これらを充実させてきました。
  現在、本校の経営は『良循環』のサイクルに入りかけていますが、これを更に力強く推進していかなければなりません。そのためには平成25年度を最終目標とする〝学校改革の第2ステージ〟の幕引きをしっかりと行ない、更に〝第3ステージのあるべき姿〟を構築していくことが大切です。新体制の下、更なる飛躍を期し全教職員が力を合わせて経営改革を継続し、関西を代表する学校を目指して欲しいと思っています。
  4月からは新たに雲雀丘学園の顧問に就任することになり、大阪府の教育委員も継続しますので、完全に教育の仕事から離れることはありません。学園を取り巻く環境は大きく変化しており、幼稚園から小学校、中学・高等学校まで、さまざまな課題を有していますが、今はそれぞれの校種においてこの解決に向けて懸命に取り組もうとしています。従って、私から直接指示するということではなく、これまでの経験やノウハウ、人脈等が生かせる範囲で経営のお手伝いをしていきたいと考えています。
  最後に、今回の退任にあたっては多くの皆さんから暖かいお心遣いをいただき、本当に有難うございました。この『校長通信』も影浦新校長に引き継ぎます。これまで凡事徹底の一環ということで、毎日書き続けてきましたが、最近は月間のアクセス数が約1万件、平均すると1日では300件以上ということになっています。これまで実に多くの方に読んでいただき心より感謝しております。
  
  なお、外部の多くの方から学校経営全般に関する情報を引き続いて伝えて欲しいという意見をいただきました。これを受けて、何人かの方と相談した結果、新たにホームページを開設することにしました。毎日更新することはできませんが、これまでの企業や学校で経験したことを中心に伝えていきたいと思っています。

http://schoolmanagement-lab.com/   
スクールマネジメント研究所(4月から開設) 

2012年03月30日

6年間を振り返って ③

9.出口を固める
9.1 個人別進路目標の設定
  最終の目指す姿は本人の希望を実現させることであるという考え方に立って、キャリア教育を進めている。具体的な取り組みとしては、高校入学時より、さまざまな職業の方を招いて体験談を聞く『職業人に学ぶ』や大学との連携を深めるための『高大連携講座』の開設、全国の30を超える大学の先生による『1Day College』の開催、全国の著名大学の合同説明会である『夢ナビ』への参加、大学のオープンキャンパスの見学等があげられる。このような取り組みを通じて、早期に個々の進路目標を立てさせることにしている。この時に大切なのは、将来どういう分野に進みたいかという意思を明確にさせることであり、大学の名前で選ぶということのないように指導している。その後、外部模試の結果等を踏まえて定期的にフォローする体制を確立している。また、多様化する大学入試(AO・推薦入試等)に対応できるように、小論文・面接等の指導体制の充実をはかっている。
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      《職業人に学ぶ》        《香川大学医学科進学者の講演》
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       《1Day College》        《小論文・志願書の書き方講座》
9.2 学校全体としての進路指導体制の確立
  中高校「サクセスプラン(進路スケジュール)」の充実をはかり、時系列・年度比較が可能なシステムを構築している。また、進路指導に関する情報の共有化を使って、生徒個人の成績を確認することができるようにしている。更に必要な都度、予備校の先生による進路研修会の開催を行っている。
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      《高大連携講座》               《進路講演会》

9.3 進路実績の向上
 平成22年には新たに高校のコース制導入時(平成19年)に入学した最初の生徒が、大学受験に臨み、国公立大学合格者が25名から50名と倍増、難関私学合格者(関関同立)が111名から161名と1.5倍になった。更に平成23年は国公立合格者が55名、関西地区難関私学合格者が246名となり、顕著な伸びを達成することができた。そして、今年は生徒の国公立志向が強まり、国公立大学合格者が67名(3月25日判明分)、関西地区難関私学合格者が177名となった。特筆すべきは、現役合格者が実に60名と9割を超えたこと、京都大学に3名、大阪大学にも8名、昨年に続いて医学部医学科に合格者を出せたこと等があげられる。
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9.4 学年別(コース別)の進路数値目標の設定
  新たにコース制を導入した年度から進路の数値目標を設定しているが、まだ精度は高くない状況である。この3年間は結果的に連続して前年を上回る実績になったが、次年度以降も前年を上回る進路目標を立てて取り組んでいる。間もなく中学にコース制を導入した最初の学年が高校2年生に進学するが、一貫選抜・選抜特進クラスが4クラスとなっており、更に本年度特進を含めた全コースに国公立対応型のカリキュラムを導入することにした。そして、この学年が大学に進学する2年後(平成25年度末)には国公立大学合格者80名以上(内部目標100名)を目指している。これの実現に向けて、定点的に学力伸長度を把握し、迅速な対応をはかる等、進路システムの一層の充実、定着化をはかっていく計画である。

10.業務革新とマネジメント改革
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学校づくりにあたっては、「教職員の行動能力を高める」「職場の仕組みを変える」「風土改革をはかる」ということが大切である。このため原点に戻って新しい学校を一からつくるとい考えで、徹底した業務の見直しを行った。
以下、具体的な取り組みについて紹介する。
① IT化を積極的に推進すると共に業務の徹底的な分析を行い、重点特化すべき業務と合理化・簡素化する業務を洗い出すことにした。
② 徹底したコストの見直しと予算のゼロベース化を目指している。
③ 組織はできるだけ簡素化、大ぐくり化し、迅速な意思決定をはかる。また、必要に応じて、「プロジェクト」や「委員会」等の課題解決型の組織づくりを行っている。更に適性配置を推進することにより、人の働きを高めることを目指している。
④ 「チャレンジ目標制度」の導入により、全体目標と個人目標の整合性をはかることにした。また、業務量の適正な分担を行うために「一人一役みんなが主役運動」を推進している。
⑤ 「予防する」「芽生えの段階で手を打つ」「迅速に対応する」ことを基本とする危機管理の徹底を行うようにしている。また、家庭への迅速な情報伝達をはかることを目的として、NTTによる『緊急連絡網』の導入を行った。
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⑥ 生徒の育成にあたっては「共育」と「共学」を基本にし、機会ある毎に保護者に訴えている。共育というのは〝家庭と学校が連携して生徒を育てる〟ということであり、共学というのは〝本校に集う生徒・保護者・教職員全員が勉強する〟ということである。このため、入学式や保護者集会、学年懇談会、学級委員会等色々な機会を通じて、このことをお願いしている。
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       《学級委員会》                 《学年懇談会》
11.最後に
  私はこれまで社会のさまざまな分野で活躍している多くの人とお会いしてきたが、これらの人には例外なくしっかりとした人間としての土台が確立している。そして若い時の苦しい経験が生かされているケースが多く、更に自己研鑽を重ねることにより、人生観、社会観、倫理観、人間観といったものが醸成されてきている。
今、わが国においてはいたるところで教育改革の必要性が叫ばれているが、国土も狭く、大きな地下資源もない日本にとってはまさに人材が最大の資源である。今後、情報化とグローバル化がますます進展し、新たな技術革新が起こる中で、活躍できる場は限りなく広がってくる。日本の将来は暗いと考えている人が多いようだが、世の中が大きく変わるということはそれだけチャンスがあるということである。学校は〝将来社会で役立つ力を育てるトレーニングの場である〟と考えるなら、単なる知識としての学力のみならず、自ら課題を見つけ解決していく力や人間としてのベースとなる志、思いやり、感謝、忍耐といった力の育成が大切である。将来の日本を背負って立つ「人間力と学力を兼ね備えた」骨太のリーダーの育成に全力を傾注していきたいと思っている。

2012年03月29日

6年間を振り返って②

6.良循環型経営の実現を目指した具体的な取り組み 
  学校経営にあたっては、入口(質・量両面にわたる生徒の確保)、校内(教育内容の充実と教員の資質向上、教育環境の整備)、出口(きめ細かい進路の実現)の3つの切り口を固めることにより相乗効果を発揮させていくことが重要である。このうちの1つが崩れると、「負のスパイラル」に陥ってしまうため、これらを連携させながら「良循環型経営」の実現を目指すことにした。
このように、本校ではコース制の導入を柱として、常に課題を明確にしながらさまざまな取り組みを実施してきたが、以下「入口を固める」「校内を固める」「出口を固める」という順で取り上げていくことにする。%E8%89%AF%E5%BE%AA%E7%92%B0%E5%9E%8B.JPG

7.入口を固める
7.1 積極的な入試・広報活動の推進
  私学にとって、生徒の確保は最重要課題である。いくらカリキュラムの見直しや授業レベルの向上等教育内容の充実や教育環境の整備、優秀な教職員の確保をはかろうとしても、生徒が集まらなくては安定した学校経営を推進することはできない。そのため、コース制の導入を機に〝雲雀丘学園中学・高等学校は大きく変わる〟というイメージを全面的に打ち出すこととし、学校説明会や校外での入試相談会を通じて本校の目指す新しい学校づくりや、育成すべき生徒像について徹底的にPRしていくことにした。
また、オープンスクールや学校見学の随時受け入れ、塾長対象説明会、中学教員対象説明会、全教員による中学訪問、広報専任者の任命等広報体制の強化をはかった。本年度は実に校内・校外合わせて約90回にわたる入試説明会・相談会を実施した。

7.2 ホームページによる情報発信
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新しい学校づくりを進めるにあたって、ホームページを全面的に改定し、学校における教育活動の内容をきめ細かくタイムリーにお知らせすることを目指して、「全員参加によるホームページづくり」を行っている。この結果、学年・分掌・部活動のきめ細かい情報発信が行われ、日々更新がはかられてきている。また、定期的にアクセス件数を把握するようにしているが、この数は年々増加してきており、オープンスクールの申し込みもホームページを通じて行っている。

