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2014年12月26日

12月の図書だよりから ④

 社会科学から新書を2冊。
 新書は各出版社から出ていますが、今回はどちらも筑摩書房から出版されている『ちくまプリマー新書』です。プリマー(primer)=入門書という意味をもつこのシリーズは、中高生を始めとした若い読者が対象です。
 著者の方たちにも「若い人向けにわかりやすく書いて下さい」とお願いしているそうなので、言葉もやわらかく解りやすい。創刊時から「自分の頭で考えましょう」をコンセプトに、その手助けになる本を作ろうという姿勢でつくられてきました。

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  ちくまプリマ―は他の新書に比べてデザイン性の高い個性的な表紙です  

 361 友達は永遠じゃない~社会学でつながりを考える/森真一
 現代社会は「人間関係が希薄だ」とか「無縁社会だ」と言われたりします。でも、それは「社会がこうあるべき、人間関係はこうあるべき」という思い込みを持った人の考え方。現代は「多様社会」といえるのではないか。
 森さんはprovisionalという単語を用い「今のところあるけれど、この後、多分変わっていく可能性が高い」という意味で「一時的協力で成り立つ社会だ」といいます
 人々の一時的な協力が繰り返されることで、社会は日々変化更新され、完成することのない永遠に建築中の建物。私たちは、その時々のシチュエーションにあった適切なやり方を考案している。
 そんな一時的協力理論というフィルターを通すと、友人関係やネット社会もちょっと違って見えてくるかもしれません。

 361 たったひとつの「真実」なんてない~メディアは何を伝えているのか?/森達也
 ニュースや新聞は絶対に間違えないと思い込んではいけません、だからと言って何でもかんでも疑えばいいって事でもありません。
 メディアからの情報で、人々は混乱する、刺激をもらう、一喜一憂する。時には、その情報に踊らされ大きな間違いを犯す。たくさんの人が泣いて、たくさんの人が亡くなり、絶望する。
 じゃあメディアは必要ない?いいえ。人と人との繋がり、関係を断ち切ることはできない。遠く離れた場所で苦しんでいる人がいれば力になりたい、できることをしたい。そのための情報を得るのに必要不可欠なのもメディア。
 私たちはメディアから情報を受け取り、世界観をつくる。でも、その情報に大きな影響力を与えるのも私たち。あくまでもメディアをツールとして正しく使う方法:メディア・リテラシーを身につけ、自分の目で確かめる事が大切です。

2014年12月24日

12月の図書だよりから ③

 観光・レジャー産業の分野から。
 689 真夜中のディズニーで考えた働く幸せ~シリーズ・14歳の世渡り術/鎌田洋 (河出書房新社)
 「ディズニーの〇〇の神さまが教えてくれた」は、ディズニーランドで働く人たちと来園者の様々なエピソードを集めたのシリーズ。既刊3冊は図書室でも人気があります。これは、そのシリーズの著者である鎌田さんの自伝的な1冊です。

 新婚旅行で生まれて初めての海外、アメリカのディズニーランドを訪れた鎌田さんは、そこでディズニーの魔法にかかり一気に魅了されます。数年後、ディズニーランドが日本に進出するとわかると、勤めていた会社を辞めて採用試験に挑戦。でも、受けても受けても不採用。5回目の挑戦でやっと採用され、「ああ!これであこがれのディズニーで仕事ができる!」と喜んだのもつかの間、配属されたのは閉園後のパークで働く「夜の清掃部隊:ナイトカストーディアル」。
 真夜中のディズニーランドには、パレードどころかミッキーもミニーもいません。

 落胆とともにはじまったディズニーでの仕事でしたが、そこで出会ったのが本家アメリカのディズニーからやって来た「掃除の神さま」ことチャック・ボヤージンさん。
彼との出会いが鎌田さんの意識を変え、人生に大きな影響を与えていくのです。
 あきらめずに挑戦し続けてきたこと、仕事を通して学んだこと、その哲学が語られています。

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  ただ今どちらも貸出中。      鎌田さんの「ディズニー〇〇の神さま」シリーズ3冊 
 
 ディズニーから影響を受けたという人がもう一人。 言語の分野から
830 夢をかなえる英語はディズニー映画が教えてくれた/飯田百合子(サンマーク出版)
 留学経験もなく、帰国子女でもない。「英語力ゼロ」のレベルから、国際会議の同時通訳をこなすまでになった飯田さん。
 大好きなディズニー映画を英語のまま、何度も何度もみていたことによって、頭に自然と英語が刷り込まれていったといいます。ディズニー映画で英語を勉強するときに必要なルールや、作品中の英語のフレーズを紹介しながらの体験談。


