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親孝行・やってみなはれ

2018年03月30日

「清掃」は心の鏡―「人間力」が「学力」の基盤―第2弾

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 今回は、誰に言われるでもなく、誰も見ていないところで、黒板をきれいに消してくれていた生徒のことを紹介します。

 数年前、私が高校2年生の生物の授業を担当していた時のことです。授業に行くといつも黒板がきれいに拭かれていて、まるで新品のようでした。ある日の補習後、ほとんどの生徒が帰ってしまったとき、一人の男子生徒が黒板に所狭しと書かれていた文字を丁寧に消し始めたのです。上下に、左右にと何度も何度も拭き、黒板は新品のようになりました。20180330-1.jpg私は、感謝の気持ちを伝え、これほどまでに時間をかけてきれいにしなくてもいいのにというようなことを言ったところ、彼は、「皆が授業を気持ちよく受けることができるほうがいいから」と平然と言ったのです。教室の黒板がいつもきれいなのは彼だったのです。進路指導部長をしていた私は「将来何になりたい? 希望はある?」と尋ねたところ、彼は「獣医になりたい」と言いました。私は、「これほどまでに、他人のことを気遣うことができる君なら、獣医もいいが、医学科に行ってほしいなあ」と言いました。彼は、自分の学力では無理だというようなことを言いましたが、「“無理”は、自分で限界を作る言葉、君の誠実さは何よりの君の強みだから、医学科を目指してみてはどうか。得意な生物を軸に頑張ってみないか」と話しました。その後、彼は生物の授業でも積極的に質問し、また放課後の生物オリンピックの勉強会にも参加するだけでなく、専門書までも学び始め、生物オリンピックで銅賞を受賞し、サントリーの研究者体験で学んだことがAO入試で出題されるという奇跡もあり、難関の国立大学医学科に見事合格しました。
 彼の誠実な生き方を見て、天が応援してくれたのではないかと思います。丁寧な清掃をする人は乱れた邪な心がなく、謙虚に、地道に学ぶ精神を持った人だと思います。だからこそ、学力も伸び、天に応援してもらえるような人になっていくのではないでしょうか。40年間の教員生活を振り返ると、人間力をある人に奇跡が起こっているように思います。
(中学校・高等学校 教頭 大森茂樹)