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親孝行・やってみなはれ

2022年12月09日

旅の思い出

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 私は、大学生時代にバックパッカー旅行の面白さに目覚め、20代の頃はまとまった休みがとれると、アジア、中東、欧州の国々を気ままに旅していました。当時は、まだスマホという便利なツールは無く、ガイドブック片手の行き当たりばったりの旅は、日々新たな出会いやハプニングがあり刺激的でした。
 一番鮮烈な思い出がある場所は、20代半ばに訪れた、インド東北部に位置するヒンドゥー教最大の聖地バラナシです。ガンジス川のほとりにある古い街で、川岸には沐浴場と火葬場とバラモンが祈りを捧げる祭壇が何百メートルも連なり、迷路のように入り組んだ路地裏では、野良牛や野生の猿が我が物顔で徘徊し、様々な香辛料や得体の知れないにおいが漂う、生と死、聖と俗が隣り合わせの混沌とした空間。秩序立った日本の社会とは対極ですが、何でもありで全てを包容してくれるような、不思議な居心地の良さを覚えました。
 川辺に座り、悠久のガンジスの流れを眺めながら思索に耽ろうとしても、あちらの人々は私を放っておいてくれません。物売りの少年、物乞いの老人、自称ガイドの怪しいおじさん等が次々と傍らに来て話しかけてきます。その中に、大沢たかおが主演したドラマ「深夜特急」のインドロケに出演したという青年がいて話が弾み、彼の家に招かれチャイをご馳走になりました。宗教の話題に及んだ際、「神様は本当にいると思っている?」と彼に尋ねると、「いつもここにいる」と自分の胸に手をあて微笑んだ顔が印象的でした。
 社会人になって仕事にも慣れ、少々中だるみを感じていた時期に旅したインドでは、そこで暮らす市井の人々と接して、漲る生へのパワーに圧倒されました。彼らがメメント・モリを体現しているように思えたことで、自分が漫然と日々を過ごしていたのを省みて、あらためて、自分がやりたいことやキャリアプランを見つめ直し、モチベーションを上げるきっかけになりました。
 今や、ICTの発達で、家に居ながらにして世界中の情報が瞬時に簡単に手に入りますが、リアルに現地を訪れることで得られる、偶発的で感情を揺さぶられるような体験があります。コロナ禍が収束したら、再びそんな体験を味わう旅をしたいと思っています。

(雲雀丘学園中学校・高等学校 事務長 荻野 孝之)