2014年12月22日

12月の図書だよりから ②

歴史の分野から
210 梅干と日本刀、 続・梅干と日本刀/樋口清之(祥伝社)
 考古学の研究者であった樋口清之さんが、日本の良さ、日本人の特徴、日本人の気質について語ったもので、最初に出版されたのは40年ほど前。近年、この2冊が新書として復刊されました。

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 日本古来の「衣・食・住」における様々な習慣などの具体例をあげ独自の解釈を展開。それらの習慣は現在も受け継がれているもの。災害も多く高温多湿といった日本独特の自然や風土を逆に利用、工夫して培ってきた、その科学性、独創性、柔軟性、計画性などをわかりやく解説しています。

 例えば、日本人は「一人(個人)で生きている」ではなく、「共同体の中で生きている」という思想がある。それは稲作文化によってうまれたもの。
 面白い大阪商法として紹介してあるのは、欲しい鞄があって買いに行ったけれど行った店になかった。店主は「ウチにはおまへんけど、多分あの店にありますわ」といって他店を紹介した。
 これは、買い手の立場に立った視点、同業者同士の連携、自分の店だけを考えたエゴイズムでなく、もっと大きな視野にたった共同体的商法だというわけです。

 例えば、現在、科学的に食事が観察され、どれだけのカロリー、塩分が必要で、どの食品にどれだけの栄養がある、という見方がされています。でも本当に必要な知識は、食品のもともとの栄養ではなく、お腹に入ってどれだけの栄養が肉体の糧になるのかということ。
 ごぼうやこんにゃくは栄養がほとんどないけれど、体内のコレステロールを吐き出してくれる作用がある。梅干は食べたご飯の酸性を中和しほとんどのカロリーを吸収できるようになる。それらの食習慣は、日本古来からのものです。

 日本は昔から、人もモノも文化も、新しいものを受け入れては試してみる精神がありました。自由な企画発想、それを日々実行するうちに一種独特で多層的な文化ができてきました。
 近年、日本の伝統のすばらしさは、「COOL JAPAN」として世界からその存在を認められ注目されています。それが如何に世界に誇れるものか、すでにこの本を書いた40年前から樋口さんは伝えています。

2014年12月18日

12月の図書だよりから

 ひばりの図書室12月号から新着図書を紹介します。

 スタンプラリーでもよく貸出されていた分類番号『159』 
ここには人生訓・教訓などが分類されます。人生訓と言われても、きっと「?」と思いますよね。辞書でひくと「人間の生き方についての教え」とあります。もちょっと身近な感じでいうと「落ち込んだときや辛いときなど読むと、ちょっと前向きになって元気が出る言葉」でしょうか?
 もちろん、調子にのりすぎないよう戒めの人生訓・教訓もありますが、図書室の棚にはどちらかというと「よし、気持ちを切り替えていこう!」「うん、元気が出てきた!」と思えるものや「がんばりすぎなくていいよ」という種類のものが多いです。

 そんな中で新着書架に並べるとすぐ、貸出されているのが
 キテイが選んだ輝く言葉たち/アミューズメント出版部・編(講談社)
キティちゃんが選んだだけに、多くが女子向けの言葉です。皆さんもよく知っている女優・歌手・作家達がインタビューなどで語った言葉と解説がつけられています。(キティも、もれなく一言コメントしています・・・)

 勇気は筋肉と同じで、使うことによって鍛えられます。(ルイス・ゴードン)

 恐れを抱いた心では、何と小さいことしかできないでしょう。(ナイチンゲール)

 この世の最大の不幸は、貧しさや病ではありません。自分は誰からも必要とされていない、と感じる事です。(マザー・テレサ)

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 分類番号『159』の棚には他にも、
まちがったっていいじゃないか/森毅(筑摩書房)、キッパリ!/上大岡トメ(幻冬舎)、夢がなくても人は死なない/三浦展(宝島社)、まぁいいかあ。/宝彩有菜(廣済堂出版)、 少し前のベストセラー「女性の品格」の著者が10代向けに書いた 大人になる前に身につけてほしいこと/坂東眞理子(PHP研究所)など多数。
  共感できる言葉が見つかるかな?

2014年12月13日

冬休み開室カレンダー

 2学期もあと残すところ、1週間になりました。

 冬休みの長期貸出しを利用して、たくさんの本が貸出されていきます。
図書室は、冬休み中下記のスケジュールで開室します。自習に、本選びに
活用してください。

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 * 開室カレンダーを掲載した、ひばりの図書室12月号を本日配布しました。

2014年12月08日

冬休み貸出 はじめました

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  冬休みの長期貸出、始めました


 返却期限  :  1月14日 (水)

 貸出冊数  :   8 冊


 期間中は、何度でも貸出・返却できます
 スタンプラリーも、終業式返却分まで
 OKです 


 期末考査も終わり一安心、気が抜けて油断したところをインフルエンザや風邪のウィルスにつけこまれないように! 基本的な事ですが、うがいと手洗いは予防効果・大です。(消毒用アルコールは出入り口脇にあり)
 
