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進路の部屋

東京大学金曜講座ーイランから考える世界史ーLife Design Building at Hibariー

2020/06/01

高大連携講座

529日夕刻より、東京大学金曜講座が行われ、有志生徒が出席しました。今回は、東京大学教養学部教養学科准教授の大塚修先生に、「イランから考える世界史」をテーマにオンラインでご講義頂きました。

今回の大塚先生の講義では、中東イスラーム地域の中でも独特の歴史と社会を持つイランについて学び、ペルシア語の広がりを視点に、イランの国民国家形成のあり方を考える時間を持つことができました。アラビア語が宗教と法の言葉である一方、ペルシア語の習得は立身出世のために不可欠だったこと、イスラーム教は改宗を強制しないため、人々は旧来の慣習を維持しながらペルシア語を徐々に用いるようになったことを知りました。また、イランのトルコ系の人たちはトルコ語が話し言葉であったために、ペルシア語を文学語・行政語として用いましたが、それが異なる様々な言語集団に言語と文化的体験の共通性をもたらし、結果的に多言語国家イランの統合原理の一つとなって現在のイランにつながったことを学びました。このようなペルシア語圏の広がりから考える世界史は、受講生にとって、とても興味深いものでした。

一人の受講生からはこんな質問がありました。「もしペルシア語が書き言葉としてなくなっていたら」。これに対して、「歴史学では『もしも』はないけれど、アラビア語が優勢になっていたかもしれないが、アラビア語は習得が難しいとされるので広がっていたかどうか、どうでしょう・・・」と先生はお答えになりました。宗教の広がりと言語、そして国民国家形成におけるその役割などに加え、先生のお好きなイラン料理や美味しいお店のご紹介もあり、色々と楽しく想像しながら歴史を考えるすてきな時間となりました。さらに、「バザー」や、ペルシア語から中国語、そして日本に入ってきた「獅子」のような、日本語になっているペルシア語由来の語彙の紹介もあり、イランやペルシア語にますます興味をもった人もいるのではないかと思います。

「イラン」というアイデンティティを持ち、国民国家の形成に至る過程をどのように探るのか、研究をすすめるにあたり海外図書館の利用の仕方や研究生活の仕方などを伺えたこともまた、普段はなかなかできない貴重な経験です。その中で、先生の調査されてきた写本の一部を見せて頂く機会もありました。例えば『集史』編纂においてはラシード・アッディーンが編纂とされるけれども、もとはカーシャーニーが書いたものであることが、世界の様々な地域に出かけて原本や写本を自ら読むなかで発見され、論文として発表されたと伺いました。このように、文献の収集と史料を深く読むという地道なご研究のなかで、歴史の教科書を覆す大発見につながる可能性があるというお話に、歴史研究の面白さと意義を知った受講生もいるのではないかと思います。

今夜も講義は5時半に始まり質問に答えて頂いて9時。ご指導に感謝し、いつか雲雀っ子受講生の中からも歴史研究家が生まれることを願っています。 


先生のご著書を紹介します。

大塚修『普遍史の変貌:ペルシア語文化圏における形成と展開』名古屋大学出版会、2017


*進路部では、本校高校1年生対象に受講生を現在募集しています。詳しくはClassiをご覧ください。



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