7.3 入学志願者の状況
  高校にコース制を導入して以降、中学・高校共志願者は年々増加してきている。この結果、募集定員の確保と共に入学者の偏差値も上昇してきている。厳しい経営環境下にあって、本年度は中学792名、高校1036名と共に過去最高の志願者ということになった。これに伴い、24年度の入学者も中学221名、高校301名と過去最高になる見込みである。また、偏差値60を超える生徒が増加してきており、これから大いに期待できる状況になってきている。
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高校合格者数の推移.jpg
8.校内を固める
8.1 人間教育の基本である凡事徹底
  多くの学校が大学進学実績を重要視している中で、人間教育を最初に謳っている学校は珍しいと思うが、〝社会で役立つ人材は、単なる知識偏重型ではなく人間力を併せ持つ人材である〟という考え方に立ち、教育方針の第一に「人間教育の充実」を掲げることにした。人間教育というと何か難しい特別のことを考えがちだが、人間力を高めるための特効薬もマニュアルもない。人間として当然やらなければならない当たり前のことや簡単なことをやり続ける、言いかえると「凡事徹底」が大切であり、簡単な事が完全にできるようになって、初めて次の難しいステップに進むことができる。そのため、「明るい挨拶」「きっちりした服装」「さわやかなマナーとルールの遵守」を基本に取り組むこととし、早朝の登校指導をはじめ全教員が生徒指導にあたることにした。また、制服を美しく着こなすための『服育』や「携帯・ブログ講座」「薬物防止講座」を実施している。このような取り組みによって、遅刻や問題行動が大幅に減少してきており、これが学力向上にも繋がってきている。
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8.2 授業時間(量)の増大と補習体制の充実
  コース制の導入によりカリキュラムを全面的に見直すと共に、「土曜日授業の実施」「長期休業期間の短縮」「予備校の先生によるパワーアップ・ゼミ(選抜特進・一貫選抜)、ブラシュ・アップゼミの開講」「長期休業中における補習や勉強合宿の実施」「早朝講習」等授業時間の増大をはかることにした。また、6年間(3年間)の『サクセスプラン』に基づき、計画的な学力向上、進路指導体制を充実させている。また、「自学自習コーナー」や随時教員に質問できる「交流スペース」を設置する等の学習環境づくりにも注力している。
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        《勉強合宿》                  《夏期講習》
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    《交流スペースでの質問》         《大学推薦入試指導》

8.3 教職員の資質向上
  より良い学校づくりには、一人ひとりの教職員が同じ方向を目指して行動していることが大切である。そのためには学校全体の方針が分掌、学年、教科毎に具現化され、更に個人レベルにまで落とし込まれていなければならない。これを実現するために『目標チャレンジ制度』の充実をはかることにしている。また、教師にとって授業は命であるという考え方に立って、〝より良い授業を目指す〟〝授業を磨く〟を合言葉に学校全体としてのさまざまな取り組みを行なっている。具体的な取り組みとしては、年2回の「生徒全員によるすべての授業に対するアンケート」や「相互授業参観」「研究授業」を実施している。この授業アンケートは単に教員や生徒の授業態度を評価するものではなく、教員と生徒の双方が前向きな姿勢で授業の改善を行っていこうというものである。また、模擬試験や定期考査の結果を分析することにより、課題を抽出し教科会を主体とした授業改善を行っている。
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      《模試分析会》               《教科による検討会》
8.4 国際科のDNAの引き継ぎ
  グローバル化への対応をはかるために、新しく導入するすべてのコースの中に、これまで培ってきた国際科のノウハウを取り入れることにし、「カナダ研修」「ニュージーランド比較文化研修」「海外留学」「海外からの留学生の受け入れ」「ネイティブ・スピーカーによる生きた英会話の授業」「JICAとの交流」等については、基本的に引き継ぐことにした。
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      《カナダ研修》               《ニュージーランド研修》
8.5 学業と部活動の両立
  昔から『文武両道』という言葉があるが、部活動を通じて「しっかりと挨拶する」「服装を整える」「ルールやマナーを守る」「チームワークの大切さを体得する」「忍耐する」という力を身につけることは将来社会に出た時に大いに役立つものである。本校では詰め込み式の知識偏重型の教育や将来の職業に結びつくプロフェッショナルを育てるような部活動を目指しているわけではない。あくまで学業と部活動の両立をはかることを薦めており、現在、クラブ加入率は7割を超え、全国大会に出場するクラブも出てきている。また、難関大学合格者のほとんどが積極的に何らかの部活動を行っている。
ギターマンドリン.jpg 剣道部.jpg            《ギター・マンドリン部》                《剣道部》
8.6 教育環境の整備
  教育効果を高めるためには、施設や設備環境を整えることが大切である。そのために、いち早く耐震補強を実施すると共に創立60周年にあたる2010年に、高校校舎を新築した。この校舎は環境教育の教材としての役割も果たしており、太陽光パネル,雨水を利用した屋上緑化、LED照明等を採用している。また、昨年、生徒たちの手で校庭に天然芝を植え付け、芝刈りも生徒たちが行っている。更に新校舎の教室にはプロジェクターや電子黒板等のIT機器を設置し、これらを活用した新たな授業展開をはかってきており、素晴らしい教育環境が整ってきている。
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     《生徒による芝刈り》       《保護者による芝生クリーン作戦》
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     《太陽光パネル》               《屋上緑化》
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2012年03月28日

6年を振り返って ①

9.jpg 22.9-27.jpg       《中学・高校の校是》            《初代理事長 鳥井信治郎氏》  

  3月末まで残り4日となりました。この6年間を振り返って、これまでの取り組みを紹介したいと思います。この内容は先般「私学経営研究会・私学経営」に掲載された『骨太のリーダー育成を目指して』を一部修正したものです。          
   
1.はじめに
  平成13年末、34年間勤務したパナソニック(株)を退社し、平成14年4月より4年間大阪府立の高等学校の校長として勤務した後、平成18年4月から雲雀丘学園中学・高等学校の校長に就任し、この3月末で6年が経過しようとしている。
雲雀丘学園は大阪府に隣接する兵庫県宝塚市にあり、昭和25年サントリー(株)の創業者である鳥井信治郎氏を中心とした地域の方々の強い思いで創設され、一昨年60周年を迎えた伝統ある学園である。現在中学・高等学校、小学校、2つの幼稚園があり、児童・生徒数は約2600名を有している。初代鳥井理事長の入学式や卒業式の訓話の基本は、〝朝起きたら「おはよう」、学校から帰ったら「ただいま」、夜は「おやすみなさい」と挨拶せよ、親孝行のできる人は必ず立派になれる〟というものであった。今、親孝行というと何か古めかしいことのように思われがちだが、最も身近な人を大切にできない人に社会のこと、日本のこと、世界のことを考えることができるだろうか、というのが初代理事長の考えであり、本学園の創立の基本となっている。

2.学校改革にいたる背景と基本の考え方
  平成18年当時は、公立・私立共教育環境が激変する中で、昭和60年に設置された高等学校の国際科が大きく募集定員を割り込み、国公立大学や難関私立大学への進学実績も横ばいという状況が続いていた。そして、このままでは近い将来、経営的に厳しい結果に陥るということを感じながら、思い切った学校改革に踏み切れないということになっていた。「雲雀丘学園の良さは何か」ということを尋ねると、誰からも「学園の持っている雰囲気や校風の良さ」という答えが返ってくる。これはどの時代にあっても変わることなく本学園に受け継がれている大きな伝統であるが、その一方で「授業料が高い割に授業内容は公立並み」とか「先生も生徒ものんびりしていて学力を伸ばせない」といった厳しい意見も数多く寄せられていた。
まさに、思い切った学校改革を断行し、新しい学校づくりを目指すということが急務であり、改革が遅れれば私学としての生き残りが難しくなるという状況であった。この中で、校長の姿勢として「新しい学校を一からつくるという不退転の決意で臨む」「外部から何を期待されているのかをしっかりと把握する」「教職員に危機意識を浸透させる」の3つを貫くことにした。
そして、新しい学校づくりにあたっては「原点に戻って創立の精神の体現化をはかる」「学校のビジョンを明確にし、生徒の育成を第一義に考える」「中期のあるべき姿を描き戦略を構築する」「良循環経営(入口・校内・出口を固める)を推進する」を基本に取り組むことにした。そして、学校経営の枠組みを構築すると共に、個々の取り組みについて「誰が」「何を」「いつまでに」「どうする」ということをスケジュールに落とし込み、円滑なPDCAサイクルがまわるマネジメントシステムの確立をはかることにした。pp01.jpg

3.創立の精神の体現化と学校ビジョン・戦略構築
  創立の精神には『孝道を人間の根本義と考え 社会のために尽くす精神を最も尊重し よりよい社会国家を生み出すべく 心を素直にもち すべてに感謝の念を捧げ 健康な体力とたくましい実践力をもつ強い人間を創ることを念願としています』と謳われている。また、中学・高等学校の校是は〝高志・自律・努力〟であるが、この意味は「高い志を持って自分自身を厳しく律し目標達成に向けてたゆまぬ努力を続ける」ということである。これらを実践することはまさに『社会で活躍できるリーダーの育成』に繋がることであり、学校改革にあたっての基本の柱にすえることにした。
学園のビジョンとしては、“「人間教育の充実」と「学力の向上」を両立させた「関西を代表するすばらしい学園を目指す」”というものが打ち出されている。従って、基本的には中高においてもこれを踏襲することにしたが、この中には時間軸が設定されていないため、平成25年(2013年)を最終目標年度とした「中期のあるべき姿」を描き、その目標を達成するための戦略として『学力向上をはかるためのコース制』と『人間力を育てるための環境教育』の導入を行うことにした。そして、平成25年度の大学合格目標を「国公立大学に80名」、「全員が難関私立大学をめざす」ということに設定した。

4.中高における新しいコース制の導入
4.1 高校にコース制を導入
  本校では昭和60年(1985年)に国際社会で活躍できる人材を育成するということで、高校に『国際科』を設置し、以降20年間にわたり『普通科』と『国際科』という2つの異なるカリキュラムに基づき生徒募集を行ってきた。しかし、近年グローバル化の進展に伴い、すべての分野で国際的なセンスが必要となってきた。また、学力差が大きい生徒達に対して一律のカリキュラムを採用していたため、十分な教育効果が得られないという弊害も生じてきていた。そこで、平成19年に、個々の生徒に対するきめ細かい進路指導を行うことを狙いとして、従来の普通科と国際科を再編成し、新たに「選抜特進」「特進Ⅱ」「特進Ⅰ」という3つのコース制を導入することにし、きめ細かい進路実現を目指すようにした。
「選抜特進」コースは東京・京都・大阪等の超難関国立大学を目指すコースであり、「特進Ⅱ」や「特進Ⅰ」はそれぞれ難関国公立、難関私立等を目指すことにし、年々変化する入試制度にも柔軟に対応していけるようにした。また、〝自分が希望する大学であれはどの学部であっても良い〟ということでは進学することだけが目的になってしまうため、早期に自分なりの進路目標を設定し、真面目に努力することによって、あくまで自分が進みたい国公立大学や難関私立大学の学部や学科に合格できる学力の修得をはかっていくことにした。そして、本年度より「特進Ⅱ」と「特進Ⅰ」を「特進」に一本化すると共にすべてのコースにおいて「国公立大学対応型のカリキュラム」を導入することにした。。

