« 2015年02月 | メイン | 2015年04月 »

2015年03月20日

  「敦煌」「しろばんば」「あすなろ物語」などで知られる作家の井上靖さんが、座右の銘としてよく色紙に書かれていた言葉があります。『養之如春』
 これを養うこと春のごとし。春の陽光が植物や動物を育てるように焦らずゆっくりと、という意味です。
 中国後漢の歴史家、班固が前漢に関する史書「漢書」の中で記したもので、初めて読んだ時にとても印象深く、春が来ると思い出す言葉になりました。
 漢書では 『涵之如海 養之如春/之(これ)を涵(ひた)すこと海の如し 之を養うこと春の如し』と続きます。学問や見識は、海のように広い文化的教養にたっぷり涵らせ、春の陽ざしが万物を育てるように養っていきましょう。万事、焦らず、じっくりやりましょう、というような意味。
 一昨日は中学の卒業式。先月は高校でも卒業式が行われ、それぞれ3年生を見送りました。まだ受験の真っただ中にいる高3生もいますが、節目を迎えたみなさんにこの言葉を贈ります。

 ところで、漢文(漢詩)と言えば、この季節、教科書でもおなじみなのが 『春眠不覚暁/春眠 暁を覚えず』 ですね。孟浩然の詠んだ『春眠』の第1句です。「春の夜はまことに眠り心地がいいので、朝が来たことにも気付かず、つい寝過ごしてしまう」 (大辞泉より) 全くです。
 それを、女子感覚の現代語訳にしたのが足立幸代さん。ずばり 「春の朝寝は最高だ」 布団から出られない人生屈指のしあわせ時間の詩として訳しています。

 「漢詩、結構おもしろいよー」の気持ちで解釈する足立さんの手にかかれば、詩経の中の一つが、初デートの待ち合わせ中、浮かれている男子だけどドタキャンのにおいがする・・・(静女) となり、李白の詩は、友達とは少しでも長くいたい、名残惜しくてもじもじしちゃう・・・ となります。昔の人も現代の私たちと大してかわらない、と思えるのでは?春の宵、漢詩に挑戦してみませんか。
     
        kmmnkk2.jpg

気ままに漢詩キブン/足立幸代・編著 三上英治・監修(筑摩書房) では、それぞれの漢詩の、原詩・書き下し・訳詩・注釈・が紹介され、独特のイラストも添えられています。

2015年03月13日

春休みの長期貸出

 春休みの長期貸出を始めています。 思う存分、読んでください。

       返却日   4月15日 (水)
       貸出冊数   8 冊
      
                        %E6%98%A5.jpg              
 ただし、中学3年生は春休みの貸出は出来ません

かりている本は卒業式までに必ず返却してください。

 春休みは書架整理の為、閉室します。

 現在の予約・リクエスト図書の記録は、中3生の分も含め
 引き続き新年度へ継続します。
 

2015年03月11日

4回目の3月11日

 東日本大震災から4年。今日は津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市にある製紙工場の復興を追った1冊を紹介します。

   紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている/佐々涼子(早川書房)        
         kmotng.jpg

 印刷用紙の原料は、ユーカリなどの広葉樹チップと松の仲間の針葉樹チップ。それらを微妙な加減でブレンドし、手触りや質感、重さを変え単行本や文庫本、雑誌用にと製造されます
 そんな国内出版用紙の約4割を担っているのが日本製紙。その主力であり、世界屈指の規模を誇る石巻工場。震災当日、大きな揺れの後に起こった津波による被害は壊滅的で、工場の機能は完全に停止してしまいました。

 しばらくするとその影響が出版業界に出はじめます。深刻な紙不足。書籍や雑誌の刊行スケジュールに大きな狂いが出て、発売中止になるケースも。

 「半年で復興する」「全部のマシンでなくていい、まず一台を動かそう」そう宣言した工場長のもと、電気もガスも水道も復旧していないなか、従業員たちの闘いが始まります。
 全国の出版社の「石巻の紙を待っている」という熱いメッセージ 「工場の煙突から、以前のように白い煙を上げてほしい」という地元の思いが背中を押します。
 壊滅的な状況からわずか半年で主要マシンを稼動させ、その1年後には「完全復興」を遂げるまでの奇跡のドキュメントです。

 ふわっとして厚みがあり軽くて持ち運びに便利、子どもたちが柔らかい手で触っても指を切らないようなコミック誌用の優しい紙。 毎日めくっても破れない、耐久性重視の教科書用の紙。 限りなく薄く、いくら使っても破れにくく、静電気防止加工された辞書のための紙。
 私たちが当たり前に接するそれぞれの紙は、多くの人の手と、すばらしい技術によるものです。

