学園ブログ

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常務理事便り

2022年11月28日

Vol 32 日本で最難関の試験

~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~

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 さて、日本で最難関の試験は何でしょうか。
司法試験や公認会計士の試験は難関の代表のように言われますが、それとても概ね10パーセント以上の合格率はあります。私の知っている限りでは、剣道の八段審査が最も難しい試験ではないかと思います。合格率は1%以下です。受審資格としては剣道七段を取得してから10年の修業期間が必要です。最短で46歳での受審が可能です。原則年2回、5月と11月に行われ、毎回1500名~2000名弱の有資格者の七段が挑戦します。今回も11月24日、25日に東京で行われました。2日間にわたる審査の受審者数は1674名、合格者は16名でした。

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 2分30秒の演武(対戦形式)を2回行い、一次審査をパスしたものが、二次審査に臨みます。ここでも同じく2分30秒の演武を2回行い、9名の審査員が基準に照らし8段位にふさわしい剣道をすることができると認められた者だけがその栄誉を授かるわけです。私もここに初挑戦したのは52歳の時でした。爾来、挑戦し続けていますが、うまくいきません。
 今回、一緒に稽古に励んでいる身近な方が2名、この難関を突破しました。一人は50歳代、あと一人は70歳代の方です。両人ともよく知っていますが、大変熱心に稽古に励んでおられる、立派な方々です。合格してしかるべき人が合格され、周りにいるものとしてその合格を心から喜びたいと思います。
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 一方、同じように稽古に励んでいる私はまたしても不合格となりました。不合格の境目は一体何なのか、と審査のたびに考えてしまいます。現象的には機会に合った、思い切った有効打突が出せていない、ということに尽きるのですが、どのようにしたら、そうした技が出せるのか。それはほとんど、心の問題であるような気がします。
 驚懼疑惑(キョウクギワク)、剣道ではこれを四戒と言って強く戒めています。相手に対しているときに起こる心の持ちようです。打たれるのではないかと恐れて思い切った打ちが出せなかったり、相手の動きに惑わされて自分を見失ったりすることを言います。今回合格された方と自分自身を比較すると結果的にはこの部分の違いが一番大きいように思います。驚懼疑惑を捨て去ったときにはじめて起死回生の技が出せるのでしょう。そのためには激しい稽古、濃密な稽古により自信をつける他、道はありません。
 おそらく、物事を成就させるために必要な根源的なものはすべて同じではないかと思えます。恐れや疑心暗鬼、迷いを捨てるくらいに没入して初めて事は成就するのでしょう。
 修行に終わりはありませんが、通過点はいずれ来ると信じて日々努力を怠らないことも事の成就のためには必要です。斬新な商品を次々と生み出してきた新進の家庭電化製品メーカーのバルミューダ社の寺尾玄氏はきっとこのように言うでしょう。「あなたが八段位に合格しないと誰が証明できますか?証明は誰もできないはずです。できない以上はその可能性はあるということです。そのためにでき得る努力や工夫を怠ってはいけません。いつか昇段できる可能性はまちがいなくあるのですから。」と。