4.2 中学にコース制を導入
  翌平成20年には、中高6年を通したカリキュラムに基づいて教育を行う「一貫選抜」と、高校進学時に「選抜特進」「特進」のいずれかをコ―ス選択できる「発展」という2つのコース制の導入をはかった。「一貫選抜」は主として早くから将来の進学目標を持って努力している生徒を対象とし、進学目標は選抜特進と同じ東京・京都・大阪等の超難関国立大学である。「発展」は進学目標のスタート時期は早くなかったが、中学の3年間で基礎・基本と十分な応用力をつけて、中学課程を修了するという生徒を対象にしている。%E5%A4%A7%E9%98%AA%E7%A7%81%E5%AD%A6%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%80%8573.s.jpg

5.人間力を育てる環境教育の導入
  本校はこれまでもサントリー(株)から多くの支援を受けてきたが、平成19年より、人間力を高めることを狙いとした本格的な『環境教育』をスタートさせた。これは、現在地球上で起きている様々な環境問題は人間の行為そのものが原因となっているという認識に立って、〝環境に配慮することは、人に対する優しさや真心を育てることに繋がる〟ということから、人間力を育てるための大きな柱としようとするものである。具体的には、現在人類の最大の課題である水や食料、エネルギー、生態系の変化、温暖化、大気汚染といった各分野についての特別授業を展開するもので、〝本物に触れさせる〟ことをテーマに社会で活躍している一流の人材による講演等の学習を行っている。そして、単に知識を修得するというのではなく「学び 調べ 考え 行動する」ことを基本にしており、校外学習や修学旅行との連携をはかるようにしている。具体的には修学旅行や林間学舎での「植樹やサンゴの植え付け」をはじめ、「授業でのサツマイモの栽培」、「地産地消をテーマにしたエコ弁当作り」、生徒会を中心とした「トマトやイチゴの栽培」・「ゴミの分別」・「節電」・「雨水の利用」等の自主活動、生徒有志(環境大使)による「稲作」・「黒豆作り」、地元にある〝きずきの森〟の整備等年々環境活動としての広がりを見せはじめている。
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2012年03月27日

H23.3.27 理事会・評議員会

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  3月27日(火)、平成23年度理事会・評議員会が開催されました。最初に鳥井理事長からご挨拶があり、役員・評議員の選任が行なわれ、次年度の体制が決定されました。既に、校内では発表されていますが、これにより私の理事・中学・高等学校校長の退任と次期校長となる影浦教頭の理事昇格が正式に決定されました。次いで、松下常務理事から私学を取り巻く環境や他の私学の動き、学園の教育並びに経営方針についての説明があり、平成24年度事業計画・予算案の承認決議がなされました。
  お蔭様で、学園の決算は中学・高等学校の生徒募集が順調に推移したことや経費の節減等で、大幅に良化し積立金を増額させることができました。続いて中学・高等学校、小学校、雲雀丘幼稚園、中山台幼稚園からそれぞれ次年度の教育ならびに経営方針についての説明がなされました。
  その後、昼食をとりながら意見交換がなされ、退任および新任の理事・役員からそれぞれ挨拶を行ないました。私はこの6年間の皆さんからのご支援に対する感謝の言葉を述べ、これまで取り組んできた学校改革についての取り組みについて感想を交えてお話しました。当初は必ずしも、この改革が全面的に受け入れられた訳ではなく、必ずしも一枚岩ではありませんでした。しかし、多くの先生の懸命な取り組みによって、中学の志願者・入学者、高校の志願者・入学者、国公立大学の合格者、無遅刻者、部活動の理事長表彰者が過去最高となる等、良い形で引き継ぐことができ本当に良かったと思っています。
  現在、本校では、『改革の第二ステージ』と位置づけ、一貫選抜コースが中学1年生から高校3年生まで揃う〝平成25年・2013年〟を目指して、さまざまな取り組みを行なってきています。これまではほぼ順調に推移してきていますが、私学を取り巻く環境は大きく変化してきており、まだまだ課題は山積しています。新しい体制の下、この第2ステージをしっかりと仕上げ、これに続く『第3ステージ』のあるべき姿を構築する。そして、学園ビジョンに掲げている〝関西を代表する一流の私学〟を目指していただきたいと思っています。


2012年03月26日

国公立大学に67名が合格

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  先週末で国公立大学の後期試験の合格発表がほぼ出揃いました。まだ一部浪人生からの連絡がないものもあるため、これが最終の数字ではありませんが、合格者は過去最高の67名ということになりました。内訳は現役生が61名、浪人生が6名で、現役比率は9割を超えています。
  振り返ると平成19年に高校にコース制(選抜特進・特進Ⅱ・特進Ⅰ)を導入し、2年前にこのコース制最初の卒業生が出ましたが、国公立の合格者は25名から50名と倍増しました。続いて昨年は55名とこれを更新、更に今年はこの数字を大幅に上回ることになりました。今年の大学入試において特筆すべきは、難関の京都大学に3名、大阪大学に8名、昨年に続いて医学部医学科に1名が合格、公募推薦入試や後期試験での合格者が増加したことがあげられます。また、今年は防衛医科大、防衛大、自衛隊看護学校にも多数の生徒が受験し、35名の合格者を出しました。私学受験については昨年のように1人が多くの大学・学部を複数受験することは少なくなり、絞込みの傾向がでてきています。
  学校全体として、幅広い学習をさせるために国公立大学へのシフトをはかってきていますが、この指導が浸透しつつあるようです。また、高校3年の学年団や進路指導部が中心となって、学校あげてセンター試験後の前期・中期・後期試験対策に取り組みましたが、これも合格者の大幅増に繋がったようです。そして、最後まで学校に来て補習を受けていた生徒の合格率が高いという顕著な結果も出ています。
  先週の土曜日に、併願者の入学ガイダンスを行ないましたが、参加者は残念ながら志望する公立高校への入学が果たせなかった生徒達です。この中でも触れましたが、今年からカリキュラムを全面的に国公立対応型に改訂すると共に進路実現に向けてさまざまな取り組みを充実させてきています。今年の生徒達は最初から自分なりの進路目標を持っている人が多いようですが、気持ちを切り替えて3年後、是非目標を達成して欲しいと思っています。
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2012年03月25日

新年度に向けて

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  既に修了式は終わりましたが、学校はこれから新年度に向けての様々な取り組みが必要になってきています。来年度の学校経営計画については既に策定を終え、来る27日に開催される理事会で最終承認される見込みです。これを推進していく組織や人事体制も今月初めに発表し、分掌長や学年主任・担任等を中心に、それぞれのメンバーで昨年度の反省をしっかり行なった上で、来年度の計画づくりを検討しています。そして「誰が」「何を」「いつまでに」「どうする」というタイムスケジュールをしっかりと詰めている状況です。
  現在、本校は平成25年を完成年度とする〝学校改革の第2ステージ〟に位置しているため、来年度の計画については、この着地点をにらんだ上で作成することが大切です。そして、進捗状況を細かくチェックし、計画とのかい離が生じないようにしていかなければなりません。
  仕事の基本はPLAN(計画)-DO(実行)-CHECK(評価)-ACTION(改善)というサイクルを回していくことですが、修了式で生徒達にも話した通り、精度の高い計画に仕上げることが何よりも大切です。そのため、本年度の振り返りを含め来年度計画の個別のヒアリングを実施しており、新学期が始まるまでにすべての部署を終了する予定です。これに続いて、全教職員を対象に、昨年度の振り返りのチャレンジシートへの記入と新しい担当での目標設定を行なうことにしています。このマネジメント・システムが定着すれば、校長が変わっても学校経営は円滑に行なわれるということになります。
  一方で、昨日来年度から勤務いただく先生方に対する事前のオリエンテーションを行ないました。  また、教室をはじめとする学習環境の改善や備品の入れ替え等新入生の受け入れ準備等も順次進んできています。このように万全の体制で力強く新年度をスタートさせたいものです。  

2012年03月24日

修了式・離任式を終えて②

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  引き続いて、本年度で本校を退職される先生方の離任式を行ないました。最初に私から一人ひとりの先生を紹介し、ご挨拶をいただきました。これはそれぞれの先生の最後の授業であり、生徒達も真剣に耳を傾けていました。そして、生徒の代表から花束を贈呈し、拍手でお送りしました。
  続いて、私から生徒達に最後の挨拶を行ないました。
  〝これが皆さんにお話しする最後になります。私のこれまでの人生を振り返ると、学生時代はバレーボールに熱中。大学卒業後、66歳まで44年間さまざまな仕事をしてきました。22歳で松下電器に入社し、最初の20年間は本社で人事、その後暖房関係の事業や四国支店での営業等の仕事を担当し、通算で34年間勤務しました。そして、10年前に大阪府の公立高校の校長に就任し、雲雀丘学園の勤務は6年になります。この中でさまざまな人にお会いしてきましたが、社会で活躍している人には共通点があります。それは高い志を持ち、自分を厳しく律し、努力しているということです。まさに雲雀丘学園中学・高校の校是そのものを実践されているということです。私は人間の能力には大きな差はないと思います。はじめからイチローのような選手はいないし、医者も弁護士もいません。これらの人達は人の見えないところで、努力をしています。コツコツと真面目に取り組めば必ず道は拓けます。最後に皆さんに心がけて欲しいことを3つお話します。
  1つ目は「自分がして欲しいと思うことを人にしてあげる。自分がされたら嫌なことは絶対人にしない。」 
  2つ目は「1日1つ、爽やかな挨拶をする、ゴミを拾う、お年寄りに席を譲る、といった小さなことでいいから良いことをする。そして、1日1つ悪かったことを必ず反省する。そうすれば1日2つずつ成長することになる。この積み重ねが1年では730になり、10年では7300という大きな数字になる。」
  3つ目は「これから色々と迷うことがあると思うが、迷った時は思い切ってやるという前向きの姿勢が大切である。失敗を恐れず、挑戦する。」
  これから皆さん一人ひとりが雲雀丘学園を代表しているという自覚を持って行動し、充実した日々を送ってくれることを祈っています。〟

