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緒方貞子さんのこと

 国連難民高等弁務官事務所:UNHCR(United Nations High Commissioner for Refugees) そこは世界各地で迫害や戦争によって、故郷を追われた人々に保護と支援を行なう国連機関です。
 そのトップである国連難民高等弁務官に世界初の女性として就任したのが緒方貞子さんです。1991年、63歳の時でした。それから10年余り、難民救済のため世界を駆け回った活動の様子と緒方さんの半生を描いた「緒方貞子~戦争が終わらないこの世界で」が先日、NHKスペシャルで放送されました。

 防弾チョッキを身に着け、自ら危険を冒し世界の紛争地へ赴く、超・現場主義の緒方さん。
 国内の避難民(国境を越えていない)は難民ではないから、保護すべきではないとするUNHCRに対し「ルールを守ることより命を救うことが大事だ」と国内避難民にも国連の支援を得て行った救援活動、危険すぎるからと国連に国際部隊の派遣要請を断られたアフリカでは、直接現地の軍隊に交渉して難民キャンプの治安を確保、いずれも緒方さんが行った異例、かつ初めての試みです。
 その前例に取らわれない決断力。最後は一瞬のカンだと話されていました。そして、熱い心と冷たい頭をもって、と。
 希望に満ちた事も、絶望に追いやられた事もあったそんな10年間をまとめたのが、紛争と難民:緒方貞子の回想/緒方貞子(集英社) です

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 その同じ時期にハリウッド女優のアンジェリナ・ジョリーさんが、UNHCRの親善大使を務めていました。その時の様子を彼女自身がまとめた思いは国境を越えて(産業編集センター)
 各地の難民キャンプを訪問、そこで人々と生活するうちに彼女の考え方が変わっていく様子を日記と写真で綴っています。自ら知り学ぶことで、ニュースのヘッドラインだけで判断しない様になるはずだと言います。

 直木賞受賞作の 風に舞いあがるビニールシート/森絵都(文藝春秋)
UNHCRで働く人たちを描いた作品。
 パートナーであるエドを『温かい家庭』をもって、安全な場所に引き止めようとする里佳に「難民キャンプでは人の命も尊厳も、ささやかな幸福もビニールシートみたいに簡単に舞い上がって、もみくしゃになって飛ばされる。荒ぶる風に抗い続けるためには、誰かが手を差し伸べシートをしっかり大地に引き止めなくちゃならないんだ」と言って、紛争地勤務を希望し続けるエド。
 そして、エドが難民の少女をかばい銃弾に倒れたという知らせが届きます。残された里佳のくだす決断は・・・