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日々のブログ

2026年04月09日
父のこと

私の父は高校の数学教師で、とにかく本が好きな人でした。
一昨年、『成瀬は天下を取りに行く』を読んだ私は、姪っ子に勧めようと実家に連絡し、ついでに父にも、
「成瀬、読んだ? 面白すぎた!」と伝えると、
「いつの話? 続編も読みました」
78歳の守備範囲、恐るべしです。
そんな父にどうして数学の先生になったのか、聞いたことがあります。
「数学は持ち物が少ないからね」
田舎ではよくある話で、私も妹も父が勤務する高校に入学しました。そして、教科書とチョークだけを持って授業に向かう父や、職員室で(勤務中に!)本を読む父を知ることになります。
「お父さんより本を読んでいない人が国語の先生になって、大丈夫なんだか?」
と笑われながら、私は荷物の多い国語教師になりました。
20年ほど経った頃、
「お母さんには内緒だけど、お父さんでも胃薬が手放せない時期があったんだよ」
と、父はそっと教えてくれました。
今年の正月。テレビを見ていて「この人の本、面白いよね」と呟くと、少し間があって、
「『武士の家計簿』。あれはよかった」
寝てると思っていたのに、完璧に返してきた…。
常に何冊も傍らに置き、晩酌の時でも本を読んでいた父。
「もう本を読むスタミナがないんだよね」
この春帰省したとき、80歳になった父は言いました。ゆっくりゆっくり新聞を読み、孫に本をねだられるのだと嬉しそうに話してくれました。
(雲雀丘学園中学校・高等学校 高2担任 国語科 吉村 里香)