2012年03月23日

修了式・離任式を終えて①

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  3月19日(金)、学園講堂で修了式、離任式を実施しました。既に高校3年と中学3年は卒業しているため、対象は中学1年、2年と高校1年、2年です。
  修了式では、この1年間、部活動や校外活動で顕著な成績をあげた生徒に対する特別表彰を行ないました。表彰の内容は明るい選挙啓発ポスターコンクール入賞、朝永振一郎記念「第6回科学の芽賞」受賞をはじめ、華道部、写真部、放送部、演劇部、囲碁将棋部、ギターマンドリン部、剣道部、女子テニス部の部員達で、総数91名ということになりました。部活動の特別表彰は県大会3位以内の入賞が対象ということでかなりハイレベルなものになっています。コース制を導入した時には、進学だけを目指す学校にするのかといった意見も数多くありましたが、近年部活動の面でも活躍が目立つようになってきています。
  修了式の式辞では次のような話をしました。
  〝先程、特別表彰を行なったが、これだけ多くの人が受賞するというのは素晴らしいという一語につきる。これからもしっかりと活動して欲しい。あと半月で、新しい学年がスタートするが、この間に是非やってもらいたいことがある。それはこの一年間の反省をきっちり行なうということである。一年前に立てた計画の中で、何ができたのか、また何ができなかったのか、を確認することが大切である。特に、できなかったことに関しては、何故できなかったのかという原因を明確にしなければならない。そうしないとまた同じ失敗を繰り返すことになってしまう。その上で、新しい学年に向かって、計画を立てる。昔から「段取り八分」という言葉があるが、これは仕事を進める上で、事前の準備がいかに重要かを表した言葉で精度の高い計画をキッチリ立てておけば、その仕事は8割完了したも同然であるという意味である。
  「全力で頑張ります、できるだけ早くやります」という曖昧な言い方をしていては、計画はなかなか達成できない。課題を洗い出し、具体的にやるべきことを決め、いつまでにやるということを明確にしておくことが大切である。今、プロ野球でも、キャンプやオープン戦を行なっているが、開幕本番を前にしたこの段階での準備がシーズンを左右することになる。皆さんもこれからの半月間は規則正しい生活を心掛け、万全の状態で新年度を迎えるようにして欲しい。〟 (続く)
 

 

2012年03月22日

IT(情報処理)スキルを高める

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  これまで何度も取り上げてきたように、東西冷戦の終結に伴い、グローバル化は急速に進展することになりましたが、これを加速させたのが情報化の進展です。特にインターネットの普及は、時間の壁・地域の壁・人の壁を崩し、いつでも、どこでも、誰とでも情報の伝達ができるようになってきました。この一年間を振り返っても、アラブ諸国における動乱、東日本大震災と原発事故が発生、タイの大洪水、ヨーロッパの財政危機などによって、製造業を中心とする輸出産業に大きな経営の見直しを迫られることになりました。また、国内需要に頼っていては大きな成長が期待できないため、すべての業界において企業は否応なくグローバル化を急がざるを得ない状況になってきています。これからはグローバル展開を意識した日本の企業によるM&Aや海外展開が、益々盛んになっていくことでしょう。この様な状況を考えると、これからの社会においては、語学力と並んで情報処理スキルは欠かせないということになります。
  そのため本校においてもITネットワークの基礎知識とプログラミング等の情報処理スキルの習得に注力しています。先日も「情報科」の教諭による研究授業が行われ、プログラミングの元祖でもあるN88-BASICの実習が取り上げられました。このBASIC言語は、一行ずつ機械語に翻訳して実行するインタプリタ方式であるため、プログラム全体が完成しなくても部分的に実行させることができることや、命令が英語であるため初心者向きです。そして、試行錯誤しながらプログラムを完成させることができるため、論理的思考力と判断力も養われることになります。学習内容は、生徒達の興味をひくために図形描画とアニメーションによる「スクロールゲーム~宇宙の彼方へVer.1~」の設計と起動でした。これは宇宙空間を隕石を避けながら進んでいく横スクロールゲームで、生徒達はパソコン画面に集中しながら真剣に作業に取り組んでいました。
  生徒達が更に高度な情報処理能力を身につけ、将来の仕事の中での活用をはかっていってくれることを期待しています。なお、プログラミングは、毎年、センター入試においても「数学ⅡB」の選択問題として取り上げられています。

2012年03月21日

山は海の恋人~卒業式の式辞から

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  本校では人間教育の大きな柱として〝環境活動〟に注力しています。しかし、校長が直接生徒に語りかけたり、指導する機会は限られています。そのため、本校に赴任以来、心がけてきたことは、朝の登校指導を通じての凡事徹底と全校朝礼です。そして、この一年間中学校の全校朝礼では環境と東日本大震災に関する話題を中心に話をしてきました。
  今回の卒業式の式辞も、この二つに関連するエピソードとして、牡蠣の養殖に命がけで取り組んでおられる『畠山重篤』さんを取り上げました。
  〝畠山さんは東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼で、お父さんの代から牡蠣の養殖業を営んでいます。この仕事に就いたのは一九六一(昭和三十六)年、水産高校を卒業した十八歳の時でした。当時、気仙沼の海では、ウナギは捕れるし、貝や魚の種類も豊富で、雨が降れば海苔は豊作となるなど海の恵みは豊かでした。
  ところが、数年後のある日、牡蠣を卸している東京の市場から「牡蠣の身が真っ赤になってしまって売りものにならない」と連絡を受けました。赤潮が発生したのです。赤潮というのはプランクトンの大量発生で海が真っ赤になるという現象です。牡蠣は、海水を吸うことで呼吸をし、海水に含まれる植物プランクトンを漉(こ)して栄養にしています。大体一日にドラム缶一~二本分、つまり二百~四百リットルもの海水を吸って生きていますが、牡蠣が赤潮を吸ったためにそのようなことが起こったのです。そして、この状態が長く続いたため牡蠣の養殖の仕事を辞めてしまった仲間もたくさんいました。でも、畠山さんはとにかく海が好きだったから、何とか続けたいと思いました。赤潮が発生するのは、端的に言えば海が汚れてしまっているということです。海の仕事を続けるためには、海を美しくする以外に方法はありません。しかし、それには海だけを見ているのではなく、陸を見なくては駄目だ、ということに気づきました。昔から海苔の生育は雨の量に左右され、海に流れ込む川の水が増えると良い海苔が採れるということから、川の水に影響されているということが経験的に分かっていました。そこで、陸の方に目を向けると、水産物を加工する工場や家庭からの排水が海に垂れ流しになっています。また、農業で使用する除草剤や化学肥料などが川に流れ込んでいます。更に水源地である山が非常に荒れていることが分かりました。昔は広葉樹の雑木林が圧倒的に多かったはずの森が、戦後の植林計画によって杉ばかりになっています。しかも間伐などの手入れもされていない山が多いために、太陽の光が入らず下草が育っていません。そのため雨が降ると、あっという間に泥水が川に流れ出し、その濁った川の水が海へと流れ込んでいたのです。
  これらを目の当たりにして、畠山さんは、海、川、森を何とかしなくてはならないと思いましたが、どこから手をつけたらよいのか全く分かりませんでした。その時には既に四十五歳になっていましたが〝できることから始めよう〟という思いで、気仙沼の海を見下ろす室根山にある村の村長さんのところに出向きました。そして「海の恵みは山から流れてくる栄養のお陰です」と感謝の気持ちを伝えたのです。すると、この言葉を聞いた村長さんからは、「我々はこれまで山を大事にしてきたが、下流の村からは〝川の水を汚すな〟と言われたことはあっても、〝ありがとう〟と言われたことはなかった。今日は歴史的な日だ。」と喜んでいただいたのです。この反響は実に大きく、一九八九(平成元)年に植林祭というイベントを実施することになったのです。
  そして、このイベントの名前は〝海は森に支えられている〟ということから「森は海の恋人植林祭」ということになりました。しかし、植林を一回やったくらいでは海の環境は変わりません。この運動を続けることに意味があるということです。川の流域に暮らしている人たちと、牡蠣を作っている漁師とが、価値観を共有しなければいけないということで、その後も毎年この植林活動を続けてきました。すると、以前は大量に生息していたにもかかわらず、海の汚れと共に姿を消していた多くの魚が戻ってきました。そして、今では美しい水にしか住まないシラスウナギの姿も見かけられるようになってきたのです。森からはミネラルを含んだ豊富な栄養分が川に流れ、更にこれらを含んだ水が川から海に流れ込みます。海では、この栄養分を植物プランクトンが食べて、光合成をし、酸素を出します。その植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、更にこれを魚が食べるという食物連鎖の良い循環が生まれてきました。
そして、気仙沼の港には日本全国から多くの漁船が訪れ・活気が溢れていました。
  ところが、こうした中で昨年三月、東日本大震災が発生したのです。この地震による大津波で事務所や船、養殖イカダなどの施設が跡形もなく流されてしまいました。そして、畠山さんの最愛のお母さんも大津波の犠牲になりました。立ち上がれそうにない大きな被害を受けた気仙沼の海の民は、生きるのに精一杯で、その年の植樹祭を諦めていました。しかし、「こんな時だからこそ震災で亡くなられた方々の鎮魂と、復興を祈念する植樹祭を開催しましょう、私たちがすべて準備をしますからお客さんとして来て下さい」と語ってくれたのが、大川の上流にある室根町の山の民の皆さんでした。そして、大震災からまだ三か月も経っていない六月五日、まだ多くの行方不明者の捜索活動が行われ、被災地域への救援活動が昼夜を徹して行われている中で、植樹祭が開催されたのです。幸い天候にも恵まれて、全国から実に千二百人もの人々が集いました。
  この後、畠山さんは全国の人達に次のようなメッセージを送っています。
  「森は海の恋人植樹祭を支えてくださっている全国の皆様、心より御礼を申し上げます。今回の植樹祭では参加された一人ひとりが祈りを込めて苗木を植えてくれました。こんなに熱い心が込められた植樹祭は、世界でも初めてではなかったでしょうか。今回の大地震と巨大津波により、甚大な被害が発生しましたが、海の生産力には変わりはありません。何年かかるか分かりませんが、養殖場を復活させようと息子達と話し合っています。全国の皆さん、どうか見守っていて下さい。」
  そして、現在「森は海の恋人緊急支援の会」が設立され、義援金の募集が行われています。また、牡蠣が出荷できるまでには約三年の歳月が必要なため、牡蠣の生産者はこの間の収入がありません。そのため、今、三陸牡蠣復興支援プロジェクトが発足し、復興牡蠣のオーナー募集運動がスタートしています。このスローガンは〝踏み出す一歩、支える手、分かち合う勇気がそこにある〟というものです。
  この畠山さんのエピソードはさまざまな大切なことを私達に語りかけてくれます。大きな目標を達成するための高い志。感謝の気持ち。継続するという強い思い。困難を乗り越えていこうとする気概。互いに助け合う思いやりの心。などです。
  これからの皆さんの人生は平坦な道ばかりではなく、険しい山もあれば深い谷もあると思います。
しかし、どのような時にもこれらを避けるのではなく積極果敢に挑戦し、人生を切り拓いていってください。そして、将来人のため世の中のために役立つ人間になってくれることを心より願っています。〟


