学校ブログ

卒業生~母校は母港になる

No.62(19期)私に世界史の面白さを教えてくれた新田先生に捧ぐ

2023/02/15

私に世界史の面白さを教えてくれた新田先生に捧ぐ 浅暮三文 

はじめまして。かなり昔に雲雀丘を卒業した小説家の浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)と申します。売文業は「筆は一本、箸は二本。追い付かないのは当たり前」といわれておりまして、還暦を超えたというのに未だに懐が寂しい限りです。私は現在、東京在住ですが都下の書店が三百軒を切ったありさまでして、本当に書籍が売れません。ベストセラーなどとは縁遠い小説家としては未発表の原稿が在庫になっている次第なんです。

そんな草稿のひとつにヨーロッパを舞台にした歴史譚があるのですが、どうしても世に問いたいと忸怩としています。どうも私が面白いと思うものと世の中がよいと思うものにズレがあるようで困ってしまいますが、自身が面白いと思うものしか書けないのですから仕方ないですよね。とほほ。

私は中学校で音楽に1を付けられたことで雲雀丘に入学したのですが最近はかなりの進学率だと聞きます。本当かな。と猜疑が湧くのは私が入学した頃、女生徒は優秀でしたが男子生徒は三太郎ばかりで、記憶によれば関関同立に現役合格したのは私一人だったのですよ。とはいえ私も鈍才でして、なんとか大学に滑り込めたのも新田先生のお陰だったのです。

私は高校で世界史を選択しました。理由は日本史に登場する人物の名前が似たりよったりで覚えづらいからだったような。さて世界史を選んだものの高校三年に控えているのは受験ですから山川出版の世界史用語集に赤線を引き続ける毎日でした。問題集と悪戦苦闘していても歯が立たず、どうしたかというと毎晩のように分からない問題に関して新田先生のご自宅に電話したのです。「先生、これはなんのことでしょうか」すると先生は大事典をひもといて解答してくださいました。

ある夜、太平天国の乱に続く流れをご指導たまわり、翌日の授業と内容が重なったのですが「浅暮、答えよ」と言われ、義和団が頭に浮かばなかった私に「昨夜、何を勉強したんや」と叱られたのが記憶に残っています。そんな夜の電話問答があったればこそ、今となって世界史の面白さに開眼しているのだと思います。

この随筆のタイトルはお蔵入りしている小説の献辞として掲げようと思っていた一文です。いつ出版できるのか、はなはだ心許ないので先に献辞だけ起こしておきます。新田先生、ご笑覧を。尚、近著『我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を』990円(税込み)河出文庫が絶賛発売中です。書店、ネットでぜひお求め下さい。

(1977年卒・19期) 浅暮三文拝(注 ペンネームです)

pagetop