学校ブログ

卒業生~母校は母港になる

No.55(43期)私の宝物

2022/12/22

中高43回生の谷川(旧姓松井)美佳と申します。

 先日、久しぶりに雲雀を訪れました。校舎やグラウンドがより綺麗に、立派になっていることに驚きましたが、流れている空気や懐かしい風景はそのままであることがとても嬉しかったです。

 在学中は、決して優等生タイプではなく、先生方にも親にも多方面で心配をかける生徒でしたが、先生方や友人にも恵まれ、1年間のアメリカ留学も経験するなど充実した6年間を過ごしました。

 卒業後は同志社大学法学部に進学しました。なんとなく面白そうだから、という理由で選んだ法学部でしたが、法律の勉強は本当に面白く、また、タイミングよく法科大学院設立の時期と重なったこともあり、大学卒業後は神戸大学法科大学院に進学しました。

 暗黒の司法試験受験時代に突入です。特に、試験に合格するまでの最後の1年間は本当に辛く、精神的にも肉体的にも追い詰められ、もし今年試験に落ちたらもう私の人生終わる、と本気で思っていました。全然、終わったりしないんですけど、当時はそれだけ追い詰められていました。

 でも、そのおかげと言いましょうか、その後経験する弁護士業の激務や、さらにそのもっと先に経験する2度の出産も、あの受験時代の辛さに比べればこんなもの。。。と思える心の余裕のようなものがいつの間にか生まれていました。もう思い出したくもない受験時代ですが、人間万事塞翁が馬、すべてのことに意味があったと今になってみればそう思います。 

 司法試験合格後は、1年間の司法修習を終え、神戸の法律事務所に勤務し、一般民事事件や刑事事件を担当しました。事務所のボスや先輩弁護士から弁護士としての基礎を叩き込まれ、とてもやりがいのある仕事でしたが、結婚後、夫の仕事の都合で東京へ引っ越すことに。お世話になった法律事務所を辞めることになり、さてこれからどうしようとなったタイミングで、消費者庁が、弁護士資格を持った人材を募集しているのを見つけ、運よく霞が関で任期付公務員になることができました。 

 法律事務所での業務は、過去に生じた紛争の解決が主なものでしたが、消費者庁での仕事は、過去に起こった消費者事故の原因を究明して、同じような事故が二度と起こらないように、事故の再発や拡大防止策を関係省庁等に提言する、というものでした。過去に起こった事故の教訓を未来にどう活かすか、という未来につながる仕事は、弁護士業務とはまた違った面白さ、やりがいがあり、様々な分野の専門家とチームを組み、事案の調査や分析、再発防止策の検討、関係省庁との折衝に明け暮れる毎日でした。

 それでも、そろそろ弁護士業も恋しくなってきたし、そもそも関西に帰りたいし・・・と思いはじめていた矢先、今度は夫の海外赴任が決まりました。人生何が起こるか分かりません。 

 5年間勤務した消費者庁を退職、後ろ髪をひかれながら関西を飛び越えてドイツのデュッセルドルフという街に引っ越しました。

 今まで、仕事が忙しいことを口実に、家事は超適当、子供のことは保育園に丸投げだった生活から一転、35歳を過ぎて初めての専業主婦です。

 ドイツ語が全く分からない中でスタートした駐在生活は、初めてのママ友づきあい、幼稚園のお弁当作りに公園デビュー等々、こんな世界があったのかとはじめは驚愕しましたが、慣れてしまえば楽しく、自然豊かなドイツの地で、子供とじっくり向き合い、家族の時間をたっぷり持てたことはとても幸せでした。

 途中、コロナに翻弄されながらもヨーロッパ中を旅行したり、次女を出産したり、盛りだくさんな4年半の駐在生活を終えて、202210月に帰国しました。 

 そして今現在は、神戸に日本本社を構える製薬会社の法務本部で働いています。製薬業界はもちろん、いわゆる企業法務の分野も初めてです。医薬品情報や、疾病と治療、すべてが一からの勉強なのですが、新しいことを学ぶなかで細胞がふつふつと湧き上がるような、久しぶりに味わうこの感覚、大変ながらもわくわくする毎日です。

 法律の観点から医療の一翼を担うこの仕事は、人間の生命・健康を支え、周りの人たちの生活をより豊かなものにすることができる、既にそう実感しており、よーし頑張ろう!と意気込んでいるところです。 

 どこに行っても、何歳になっても、心身の健康とやる気があれば何だってできます。無限の可能性があります。それに早い段階で気づかせてくれたのは、雲雀丘学園の先生方でした。親を大切にすること、人と社会に尽くすこと、努力すること、雲雀丘で教わったことは他にも数多くありますが、特にこの3つは、6年間かけてゆっくりと私の土台となり、今でも大切にしている指針です。

 そして、10年以上会っていなくても、再会すると一瞬で中学生高校生だった時の関係性に戻れる雲雀の友人たち。

 疲れた時や、何をやってもうまくいかない時、そっと中をのぞいて眺めていたい、そんな気持ちになる雲雀時代は、私の宝物で、そして私の母港です。

 谷川美佳(2001年卒業/43回生)

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