2012年03月20日

春分の日を迎えて

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     《奈良・十輪院本堂》              《奈良町》
  3月20日(火)、本日は太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さが同じになる春分の日で、祝日になっています。
  また、昔からお彼岸の中日として春の訪れを祝い、先祖に感謝する日にあたっているため、私も朝からお墓参りに行き、墓前で近況を報告してきました。その後、久しぶりに〝奈良町〟を散策しましたが、本日は祝日ということで多くの家で日の丸を掲揚しており、バスも小さな日の丸の旗を掲げて走行しています。古都奈良ということもありますが、地域差が大きいように感じました。
  今日は週間天気予報では冷え込むとのことでしたが、日中は気温も上がりポカポカ陽気になりました。この春分の日は二十四節気のうちの一つであり、啓蟄(けいちつ・大地が温まり、冬眠していた虫が穴から出てくる)と清明(さまざまな花が咲き乱れお花見シーズンになる)の間に位置しています。既に立春から数えると一ヵ月半が経過し、桜の蕾も膨らみを増し、木々も新芽も吹き出す等、厳しい寒さに耐えてきた生き物が成長を始める兆しがいたるところに見られるようです。
  まさに春分の日は、〝自然をたたえ将来のために努力する〟と定められているように、暮らしの中で繊細かつ豊かな季節感を養ってきた日本人にとって、卒業・入学、転勤・就職といった別れと新たな出会いをもたらす節目の季節の訪れを告げる日であると言えます。祝日の意味をしっかりと理解していきたいものです。

2012年03月19日

第57回中学校卒業式の開催

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  3月19日(土)、昨日までの雨も止み、暖かな天候の下、57回目となる中学校の卒業式を行ないました。思い起こせば3年前、満開の桜の花が咲き誇る中で入学してきた生徒達はこの3年間で体も随分立派になりました。教科書のぎっしり詰まった鞄を肩にかけ必死に登校してきた姿が懐かしく思い起こされます。この57期生とは大山への林間学舎や沖縄への研修旅行に同行し、学校では見られない素顔の生徒の姿を知りました。また、カナダ研修に参加した生徒も数多くおり、色々なことを思い出しながら153名の生徒一人ひとりに私から卒業証書を渡しました。
  次いで3年間欠席・遅刻・早退しなかった24人の生徒に対して一人ずつ名前を読み上げて皆勤賞の授与を行ないました。その後、県大会3位以上の成績を上げた団体・個人に対して、特別表彰を行ないました。今年の受賞は個人が1名、団体が「囲碁・将棋部」「剣道部」「女子硬式テニス部」「ギター・マンドリン部の4部です。
  続いて、「校長式辞」、「理事長祝辞」、「祝電披露」、「卒業生の言葉」、最後に卒業生全員による「卒業の歌、旅立ちの日に」、そして全員による「学園歌」で卒業式は感動のうちに終了しました。
  57期性はコース制を導入して2年目に入学した生徒達です。私は「挨拶、服装、ルール・マナーを守る」といったことの大切さを訴え、中学の全校朝礼では『環境』をテーマに色々な話をしてきましたが、「凡事徹底」や「学び 考え 行動する」という姿勢をしっかりと身につけてくれれば、将来大いに期待できるのではないかと思います。
  生徒達は間もなく高校生になりますが、ほとんどがそのまま雲雀丘学園高校に入学します。高校は中学とは異なり義務教育ではありません。そのためには、意識を切り替えることが何よりも大切です。そうしないと、高校1年生ではなく中学4年生ということになってしまいます。この卒業を機に、生徒達がしっかりと新しい生活に向けての準備を行ない、高校生活を力強くスタートしてくれることを祈っています。

2012年03月18日

養護教員研修会の開催

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  兵庫県の私立学校では、教科や分掌毎に研究会があり、雲雀丘学園中学・高校の校長に就任以来、養護教員研究会の会長をつとめています。いつもはなかなかスケジュール調整ができず、欠席していることが多かったのですが、今回は最後になるということで、出席しました。
  冒頭、私学を巡る環境は厳しいものがあるが、これからは他校にない特色づくりを進めることが何よりも大切であること、近年、精神面・身体面で配慮を要する生徒が増えている中で、養護教員の役割は極めて重要になってきていることを話しました。
  続いて、大阪府立大学人間社会学部の里見恵子准教授に〝発達障害の児童生徒の理解と支援〟というテーマで講演していただきました。この内容は以下のとおりです。
〝平成17年に発達障害支援教育、平成19年に特別支援教育がスタートした。これによって、幼稚園から大学まで、従来の障害に加えて「軽度の発達障害」を含めて地域の学校が対応することになり、養護学級は「特別支援学級」に、養護学校は「特別支援学校」に変わり、今日に至っている。そして、軽度の発達障害に該当する児童生徒数は割合は6%を超えている。つまり、平均すると500人の学校には約31人、1200人の学校には約75人の特別支援の生徒がいるということになり、この障害の種類がさまざまであるため、きめ細かい対応が必要である。そのためには学校あげての組織作りが必要である。〟
  私にとって今回が最後ということで、花束をいただき全員で記念撮影を行ないました。多くの生徒が集う学校生活においては、常に病気やケガがつきものです。養護教員という仕事は気の抜けない苦労の多い仕事ですが、これからも生徒達の視点に立って、しっかりと取り組んでいって欲しいと思っています。

2012年03月17日

歌のある卒業式

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       《高校卒業式》               《小学校卒業式》
   来週の月曜日は、本校の57回目となる中学の卒業式が開催されます。昨日の予行に続いて本日準備を行ないましたが、私は校長室で式辞の清書と業務の整理で一日を過ごしました。本校に赴任して入学式、卒業式については中学と高校合わせて6年間24回になりますが、着任当初からこのパターンは変わりません。しかし、大阪府の公立高校の校長時代、これらの式典の際には常に細心の注意を払っていたのを思い出します。
  私は卒業式の式辞は校長による最後の授業であると考えていますので、この一年間中学の全校朝礼で話をしてきた環境問題と東日本大震災に関するテーマを取り上げることにしました。
  本学園には幼稚園から高校までありますが、どの校種の式典も厳粛で感動溢れる素晴らしい内容であると感じています。幼稚園の卒園式でも園児達が大きな声で君が代を斉唱していますし、これらの児童が小学校の入学式においてもリーダーとなって君が代を斉唱しており、これが本学園の良き伝統になっています。今年も既に3月1日に高校、10日に小学校の卒業式が行なわれましたが、ピアノ伴奏による君が代、学園歌、送別の歌としての「ほたるの光」と卒業の歌として高校は「仰げば尊し」、小学校は「この星に生まれて」が斉唱されました。最近は式典において、あまり歌が歌われないケースが多くなって来ているようですが、生徒達にとって思い出に残る卒業式にしたいと思っています。

2012年03月16日

日高川からのみかんのプレゼント

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  3月16日(金)、和歌山県日高郡日高川町の玉置俊久さんからみかんが送られてきました。
  玉置さんは元、松下電器四国支店時代の同僚ですが、家業のみかん作りを継承するということで、会社を早期退職されました。そして、自ら〝みかん百姓〟と称し安心安全を目指して肥料の有機化や減農薬のみかん作りにチャレンジしておられます。一方で、日高川町観光協会の会長に就任し、和歌山県の天台宗最古の寺である道成寺に京都の妙満寺から実に420年ぶりに釣鐘を里帰りさせたり、手づくりログハウス倶楽部を立ち上げたり、備長炭の産地を売り込むため「日本一長い焼き鳥」に挑戦する等斬新なアイデアで活性化に取り組み『魅力ある日高づくり』を推進されています。まさに地域にとっては〝町おこしのプロデューサー〟として、なくてはならない人なのです。
  そして、2009年には日高川町長選で第二代目の町長に選出されました。町長就任後は近年増加し続け農作物に大きな被害をもたらしている猪や鹿を獲ってジビエの加工場を新設する等の新しい取り組みをスタートさせ、全国から注目を集めています。しかし、昨年日高地方を襲った台風で大きな被害が発生しました。今、玉置氏は陣頭指揮で村の復興に注力されています。私もこれまで何度か日高川を訪れましたが、有名な道成寺を有し、ミカンをはじめ、日本一の紀州備長炭、自然豊かな山林で育った原木椎茸、日高川漁協の鮎・アマゴ、シカや猪のジビエ、ホタル等自然の魅力が一杯に溢れています。機会があれば、是非一度現地を訪問してみてください。 
  今回届けていただいたみかんは、来週の月曜日に卒業を迎える中学3年生と教職員に配らせていただきました。伊予柑や紅八朔、デコポン等大小取り混ぜたさまざまな種類の規格外のみかんでしたが、新鮮で甘さが口の中に広がりました。玉置さんのご好意に心よりお礼を申し上げます。
  http://www.town.hidakagawa.lg.jp/  http://www.dojoji.com/    http://hidakagawakanko.sakura.ne.jp/

