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親孝行・やってみなはれ

2021年07月02日

親の辛抱

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 6月末の数日、他校を訪問したり、講演を聴講したりさせていただきました。キーワードは自主性の育成、自立した人格の育成、生きる力の育成に向けて、ということでしょうか。
 自主性、自立等の言葉は学習指導要領の改定時にはいつも大きなテーマとして言われ続けてきました。そうしてそれに沿って、いろいろと教育上の工夫がされているわけですが、自己肯定感等、様々な指標をみると一向に上昇せず、むしろ低下傾向にすらあるということが指摘されています。教員、保護者が一所懸命に取り組んでいるのにも関わらず。
 しかし、私は子どもたちに「手をかけすぎている」ことがすべての要因ではないかと思っています。わからないと困っていると机間巡回時に先生が手取り足取り教えてくれる、自分は待っているだけです。ご家庭でも子どもたちが自ら意思決定する機会に介入し過ぎてはいませんか。学校でも家庭でも手をかけすぎていることが子どもたちの自主自立を阻害している大きな一つの要因ではないでしょうか。
 私は高校から親元を離れ、下宿生活を送りました。下宿代だけは送ってもらいましたが、家に帰るのは長期休暇の時だけでした。勉強も生活も人付き合いなどについても、全く親の助けやアドバイスはありません、というより頼りようがありませんでした。それでも何とかやりくりをして卒業し、大学まで行くことができました。進路についても費用の面以外相談したことはありません。親は「私にはわからないから、自分で考えて好きなようにしなさい。」の一言でした。私事で恐縮ですがこうした中で、分からないことでも友達に聞いたり、自分で判断して諸事処することを身につけていったように思います。今になって聞きますと、親も随分気にかけていたようですが、離れているのでお金以外は手伝いようがありません。愛情をもって、子どもを信じて見守るしかなかったようです。私に自主性があったかどうか、わかりませんが自ら意思決定していくことについては慣れていったのは間違いありません。しかしその土台に親の深い愛情があったことも十分理解しています。
 「かわいい子には旅をさせろ」と言われますが少子化の今の時代、親にとっては大変、勇気のいることです。たとえ、住まいは一緒でも旅はさせられます。「あなたの人生だから、私にはわからない。自分で好きなように決めなさい。」という言葉がこどもの成長にとって益々重みをもって迫ってくるのではないでしょうか。
 親の愛情は親の辛抱なのです。子どもたちばかりでなく、親もやってみなはれ、です。

(雲雀丘学園中高等学校 副校長 成地 勉)