2015年03月10日

初めてのパターン

 期末考査も終わり、あとはいくつかの行事を残すのみになりました。
テストが終わったらおすすめ本を紹介するね、と話していた高1生がさっそくやって来ました。「こんなイメージの本が読みたいです」と鞄から取り出したのが、下のノートのイラストです。「言葉では説明しにくいので絵を描きました、こんな感じの本でお願いします」 おお、これは初めてのパターンです。

h1di2.jpg h1di1.jpg

 彼女が読んで面白かったと思ったのが
ファンム・アレース/香月日輪(講談社)
 滅んでしまった王家の生き残りであるララは、莫大な力「聖魔の魂」を持つため類稀なる運命を担っています。10歳の少女ながらも、その宿命を背負い聡明で魔法も剣も使いこなすララが出会ったのが、賞金稼ぎや用心棒で暮らしている剣士バビロン。2人は「聖魔の魂」の謎を解くため、仲間たちと共に旅に出ます。140歳(!)の年の差カップルのやり取りも微笑ましいです。

そんな世界観をイメージしてイラストを描いてくれました。早速、提案したのが
スタープレイヤー/恒川光太郎(KADOKAWA)
 ある日、突然現れた謎の男から引いたくじで1等を当てた夕月。賞品は「10の願いが叶う」力。ただしその力が使えるのは異世界、そして行ったからには100日間は現実の世界へ戻って来られないのが条件。その権利を受け取った夕月は、気がつくと何もない草原に立っています。手元にあるのはスターボードと呼ばれるタッチパネルと、そこに組み込まれた専属の案内人だけ。
 これから「スタープレイヤー」という特別な立場で、明らかに現実の世界とは違い、なんの情報もないその世界で過ごす夕月。どんな願いをどんなふうに叶えていくのでしょう?

 そして、もう1冊 GOSICK/桜庭一樹(KADOKAWA)も併せて紹介。
 舞台はヨーロッパの架空の小国ソヴュール。日本人留学生・久城一弥が図書館で出会った少女・ヴィクトリカは学園で起こる難事件を次々解決していく頭脳の持ち主。二人が遭遇するさまざまな事件を描いた全13巻からなるジュブナイル・ミステリー。

 感想を聞くが楽しみです。

2015年03月03日

2冊の寄贈本

 学園に関わりのある本が2冊、寄贈されました。

宝塚市の60年/宝塚市・制作 金斗絃・絵 (福音館書店)
1954年4月1日に宝塚市が誕生して昨年で60年です。(ちなみに学園中学校はこの春、第63期生を迎えます)

 市制60周年を記念して作られた絵本には、武庫川を挟んで宝塚駅周辺の1950年頃から昨年までの移り変わりが金さんの手による細かなイラストで描かれています。(1960年に宝塚ホテルで結婚式を挙げる手塚治虫さんの姿も)
 どんどん発展していく街、そして1995年の大震災を経て復興してきた様子。イラストだけで60年を振り返っています。
             ksh01.jpg

13歳のチカラが世界を変える/アルポムッレ・スマナサーラ (サンガ)
 スリランカ上座仏教の僧侶であるスマナサーラ長老は、13歳で出家、大学で教鞭をとるなどした後、来日。現在は流暢な日本語による説法で、ブッダの根本の教えを説く活動をされています。
 これまでに学園中学では長老をお招きし講演会を行っています。2010年春の講演『よい親も、よい先生も、あなた次第』の様子は、13歳へ(サンガ) という本にまとめらました。

 子どもは育てられる側、大人は育てる側と決めつけない。大人だって子どもに育てられる。コミュニケーションを取って大人の能力を育てよう。
 「私が先に笑うと世界が私に笑ってくれる、私が先にありがとうと言うと世界はいつでも私を助けてくれる」 世界を味方につけるか敵に回すか自分の心次第。
 中学生にもわかりやすいお話で、最後には「愛ってなんですか?」「人と人との関わりで、宗教の違いで気をつけるところはなんですか?」等、中学生との質疑応答も行われました。

今回、他校での講演『将来ってなんだろう』が追加され、新しく出版されました。
 将来に対して不安や心配を感じて悩まなくていい、人生を大げさに考えすぎないで。今をしっかり生きる、それが将来の材料になる。
 人が生まれた時に持っているエネルギーはもの凄い。そのエネルギーを無駄使いせず、充電しながら生きていきましょう。生きることは大変な事ではない、すごくシンプルで楽しいことですよ。

 自分で判断し、自分の足で立って、生きていかなければいけない時期、それが
13歳だとおっしゃっています。