2012年03月15日

危機をバネに飛躍する

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  東日本大震災が発生してから既に一年が経過しましたが、この大震災は我々日本人の意識を根底から覆すことになりました。大地震やこれに伴う大津波に対する備えの弱さ、絶対安全であると言われていた原子力発電の危険性、サプライチェーンの分断による効率化を追求してきた生産システムの弱点、復興対策に遅れをもたらした政府のリーダーシップの欠如等数々の問題点が一挙に噴出しました。
  振り返ると、日本経済はバブル崩壊以降〝失われた20年〟と言われているように停滞が続いています。とりわけGDPは増えずジリ貧状態の中での小手先の改善に終始してきています。多くの人がこのままではまずい、何とかしなければと感じていたのは間違いないと思います。しかし、一方で、まだまだ何とかなるという甘い考えで課題を先送りしてきたということではないでしょうか。言い換えると完全に〝ゆでガエル現象〟に陥っていたのです。今回の大震災はぬるま湯から〝飛び出せ〟というメッセージを我々に突きつけました。この結果、迅速に動いたのは生き残らなければならないという危機感を持った企業です。そして、短期間のうちにサプライチェーンを修復すると共に製造拠点を見直し、工場の国内外への移転等を実施しました。しかし、この一方で、政府の対応を見ると、一年経った今も、がれき処理や原発の補償等のスピードが遅く、被災地の本格的な復興は進んでいません。また、電力供給という点でも明確な方向性を示せない状況が続いています。ビジョンやあるべき姿を明確にし、誰が何をいつまでにどうするというステップを作ることが必要ですが、これはまさに経営そのものです。
  今回の大震災を真正面から受け止め、この危機をバネにして将来の飛躍に結びつけることが大切であると感じています。

2012年03月14日

カナダ研修説明会の開催

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  先週土曜日の午後、社会科教室で今年の夏に実施する予定のカナダ研修旅行の事前説明会を開催しました。この研修のスタートは平成14年で、これまでやむを得ずトロントでのSARS発症と新型インフルエンザです2回中止していますが、本校の伝統の行事となっています。これまで私も2回生徒達に同行していますが、得るものは多いと感じています。この研修の狙いは、できるだけ早い時期に海外での生活を体験することにより、国際的な視野を身につけさせるということですが、これまで参加した生徒達の中で高校に進学してからリーダーとして活躍し、その後難関の国公立大学に進学している人が数多くいます。参加対象は中学2年と3年ですが、今回の説明会には60組以上の生徒と保護者が参加されました。
  今回はプリンスエドワード島の紹介ビデオを使って、旅行代理店の熊代社長から研修の説明をしていただき、その後研修旅行のDVDを紹介しました。
  これからはますますグローバル化が進むことになりますが、早い時期に日本以外の国を見ておくことは将来の進路を考える上でも非常に役立つのは間違いありません。最近、日本人は内向き思考になり、海外に出て行く人も減少の一途を辿っていますが、物の考え方も宗教も生活習慣も異なる人達との交流を通じて共生していくことの大切さを学んで欲しいと思っています。
  私もこれまで世界の多くの国を訪れましたが、その中でもカナダは魅力溢れる国です。是非、積極的に参加し、国際的な視野を広げて欲しいと思っています。

2012年03月13日

高校1年生対象進路講演会の開催

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  3月10日(土)、高校1年生を対象とした、外部講師の方による進路講演会を3つの会場に分かれて開催しました。講演では3人の講師の方から、それぞれ大学入試の現状から学習方法に至るまで、非常にためになる話をしていただきました。昨年、この講演会は高校2年生を対象に実施しましたが、今年は1年前倒しすることにしました。後、1ヶ月で生徒達はそれぞれ進級することになりますが、高校3年生になった時点で志望大学を絞りきれていない状況では満足のできる進路実現はできません。そのため、高校2年生から志望学部・志望大学を目指して取り組むようにしていきたいというのが、前倒しの狙いです。現在の高校1年生は、中学にコース制を導入した最初の学年にあたっており、この学年がどのような進路を実現するかは、本校にとっても教育の成果が問われることになります。
  そのため、本校ではこの学年(56期生)を改革1期生と呼んで、さまざまな改革を行なってきています。とりわけ、本年度からすべてのコースを対象に『国公立対応型のカリキュラム』に切り替えると共にコースの再編を行ない、従来の「特進Ⅰ」と「特進Ⅱ」を『特進』に一本化することにしました。
  常に生徒や先生に話していますが、大学進学が最終目的ではありません。将来、社会で活躍するためにどういう学部を選ぶのか、その学部であればどの大学を選ぶのかというステップが大切であると思います。つまり、大学への進学にあたっては、将来(上)から物事を見るという視点が不可欠です。現時点では、将来どういう分野に進みたいかが決まっていないという人も、数多く見受けられますが、様々な機会を通じて、社会の動きを把握するようにして欲しいと思っています。そうすれば、活躍できる場は数限りなくあるのが分かってくるはずです。
  また、大学受験は人生における節づくりととらえることもできます。自分なりの目標を決め、その目標の実現に向かって日々努力していく。仮に、うまくいかない時があっても逃げたり、安易に目標を下げないことが大切なのです。この経験は将来社会に出てからも大いに役立つのは間違いありません。
   生徒達が、今回の講演を参考にして、更に意識を高め、直ちに行動に移してくれることを期待しています。
  また、この講演会の後には、保護者対象の講演会も行ないましたが、約120名の方が熱心に耳を傾けておられました。大学受験は個人戦ではなく、団体戦であると言われていますが、家庭の協力は欠かせません。進路選択にあたっては是非、十分な話し合いを行なっていただくと共に学習環境を整えてあげて欲しいと思っています。

2012年03月12日

人との出会いを大切に

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  3月12日(月)、一年間の浪人生活の後、京都大学に合格したNさんが手紙を持って校長室に訪ねてきてくれました。昨年は現役で合格してくれることを願っていましたが、残念ながら思いを達成することができませんでした。昨年の合格発表の後、ゆっくり話をすることもなかったため、どうしているか心配していましたが、私が以前贈った〝感動は努力の結晶〟という言葉を眺めながら受験勉強に励んでいたようです。この一年間は落ち込むこともあったとのことですが、多くの人達に励まされながら頑張ってきたことを涙ながらに語ってくれました。私は大学に進学することが最終目標ではないこと、これからは多くの人から学ぶという姿勢を持ち続けて欲しいということを話しました。そして、合格の記念に一緒に写真を撮り、〝人との出会いを大切に充実した人生を送ろう〟という言葉を添えて渡しました。
  有名な陽明学者である安岡正篤氏の言葉に『縁尋機妙』がありますが、これは〝良い縁が更に良い縁を尋ねて成長していくさまは誠に妙なるものがある〟という意味です。安岡氏は人との出会いの大切さについて、この縁尋機妙と共に『多逢聖因(たほうしょういん)』という言葉もあげておられます。この意味は〝良い人に交わっていると良い結果に恵まれる〟ということです。
  人は長い人生の中でさまざまな人に会い、多くのことを学んで成長していきます。しかし、学ぶという謙虚な姿勢がなければ折角の出会いを生かすことはできません。そして、これは得てして頭の良い人が陥りやすいパターンなのです。どんなに優れた人であっても、自分一人の力で大きな目標を達成することは難しいと思います。お互いに人との出会いを大切にしていきたいものです。
 

2012年03月11日

大震災から一年が経過

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  3月11日(日)、1万9000人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災から1年が経過しました。今日は朝からテレビでも大震災に関する特別番組が放映されていました。また、天皇、皇后両陛下、野田佳彦首相ら三権の長をはじめ、被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の遺族代表ら約1200人が参列し、政府主催の追悼式が東京の国立劇場で開催されました。天皇陛下は心臓の手術後、間もないのにもかかわらず出席され、被災者に対して暖かい言葉をおかけになると共に日本国民に対しての復興の思いを語られました。野田首相もふるさと再生、教訓の伝承、助け合いの心を忘れないという三つを「み霊に誓う」と表明し、被災者と「共に手を携えて『復興を通じた日本の再生』という歴史的な使命を果たしていく」と強調しました。私も家族と共に午後2時46分、黙祷をささげ犠牲者の冥福を祈りました。
  一年経った今も避難所生活を続けている人や仮設住宅に居住している人も数多くいますが、復興に向けての取り組みは決して満足できるものではありません。この大震災と原発事故は多くの教訓を私達に与えましたが、時間の経過と共に次第に被災地に対する思いが薄らいできているように感じています。ボランティアに参加する人も減少してきているようですし、全国の自治体においても瓦礫の処理を拒否する等の動きが出てきています。最近は自分のことだけを考えて行動するという風潮が増えてきていますが、これでは世の中は良くならないでしょう。
  今こそ、全国民がこの大震災の経験を風化することなく次世代に伝えていくと共に日本の総力を結集して素晴らしい復興を果たしていきたいものです。

2012年03月10日

第62回雲雀丘学園小学校卒業式の開催

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  3月10日(土)、10時から第62回雲雀丘学園小学校卒業式が開催されました。「卒業生が入場します」という司会の声に従って、5年生の縦笛の演奏と全員の拍手で143名の卒業生が入場しました。そして、開式の辞に続き国歌・学園歌を斉唱し、続いて、卒業証書の授与が行なわれました。
  月組・星組・雪組・虹組毎に担任が氏名を読み上げると、全員が「はい」と元気よく返事をして起立、登壇し校長先生から一人ずつ「ありがとうございます」と元気よく答えて卒業証書を受け取りました。
  その後、在校生送辞や卒業生答辞も立派に行なわれ、「この星に生まれて」(卒業の歌)、「ほたるの光」(送別の歌)で、約2時間にわたる式は厳粛なうちにも暖かな雰囲気の中で終了しました。昨今、卒業式に関しては『国旗・国歌』の問題がマスコミでも取り上げられていますが、本学園の卒業式はいずれも規律ある素晴らしい式典であり、この伝統はいつまでも継続していきたいものです。
  生徒達は間もなくそれぞれの中学に進学することになります。この中の約三分の一の生徒は雲雀丘学園中学に入学することになるため、良い意味でのリーダーシップを発揮して欲しいと思っています。これからの新たな中学生活においては、生徒や先生、より高いレベルの授業等さまざまな経験をすることになります。人生にとって最も多感な中学と高校の6年間は将来社会に出て活躍するための基礎づくりという意味では極めて大切な時期にあたります。力強く中学生活をスタートするために、是非入学までに規則正しい生活や学習習慣をしっかりと身につけておいてください。

