学校ブログ

卒業生~母校は母港になる

(21期)行くべき道が、私を導いてくれる

2023/01/23

卒業生 ~我が人生を楽しむ~

『お前は、今のままの時間の使い方で、本当にいいのか?』

47才胃がん。転移ありStageⅢ。命と向きあった私自身への問いの答えは、

即答・・・「NO!」でした。 

1.プロローグ

高校卒業後の商学部四年の秋、突然、薬剤師の母親が私に言った一言・・「薬学部に行ってみ?」・・・思えば、これが全ての始まりでした。化学嫌いにも関わらず、「行こう!」という気持ちが湧き上がりました。人の役に立ちたいとか、国家資格が欲しいという意気込みもなく、ただ素直な気持ちに頷いてギアを入れた私。結果、翌春には薬学部入学、4年後に国家試験合格、京大病院薬剤部研修生から北野病院(大阪市北区)就職へと、道は繋がりました。 

2.ギアチェンジ

47才で胃がん。5年生存率60%と告げられました。がん領域では希望を持てる数字ですが、自分に対して提示された時には意味が違っていました。「5年後、私はこの世にいないかもしれない」・・・次なるギアを入れ、3年後に僧籍(西本願寺)を取得、入会した患者会(がん患者グループゆずりは)の代表も引き受け、緩和ケア病棟で末期がん患者と対応する宗教者という立場も与えられました。

緩和ケア病棟で次々と亡くなる人は自分と同じ、がん患者。その姿が全部自分に見えてきて、「私も逝く者だ」・・という感覚に包まれます。死が近くに迫って生きている現実を突き付けられた中で、浮かんできた「自分に出来る事は何か?」という問い。その答えは簡単に見つかりました。

『それまで どう生きるのか?それしか私に与えられた自由はない』

スタートシグナル(信号)が青色に変わりました。 

3.地域包括ケアの時代に必要なもの ~2020年「医療と暮らしを考える会」 設立~

厚生労働省は地域包括ケアシステムを構築し、「在宅医療の充実」を目指しています。がん患者も在宅療養の選択が出来ます。しかし病状が厳しく進行しているにも関わらず家族が治療を望み続け、結果、穏やかな最期を過ごしたいという本人の意向と違う結果になることがあります。家族間のコミュニケーション不足の問題ですが、医学を魔法と勘違いしているのではないかと思える家族もいます。どれほど医学が進歩しても死は避けられません。希望を持つ事は大切ですが、死も自然な出来事であると国民が意識しなければ地域包括ケアシステムは上手く回らない。どうにもならない死に上手く向き合う知恵が、今こそ必要です。それを説くには医療者+がん患者+僧侶である私が行くしかない・・・この思いを抑えきれず、201959歳で北野病院を退職しました。

翌年、医療と暮らしを考える会を設立し、高校20期の倉橋秀和氏と共に、がん患者と並走する家族の心得セミナー(13回講座)を毎年開催しています。医療者と共に多くの患者さんも登壇し、生(なま)の声によって実際の暮らしや患者の思いを学び、自分に出来る事を行いつつ家族間で流れるものを大切にしてもらうことが狙いです。やるべき事にキチンと向き合っていくと、医療から離れるべきタイミングがきても受け入れる心構えが出来ます。これは医療や行政と異なる位置から、地域包括ケアシステムを進める活動だと、私は考えています。 

4,コミュニティービジネス開始2022

年齢を重ねると、心の底から話せる友達は限られてきます。自分ががんになったり、家族ががんになっても、深い思いを友人に話しません。高齢の親を介護する人が、介護経験のない学生時代の友人に胸の内を話して「大変そうだけど、頑張ってね」と軽く扱われたり、「私には真似が出来ないわ。さすがよね」と言われると、それ以上は何も話せなくなってしまいます。でも思いを一人で抱えていると、生きるのが息苦しくなるのが人間です。それは私自身のがん体験や患者会活動から見えています。

そして実体験を持つ者同士で交わされる言葉の中に『力の湧きあがる言葉』が潜んでいる・・そのことも私は知っています。閉塞感を抱えた人達に生きる力が湧き上がる出逢いを作りたい。そう思った私は、心から話せる友達作りの場を事業として開始しました。与えられた境遇を生き抜く力を育むことが狙いです。深い深い思いを抱えて人は生きているのだと毎回、思いながら元町人生アカデミーを続けています。  

5.皆様へ

患者、僧侶、32年間の病院薬剤師歴など・・・これらを持ち合わせている私だからこそ出来る道を今、歩いています。「薬学部に行かない?」という言葉を聞いた時には思い描いていなかった未来。この道を目指してやってきたわけではないですが、自分をフル活用できる場面に到達した事は大きな喜びです。

目標が見えなくなって進路に悩む人もいらっしゃるかもしれません。でも「今が将来にどう役立つか」を敢えて判断せず、ただ歩いていても、いつか振り返った時に自分の道は出来ているものです。道は先にあるものではなくて、自分で創るもの。道の声を信じ、次の一歩を出し続けて下さい。

(1979年卒・高校21期)宮本直治(62歳)

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