 これから、高3生の自習利用が増えてくると思います。たくさんの人が利用しますから、自分で出来る対策はしておきましょう。
 特に夕方、暖房は効いていても、窓際は足元が冷え込んできます、ひざ掛け等で調節できるといいですよ。

 

2014年12月04日

結晶の話

 世界結晶年ですから、結晶の話も少し。 
 Newton別冊 すぐわかるビジュアル化学~イラストでみる、原子・分子・結晶・高分子 (ニュートンプレス) を読んでみると
 多くの物質は温度や圧力などの条件によって、気体・液体・固体の3つの状態を移りかわっていきますが、その状態を決めるのが、物質をつくっている目には見えない小さな原子や分子の動き。それらは、方向性を持って規則的な並び方を繰り返しています。それが『結晶』(詳しい事は化学の先生へ)

 この本では他にも、どうしてストローでジュースが飲めるのか、花の香りをかぐ時や熱い缶コーヒーを握った時に原子レベルで何が起きているのか?など身近な事柄とイラストを用いて原子や分子を説明。高校化学で登場する分子式の書き方や有機化合物の化学反応なども紹介してあります。

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  さて、授業とは別に「結晶」と聞いて、思い浮かべるのは「雪の結晶」では?
すでに17世紀頃から、天然の結晶は「美しい」と科学者たちの興味の対象になっていました。雪結晶とは成長する氷。降ってくる雪結晶にふたつと同じ姿をしたものはないそうです。

 そんな雪結晶に魅了された一人、米国の物理学者 ケネス・リブレクト。
彼は氷という物質の特性、結晶が成長しあの様に手の込んだ模様を形成する物理過程、さらに雪結晶を人口的に実験室で作り出す方法などを研究しています。
 SNOWFLAKE/ケネス・リブレクト(山と渓谷社) では、研究内容と共に、彼がこれまで採集した数々の雪結晶の写真が満載。その自然が造るデザインの多様性にびっくりします。そして、とても美しい。

 雪結晶の話題に欠かせないのが、ウィルソン・ベントレー。今から150年程前の米国、子どもの頃から顕微鏡で見た雪結晶の構造に興味を持ち、魅力に取りつかれ生涯写真に収め続けたアマチュア写真家です。晩年、世界で初めての雪結晶の写真集を発表し、その写真はリブレクトをはじめ多くの研究者に影響をあたえました。そんなベントレーの伝記絵本 雪の写真家ベントレー/ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン(BL出版) 

 今週に入り、近畿地方でも北部では初雪が観測されています。今冬は雪結晶ウォッチングしてみてはどうでしょう。その時に雪結晶を、水蒸気が空気中で昇華凝結したものとみるか?それとも、はかない芸術作品とみるか? 

2014年12月02日

寺田寅彦という人

 物理学の世界で、近代結晶学が誕生してから約100年、その研究は23ものノーベル賞につながり科学技術の発展に貢献してきました。その業績を記念して今年は世界結晶年に制定されています。

 日本でも物理学者・寺田寅彦が、X線回折の実験を行い「X線と結晶」と題する手紙を1913年に英国科学雑誌Natureに送ったそうなので、日本における近代結晶学も100年の歴史を持っているということですね。

 この寺田寅彦、東京帝国大学の実験物理学者でしたが、文筆家でもありました。同世代の夏目漱石や正岡子規とも交流があり、漱石の「吾輩は猫である」や「三四郎」には彼をモデルにした人物が登場しています。
 「ひどく内容の深いことを、とぼけたようにさりげなく」書く彼のエッセイは、大衆の心をつかみました。とにかく色々なことが気になる、気になるから考える、考えているうちに思考スケールが大きくなる。身近な話題(湯飲み茶わんの湯気や窓ガラスのひび割れなど)から、科学的な話に広がります。そのひょうひょうとした文章に人々は読み魅かれる。
 100年ほど前に、すでに生涯教育の大切さを説いたり、「子どもを教育するばかりが親の義務ではなく、子どもに教育されるのもまた親の義務」と、科学的なこと以外も語っています。

 「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉をきいたことがあるでしょう。
これは寺田寅彦が残した言葉です。人間がどれほど忘れっぽいか、自然がいかに頑固で執念深いものか、随筆『津波と人間』にも書かれています。
 そんな寺田寅彦のいろいろなエピソードを集めた 寺田寅彦は忘れた頃にやって来る/松本哉(集英社) 
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他にも、寺田寅彦随筆集/寺田寅彦(岩波書店)や、岩波少年文庫の科学と科学者のはなし~寺田寅彦エッセイ集/寺田寅彦(岩波書店)  などで彼のエッセイを読むことが出来ます。