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親孝行・やってみなはれ
2024年11月29日
素っ気ない「配慮」
30年ほど前の話です。当時、大学入試の地方会場は少なく、私は自宅から離れた場所で受験をしなければなりませんでした。センター試験(現在の共通テスト)の会場すら近くにはなく、2泊3日で家を離れることに。受験に出発する日は緊張していました。
「頑張ってきます」と父に声をかけると、夜勤あけで横になっていた父が一言、「どこに行くんや?」。なんとも拍子抜けした返事でした。当時の父は私の進学にまったく関心がないように見え、大学入試の仕組みも、「関関同立」という言葉さえも知りませんでした。進路の相談をした記憶もなく、いつも母が「あなたのやりたいように頑張れば」と声をかけてくれました。
そんな父が変わったのは、センター試験から2か月後。第一希望の大学から合格通知が届いたときのことです。そばにいた父にすぐに報告すると、「よかったな」とぽつり。いつもながらの素っ気ない態度でしたが、その夜「入学手続きは俺が行く」と父が言い出しました。
特急電車に揺られながら父と二人、これから入学する大学のことやこれまでの受験勉強のこと、これから始まる一人暮らしについて、ゆっくりと話すことができました。そのとき、父は無関心なふりをしていただけで、実は私のことをずっと気にかけてくれていたのだと気づきました。確かに、受験の細かなことや勉強の中身まで父に口を挟まれると、受験生としてはつらかっただろうと思います。素っ気ない態度は父なりの「配慮」だったのかと、じんわりと嬉しくなりました。
(雲雀丘学園中学校・高等学校 教頭 道北 秀寿)