学園ブログ

学園ブログ

  • ホーム
  • 親孝行・やってみなはれ

親孝行・やってみなはれ

2022年07月08日

鈍行大垣行き

20220708-0.jpg
 19歳になる年に,大学入学と同時に上京し,一人暮らしを始めました。第1希望ではない大学に入学した私は,意欲的に学ぶ事も少なく,ただ講義の時間だけが過ぎるままでしたので,教職必修科目を落とすなど,1年目の成績は散々でした。もう一度希望の大学に入り直そうかと考え,両親に相談に行ったのが連休前でした。新幹線の料金も高額で,長期の休みの時しか帰省はしなかったので,もったいないと思い,東京駅午後11時28分発普通大垣行きに乗って帰ることにしました。姫路到着は翌日のお昼12時前です。
 平塚辺りまでは,多くのビジネスマンが乗っていましたが,南アルプスに登る登山者が金谷まで,その後は,様々な事情を持った人がボックス席に1~2名乗っているようでした。たまたま,私の前に,相生の祖父母のところに行く大学4年生の方がおられて,おしゃべりをすることになりました。私は,東京に憧れて大学生になったこと,でも,第1希望の大学ではなかったこと,勉強をなめていて,単位を落としたこと,もう一度受験をしてみようと考えていること,教師になりたいことなどを,たくさん聞いてもらいました。その方は,有名私立大学の政経学部の4年生で,新聞社に就職が決まっておられました。たまたま,その大学は,私も受験しており,縁はなかったのですが,憧れの大学でした。
 その方は,「君は,いい大学に入ったね。少人数で教えてもらえる大学は恵まれた環境だよ。」「大学の先生と話す機会が多いほどたくさん学べるよ。」などと,マスプロ授業が多い私立大学より恵まれた大学にいることを教えて下さいました。
 そして,どこの大学を出たかということは問題ではなく,どんな人と出会い,どんな本に触れ,何を学んだのかが大切だと言うこともアドバイスして下さいました。曇りガラスがきれいに拭かれたように私の心がすっきりしたのを覚えています。 
 次の日の早朝,20分間停車の名古屋駅で一緒に食べたきしめんの味とともに,心に深く刻まれた青春時代の思い出です。
 姫路に着いた私は,実家に帰り,中途半端な時期の帰省に両親は,不思議そうにしていましたが,夜行列車での思わぬ邂逅と,悩みがすっきりしたことを話して,翌朝,新幹線で大学に戻りました。ただ1つ,今になって悔やまれるのは,その方と連絡先の交換をしなかったことです。そして,現在は東京発鈍行大垣行きは運行していないことも残念なことです。

(雲雀丘学園小学校 校長 井口 光児)