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2025年11月21日

老後の「やってみなはれ」

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 この春,90歳で母が亡くなりました。周りの人から「一番,元気だ」といわれるのが自慢で,健康の秘訣は毎朝の体操とウォーキングだったと思います。手料理をつくるのも好きで,安価で健康に良いと聞けば,何でもチャレンジしていました。子どものときには,そのチャレンジングな手料理に辟易したこともありましたが,いま思えば,子どもの健康を願う母の愛だったのでしょう。
 大学剣道部の先輩に90歳でも現役で稽古を続け,剣道,居合道ともに範士八段になられた方がいらっしゃいました。あるとき,秘訣を伺うと「毎日,稽古しなさい。昨日できたことは,今日もできます。今日できたことは明日もできるでしょう。無理はしないで,少しずつでも毎日継続することが大切です」とのことでした。なるほどと納得しましたが,その時の私は,肝心の「毎日」に無理を感じてしまいました。
 其道の道歌に
  「無理という無理なる技を仕尽くして,まことの技に入るが技なり」
というのがあります。
 今日できないことを無理と思わず,やり続けていることで,できるようになるという意味だと思います。特に,成長過程では無理と感じても,無理と思わず,やり通せば力がついていくのでしょう。「やってみなはれ」の言葉の前にも,「無理と思わず」あるいは「無理と言われても」がついているような気がします。それは,人の成長への信頼の証,成長を促す言葉なのではないでしょうか。
 私自身は,還暦を超えて,細かいものは見えなく,音は聞こえにくく,無理なことが自然に増えてきました。走らなければ走れなくなる。階段を使わなければ階段が使えなくなる。焦るばかりで成長しそうにはありませんが,これ以上「無理なること」を増やさないように,もうしばらく,自分で自分に声をかけてみようと思います。「やってみなはれ」と。

(雲雀丘学園中学校・高等学校 高3担任 理科 辻川 義弘)