学園ブログ

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学園自然百景

2024年09月20日

130.「ハチのムサシ」

~雲雀丘学園小学校教諭 天井比呂~

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「先生、これはなんというハチですか。」後期が始まって間もない頃、4年生のKくんがケースに入れ持ってきたのは腹に黒と黄色の縞模様の入ったハチでした。教室に入ってきたハチを入れ物で、ふたをしてつかまえたらしいのです。たいていの子どもは逃げていくことが多いのですが、大胆にもつかまえるという行動に出たのでした。博学のKくん、オスなら針がないからと。
 調べるとオオスズメバチとその場では答えたのですが、よく調べると、体が小さいこともあり、2本目の黒い帯が太いことから、コガタスズメバチであることがわかりました。どちらにしても考えると危険なハチでした。幸い、大声を出したり、騒いだりしなかったことから、大事には至らなかったのでした。彼の冷静な判断が功を奏したのでしょう。先ほどKくんが話していた針についてですが、クマバチのオスは針を持たないし、人間を襲うようなことはないことはしないことは知っていました。ただ、今回のことで、ハチの針が、産卵管が変化したものであることを知り、ハチのオスには基本的に針がないことを知りました。
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拡大したスズメバチ
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入れ物に入れて持ってきたハチ

 昭和の時代に「はちのムサシは死んだのさ」という歌が流行りました。そのころ「みなしごハッチ」というアニメも流行っていました。ハチブームとでもいうのでしょうか。先の歌は、学生運動の盛んだったころに亡くなった学生を歌ったということらしいのですが、当時は、その意味を封印して、童謡のように流行っていたのを黙認していたらしいのです。太陽というとてつもない大きな権力者に、蜂という小さな虫が、無謀にも立ち向かうという歌詞。ムサシというと、宮本武蔵をイメージします。となると、オスのハチということになるのですが、先に書いたようにオスには、毒針がほとんどないのです。オスのハチは、刺すような真似をするらしいのですが、刺すことはできないのです。勝手な想像ですが、ムサシがカタカナなのは、もしかして、無刺しをかけているのかもしれないと思ってしまいます。そうなるとますます無謀な体当たりということになります。無言の抵抗とでもいうのでしょうか。
 コガタスズメバチは、社会集団を構成する蜂の一種です。自分の社会を守るために、獲物の獲得だけでなく、相手を刺すという行為をするらしいのです。ただ、何もしない相手には、刺すことはありません。K君の捕獲したハチは、メスのようでしたから、毒針を持ちます。ただ、ハチは、敵とみなさなかったのかもしれません。無刺しで終わりました。後で聞くと、飼いたかったようですが、担任との話で、逃がしたと聞き、安心しました。