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2025年06月13日

返事のこない年賀状

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「お母さんに年賀状書いてるねん。」
私は児童養護施設で学習ボランティアをしています。ある年末、子どもがそう言いながら年賀状を書いていました。「お母さんからの年賀状、楽しみやね」と声をかけると、「来ないよ。一回もきたことない。でも書くねん」と返ってきました。
その子は字を書くのが苦手です。それでも一文字ずつ丁寧に、返事のない年賀状を書いていました。その小さな背中を、私は今も忘れられません。
社会では「親孝行しなさい」「親を大切に」と子どもに求めがちです。でも、親に虐待され、育児放棄され、それでもなお親を慕い続ける子どもたちの姿を見ていると、問いかけたくなります。

子どもに「親孝行」を求める前に、私たち大人や社会は本当に子どもを大切にしてきただろうか?子どもはどんな親もありのままで愛している。大人はどうだろうか。どんな子どももそのままで受け入れ、愛しているだろうか。

年賀状を書いていた男の子は、この春5年生になりました。今、自分の生い立ちと向き合いながら成長しています。私は親代わりにはなれないけれど、学習ボランティアとして、これからも彼のそばで静かに見守っていきたいと思っています。

(雲雀丘学園中学校・高等学校 スクール・ソーシャル・ワーカー/英語科 服部恵子)