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親孝行・やってみなはれ

2018年07月06日

「教育は祈る気持ちで」

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 教員になって4年目、初めての高校3年の担任をしたときのことです。私は2組(外部からの高校入学組)、隣の1組は内部からの進学組で担任はM先生でした。70歳近いM先生は年齢も風貌も水戸黄門のような方でした。私は進学成績で1組に負けたくないと、M先生にライバル意識を持っていました。早稲田大学の合格発表では1組に完敗、M先生は「よく頑張ったのに残念でしたが、受験はこれから。国公立大まで諦めずに頑張りましょう」と。私はそれを素直に聴くことができませんでした。国公立大学の二次試験の日、我々は職員室でただ時間のたつのを待つばかりなのに、M先生は授業もないのに教室に行かれたのです。そして、誰もいない1組で重い生徒の机(机と椅子連結型)を運び、丁寧に清掃して一人一人の机上を雑巾がけしながら、小声でその生徒を激励していました。これが、このクラスの強みかと思っていると、M先生は私のクラスに入って、同じように掃除をし、机上を拭きながら「A君、頑張れよ、大森先生が言っていたことを思い出して、落ち着いて・・・」と。私は恥ずかしながら、隠れてずっと見ていました。
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写真は安積高校歴史博物館の机

M先生のその姿を見てからです、もう、M先生に勝ったとか負けたとかの気持ちはなくなり、M先生とともに頑張りたい。M先生に喜んでもらいたいと思うようになったのは・・・。それから37年、結果を追うことなく、二次試験の日は密かに掃除をし、生徒の健闘を祈って来ました。毎年のように、生徒達が奇跡を起こしてくれるのです。今も験を担いでいますが、私の教育の原点は、「教育は祈る気持ちで」と背中で語られた今は亡きM先生の姿なのです。
(中学校・高等学校 教頭 大森茂樹)