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親孝行・やってみなはれ

2020年05月11日

最後の親孝行

 私が母にした最後の親孝行は、写真を見せたことでした。
 18年前、私は、1年生の初めての担任でした。5月に帰省し、入院していた母を励ますために思いついたことが、担任をしていた子どもたちの入学式の写真を見せることでした。「○○くんは、元気に挨拶をしてくれるよ。」「○○さんは、恥ずかしがり屋だけど、言うべきことはしっかり言えるよ。」などと、36人それぞれ紹介していきました。母は、「うん、うん。」とうなずきながら、とても穏やかな顔で聴いていたのをはっきりと覚えています。
 母は、写真を見た1週間後に亡くなりました。母が私とまともに話せたのは、その日が最期です。今思えば、母はもう長く生きられないことは分かっていたのでしょう。新入生の希望に満ちた表情から元気をもらったことはもちろんのこと、私の教師としての姿に触れ、親として少し安心したのではないかと思います。母のあの表情が全てを物語っていました。
 母が病気になって、洋服などのプレゼントもしましたが、最大の親孝行は、たった1枚の写真だったと感じています。そして、この経験から、我が子が生き生きとした表情でいること、命を大切に毎日を過ごすことこそが大切な「親孝行」だと、親となった今、確信しているのです。

(小学校 5年月組担任 S.K)