2012年03月09日

学年最後の定期考査が終了

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  3月9日(金)、学年最後の定期考査が終了し、生徒達もホッとしているようです。この考査期間中はそれぞれノートや教科書を手にしながら登校してくる姿が目につきました。また、見るからに睡眠不足の状態という生徒も数多くいたようです。この定期考査に全力で取り組むという姿勢は評価できますが、この期間だけ頑張って何とか乗り切ることができても、長い目で見るとあまり力がついていないことが多いのです。自分自身を振り返ってみても、試験の前日に明け方まで勉強したこともありますし、社会に出てからも期限ぎりぎりになって半ばやっつけ仕事で資料を作成したことも度々ありました。そして、何とかその場を乗り切るという綱渡りの経験も何度もしてきましたが、所詮一夜漬けや短期間でやるというのは、肉体的な疲れの割には良い結果に結びつかなかったようです。何故なら毎日こつこつと努力を継続する人に比べると、絶対時間が足りないからです。これは勉強だけには限ったことではありません。スポーツや芸術においても、仕事においても同じことが言えると思います。
  〝継続は力なり〟という言葉がありますが、何事も毎日やり続けていくことが何よりも大切なのです。間もなく進級することになりますが、これからの1ヵ月をどう過ごすかが極めて大切です。この一年間にできたこと、できなかったことをしっかりと反省する。そして、特にできなかったことについては必ずできるようにして新学年に臨むようにして欲しいと思っています。
  

2012年03月08日

第54回高等学校卒業式後記~大切な感謝の気持ち

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  本校の卒業式では、一旦閉式の辞が述べられた後、卒業生にバトンを渡すことが恒例になっています。今年も卒業生達はそれぞれの担任に感謝の気持ちを述べ花束を贈りました。先生達も感激のあまり涙をこらえきれない様子でした。
  人間が他の動物と異なるのは〝感謝〟や〝お詫び〟や〝思いやり〟の気持ちを持っていることではないかと思います。人間は自分一人では生きていくことはできません。生きる力が大切であると言われますが、人間は生きているのではなく、生かされているのです。食事の時に「いただきます」と手を合わせているのも多くの生き物の命をいただいているからです。そして、多くの人からさまざまな支援をもらって助け合って生活しています。
  日本は第二次世界大戦の敗戦で、国土はいたるところが焼け野原と化し、人々は衣・食・住に困窮し、耐乏生活を余儀なくされました。しかし、何とかこれらの生活から脱却しようという強い思いで、全国民が力を合わせて懸命に働いてきました。この結果、経済が発展し、物質的には以前とは比べものにならないくらい豊かな暮らしを享受することができるようになりました。しかし、この反面、心の豊かさの部分が失われ、最近は自分さえ良かったら良いという自己中心的な考え方が目に付くようになってきています。これでは世の中は決して良くならないと思います。このように自分の事にこだわる我欲が強くなりすぎると、今の生活が当たり前であると考え、際限なく上を目指すことになります。そして、感謝するという気持がなくなってしまいます。
  雲雀丘学園の創立の精神は「親孝行な人は将来立派になれる」という『孝道』であり、これは親に対する最大の感謝です。卒業生達が親や先生に対する感謝の気持ちを忘れず、日々行動していけば必ず充実した人生を送れるようになると思っています。

2012年03月07日

6年間の感謝を込めて  ②

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  現在、わが国においては、いたるところで教育の課題が現出してきています。とりわけ、これからの社会においては、グローバル化がますます進展し、求められる力も大きく変わってきます。まさに本校の教育理念である〝社会で役立つ人材〟の育成が必要になってきているのです。一方で、少子化に伴う生徒数の減少と経済情勢の変化によって、私学の経営は非常に厳しい状況になっており、まさに学校の存続をかけた取り組みが必要になってきています。
  最初に本校に赴任した時に決意したことは『生徒の視点に立った学校づくり』を目指すということでした。この方向が明確になっていないと、生徒や保護者から受け入れられない学校ということになってしまいます。着任後、校外の多くの方から本校に対する評価をつぶさにお聞きしましたが、実に厳しいもので、このままの状況を続けていると早晩学校経営は行き詰まることになるという危機感を持ちました。これを防ぐためには、抜本的に学校のあり方を変える必要があります。そこで、コース制を柱とする学校改革を断行し〝完全週6日制〟〝長期休業期間の短縮〟等の授業時間数の確保を採用することにしました。改革するということは、これまでのやり方を否定することに繋がりますし、この結果さまざまな障害が出てきます。しかし、これらを乗り越えていかなければ新しい学校づくりはできないという思いで、将来のあるべき姿を描き、不退転の覚悟で取り組むことにしました。最初のうちは、この改革が全面的に受け入れられた訳ではありませんが、教職員の頑張りと多くの皆さんのご支援のお蔭で学校改革はほぼ順調に推移してきています。
  現在、本校の学校改革は本年度より『第2ステージ』に入っています。つまり、中学改革を行なった最初の年(平成20年)に入学した学年が高校1年生になったのを機に、すべて国公立対応型のカリキュラムに切り替えました。これは幅広い学習をすることで、将来社会に出た時に必要となる力をつけさせたいという考えです。私の役割はこの第2ステージの基礎を固めるということであり、平成26年以降の『第3ステージ』は若い新しい力で切り拓いていくことが必要であると考えています。そのための体制やシステムも整いつつありますので、円滑に引き継げるものと確信しています。    

2012年03月06日

6年間の感謝を込めて  ①

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《卒業式で生徒から花束を受け取る》
 
  この度、3月末をもちまして、雲雀丘学園中学・高等学校の校長を退任させていただくことになりました。校内においては、既に職員会議で発表し、2月末には全校朝礼で生徒達に、高等学校の卒業式でも卒業生や保護者の方にお話しました。これまで、このことは本校内に留め公表していませんでしたが、その後、多くの方からもさまざまなお問い合わせがありますので、このブログでもお伝えしたいと思います。中には学校の経営がうまく行っているのにどうして退職するのかという声もありますが、雲雀丘学園中学・高等学校はこれからも生生発展し続けていかなければなりません。そのためには常に学校全体に改革のパワーが漲(みなぎ)っていることが必要です。
  現在、本校は平成25年を到達年度とする『改革の第2ステージ』を迎えていますが、本年度でほぼこの基礎固めが終了しつつあります。そして、来年度以降取り組まなければならないのは、『第3ステージ』に向けての戦略構築ですが、これは今後本校を背負っていく若い世代が中心となって行なわなければなりません。私も年度末で66歳になりますが、体力は年々確実に落ちてきており、無理が利かなくなってきました。これまでは年齢的な衰えを気力でカバーしてきましたが、この状態は長続きしないと感じています。そのため、後進にバトンを引き継ぐタイミングは今が最適であると考えて決断させていただきました。
  振り返ると雲雀丘学園での6年間は私の人生にとっても実に密度の濃い充実した年月でした。この間、皆さんには大変お世話になり、心より感謝申し上げます。
  なお、これまでの学校改革の取り組みや現状について、これから何回かに分けて紹介していきたいと思っています。      
  

2012年03月05日

卒業生へ贈る言葉~充実した人生を送る七ヵ条~

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  今回の高校の卒業式に先立ち、卒業生には『充実した人生を送る七か条』という色紙をお贈りしました。
  『親を大切にする(孝道)』
  『高い志を持つ(高志)』
  『自分を厳しく律する(自律)』
  『努力を継続する(努力)』
  『共生の心で人に接する』
  『すべてのものに感謝する』
  『凡事徹底をはかる』
  これらは、いずれも将来社会で活躍するために不可欠なものばかりです。最初の孝道は〝親孝行な人は必ず立派になれる〟という本学園の創立の精神です。続く〝高志〟〝自律〟〝努力〟は中学・高校の校是です。また、〝共生の心〟や〝感謝の気持ち〟は人間としての基本です。更に〝凡事徹底〟は当たり前のことを当たり前に行なうという意味で、日常生活を送る上で非常に大切なことです。
  先日の卒業式の式辞の中では、岡本新悟氏のエピソードを紹介しつつ、これらについて触れましたが、自分自身を振り返ってみると、正直なところ卒業式や入学式、始業式、終業式等の場で校長が話されたことはほとんど記憶に残っていません。その時には話の内容が鮮明に残っていても、時間が経過するにつれて忘れてしまうことになりがちなのです。この様な反省に立って、校長に就任してからは徹底したい重要なことはできるだけ活字の形にして生徒達に渡すことにしています。
  これから社会はますますグローバル化が進展します。この一方で、技術革新によって新しい仕事や仕組み・システムが続々と創出され、活躍する場は限りなく広がってきます。卒業生達のこれからの人生は決して平坦な道ばかりではなく、険しい山もあれば深い谷もあると思いますが、これらの実践を通じて人間的な成長をはかっていってくれることを心より願っています。
  なお、この色紙は中学の卒業生にもお渡ししたいと思っています。

