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親孝行・やってみなはれ

2022年04月15日

最後に残るもの

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 「これ以上できる治療はなく、今後は数年に渡って病状が進行します。自宅完全看護か施設への移行を考えてください。」入退院を繰り返していた父に突然の退院勧告がなされたのは夏休み直前でした。筋力、認知機能が徐々に失われていく父を一人施設に送ることは忍び難く退職を申し出たところ、学園の配慮により介護休職後の退職扱いとなりました。「孝道を人間の根本義とする学園」に集う人々…当時のクラスの子ども達、保護者、同僚の皆さんの理解と支えを受け、私は父の人生の最後に同行する幸を得ました。
 父の毎日は壮絶で「これからは〇〇ができなくなります。」という宣告の連続でした。3カ国語を流暢に話し秀才と呼ばれた頭脳や、働き者でスポーツ万能だった身体は衰え、食する、眠るという人間に残された最後の楽しみすら奪われました。時にはそんな父を馬鹿にする相手も現れましたが、父は全てを受容し、希望を失わず耐え、家族や周りの人を愛し、全てに感謝して逝きました。ああ、最後に行くべき道はこの道なのだと心に刻まれました。
 父を天に送って10年。今一度、舵を取り直したいと思います。

(雲雀丘学園幼稚園 学年主任 慎 香)