2012年03月04日

卒業式後記~厳粛な卒業式

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  本校の卒業式に参列された方は、異口同音に感動溢れる素晴らしい卒業式であったという感想を述べられます。本学園には幼稚園から小学校、中学・高校がありますが、いずれの入学式、卒業式においても国旗と学園旗を掲揚し、ピアノ伴奏による君が代斉唱が行なわれます。私は卒業式は学校での最後の授業であり、入学式は最初の授業であると思っています。特に、これらの学校行事については、厳粛で暖かみのある思い出に残るものでなければなりません。そのため、本校においても予行を行ない、担当を決めて全員で準備を行なっていますが、すべて教頭にお願いして私が陣頭指揮することはありません。
  しかし、公立高校の場合には、校長は張り詰めた気持ちで予行にも立ち会っているケースが多いのではないかと思います。私が民間企業から学校に赴任して驚いたのは、学校現場において国旗の掲揚と国歌の君が代斉唱が学校のマネジメントの大きな課題になっているということでした。そのためいかに入学式や卒業式を混乱なく実施するかということについて色々と指導を受けました。実際に学校に赴任すると、事前に聞かされていたとおり、入学式の実施方法について一部の教員から意見が出されましたが、私は原理原則に従って、国旗を掲揚し全員起立の上で君が代斉唱するということを徹底しました。しかし、当時は多くの学校において、これらが遵守されず校長が頭を痛めていたようです。私も大阪府立高校の校長在任中は毎年の卒業式や入学式の時期には、気を抜けない状態が続いていたことを思い出します。その後、大阪府ではこの問題については改善が進んだということでしたが、まだ完全に徹底がはかられていない学校があるため、ついに昨年条例を制定することになりました。それでも先日卒業式を実施した府立学校107校のうち、式場内で国歌斉唱時に起立しなかった教職員数は17校、20人にのぼっていることを聞いて愕然としました。卒業式は一体誰のためにあるのでしょうか。教員が自分の主義、主張を表に出す場ではないと思います。卒業式は生徒のためにあるということをしっかりと胸に刻み込んでおかなければなりません。
  私はこれまで何度も海外に行っていますが、どの国でもいたるところに国旗は掲揚されています。また、海外からの来賓を迎える際にも必ず、歓迎の意を込めてその国の国旗は掲揚されます。スポーツの国際試合においても必ずそれぞれの国の国歌が流されます。これから国際化がますます進む中で、子ども達は世界の多くの国の人達と共に仕事をしたり、生活することになります。これからは国際感覚を持ち日本という国に誇りを持って行動していける人材を育成していくことが大切であると思っています。

2012年03月03日

第54回 高校卒業式後記 ~式辞の中より

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  卒業式の式辞の中で、取り上げた「国境を越えた心温まるエピソード」を紹介します。
  〝私の高校時代の友人で、現在奈良県で『岡本内科クリニック』を営んでいる岡本新悟という人がいます。岡本氏は、6年前奈良県立医科大学に勤務していた時、バングラデシュから1人のレザという名の医師を迎えました。
  バングラデシュという国はインドに隣接していており、以前は東パキスタンと呼ばれていたところです。人口は1億6千万人で、世界では第7位、人口密度は都市国家を除くと世界で最も高くなっています。しかし、経済的には、1人当たりのGDPが580$(日本円に直すと約4万6千円)と極めて低く世界でも貧困国の一つにあげられています。
  レザ医師は名門のチッタゴン大学の医学部を最優秀の成績で卒業し、公立病院で勤務した後、留学生として日本にやってきました。実に真面目で控えめで、日本人以上に細やかな気遣いのできる好青年でした。
  やがて彼が4年間の留学を終えて帰国する時に、留学の思い出にということで東京見物をすることにしました。その時に彼がお願いしたいことがあるのですがということで、岡本氏に話しかけてきました。「私はパグラデシュに帰ったら、生まれ故郷のガジプールという村に病院を建てたいと思っています。その病院を建てるためのお金をお借りできませんか。バングラデシュでは、医者の資格を持っている人は、高い報酬でアラブ諸国に招聘され、それを国にいる家族に送金しています。実は自分もサウジアラビアから招聘されていますが、何とかお世話になった地元で貧しい人のために、医療活動を続けたい。父もこのことを熱望していますが、親戚がお金を出し合っても病院を建てることは不可能です。
  この話を聞いて、心を打たれた岡本氏は、しばらく考えた後、間もなく大学の定年を迎えることもあって、奥さんに内緒で自分の退職金を使って、「岡本海外医療援助基金」を創設し病院を作ることを約束しました。そして、昨年ついにこのレザという青年医師の夢が実現したのです。全く医療機関のなかった人口二十万人の村に初めての病院が建設されたのです。そして、昨年の暮れに、岡本氏は奥さん(医者)と共にこの病院を訪れ、診察も行ないました。
  しかし、貧しい患者の中には医療費が払えない人がたくさんいます。この人達を無料で診療するということになると、病院の経営が成り立ちません。そこで、岡本氏は病院に隣接した土地を購入し、そこにマンゴーの木を植えることにしたのです。そしてお金の払えない患者さんの家族に、このマンゴー園で診療費の代わりに労働奉仕をしてもらうことにしました。このマンゴーを収穫して販売することにより、その収入で病院を経営していこうというものです。更にこの事業が軌道に乗れば、貯えたお金を使って隣の無医村に病院を建設するという壮大な計画です。そのためにはマンゴーの木をたくさん植えなくてはなりません。現在、彼はその基金を集めるために、多くの人に働きかけを行なっています。そして、これからも毎年この病院を訪問するそうです
  まさに、この病院建設の事業はバングラデシュと日本を結ぶ心の絆であり、夢の懸け橋です。
  このエピソードは私達に三つの大切なことを語りかけています。
一つ目は「高い志」を持つ。
二つ目は「共に生きるという共生の心」を持つ。
三つ目は「感謝の気持ち」を持つ。
  世の中のために、人のために尽くそうとする高い志があれば、必ず道は拓けます。そして、志のあるところには、人、モノ、カネが集まってきます。
また、相手の立場に立って、物事を考え行動していれば、必ずそれは自分に返ってきます。
そして、自分が生かされているのだという感謝の気持ちを持ち続けていれば、必ず世の中を明るくしていくことになります。
  どうか皆さんは「高い志」「共生の心」「感謝の気持ち」を持って人生を生き抜いて下さい。〟

    http://www.okamotomedicalfund.org/   P1030492.JPG



2012年03月02日

エルピーダメモリの破綻

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  この度、日本唯一のDRAM専業メーカーで、世界第3位のエルピーダメモリが会社更生法の適用を東京地裁に申請して倒産することになりました。
  負債総額は4480億円となり、国内の製造業の倒産では過去最大規模になります。経営が悪化した原因は、一口で言うとサムソン電子や台湾メーカー等との厳しい価格競争に負けたということですが、さまざまな理由をあげると、次のようなことになります。これらの海外メーカーは大規模投資によりDRAMのコストを下げることを達成したが、エルピーダメモリは十分なコストダウンができなかった。また、円高とウォン安の影響で、輸出の採算が悪化した。更にDRAMを搭載するパソコンや家電製品が売れなくなり、DRAMの価格が急落した。等です。
  このDRAM事業は20世紀末頃には花形産業として世界に名を馳せましたが、国際競争力が激化し、1999年にNECと日立製作所がDRAM事業を統合して同社を発足させ、その後2003年には三菱電機の事業も吸収することになりました。また2009年 6 月には、世界においてもトップクラスのDRAM の開発、設計技術を有していることが評価され、経済産業省より「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」に基づく事業再構築計画の認定を受けました。
  半導体は「産業のコメ」と言われており、日本におけるモノづくりを支えてきた基幹産業です。これまでオールジャパン体制で事業展開をはかってきたメーカーの倒産は、日本にとっては大きな痛手になるのは間違いありません。ソニー、パナソニック、シャープをはじめ日本のエレクトロニクス業界は非常に厳しい状況になっていますが、知恵を結集して、この難局を乗り切って欲しいと思っています。

2012年03月01日

第54回高等学校卒業式を終えて

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  3月1日(木)、本格的な春の訪れを間近に感じさせる素晴らしい天候の下、第54回の高等学校卒業式を開催しました。これまで高校の卒業式は初代理事長 鳥井信治郎氏のご命日にあたる2月20日に実施していましたが、この時期は国公立大学の2次試験直前であり、生徒達にとっては精神的にも落ち着かない状態です。そのため生徒の視点に立って、思い切って今年から3月1日ということに変更させていただきました。今年の卒業生は高校改革をスタートさせて3年目に入学した282名の生徒達です。
  定刻の9時半に司会の指示に従って、卒業生が保護者や在校生、教職員の大きな拍手で迎えられ席につきました。開式の辞の後、全員起立してピアノ伴奏による国歌斉唱を行なった後、卒業生全員に一人ずつ卒業証書を授与しました。続いて高校3年間、無遅刻・無欠席・無早退の34名の生徒に対して全員の名前を読み上げて皆勤賞の賞状を授与しました。この中の6名は中学・高校あわせて6年間皆勤であり、1名は小学校から12年間皆勤です。司会から紹介されると出席者からは感嘆の声と共に大きな拍手が送られました。3年間の高校生活の中では、病気になったり、体調がすぐれないといったことは何回かはあったと思います。しかし、これらを克服して今日の卒業の日を迎えたのは素晴らしいと感じました。続いて理事長表彰、学校長式辞、来賓の祝辞、在校生代表による送辞、卒業生代表の答辞、最後に在校生、職員による「蛍の光」と卒業生による「仰げば尊し」を歌った後、全員で学園歌の斉唱を行ないました。これで、感動の卒業式は終了しましたが、この後、卒業生の司会で3年生の担任や関係の先生方に花束が贈られ、校庭で記念撮影を行ない、本日の卒業式に関するイベントはすべて終了しました。  
  式辞では、先日のこのブログでも紹介した私の高校時代の友人で、日本への留学生の願いを聞き入れて、バングラデシュの無医村に私費で病院を建設し医療活動を行なっている〝岡本新悟〟氏のエピソードを紹介し、「高い志」「共生の心」「感謝の気持」の大切さをお話しました。また、卒業生の答辞の際には感極まって涙する生徒が数多く見られました。これらの詳細は後日改めて紹介したいと思っています。
  卒業式では先生方も感激のあまり溢れる涙をこらえることができない様子でした。この3年間にはさまざまなことがありましたが、これまでの苦労が一挙に吹き飛んだのではないかと思います。また、保護者の皆さんは、本日の卒業式を万感の思いで迎えられたと拝察しております。これまで、本校の教育活動に対して暖かいご支援をいただき、心より感謝申し上げますと共に子ども達を立派な社会人に育てていただきたいと思っています。