学園ブログ

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常務理事便り

2025年11月11日

Vol32 涙を越えて

~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~

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 11月8~9日、愛知県春日井市で全日本女子学生優勝大会が開催されました。団体戦で大学日本一(女子)を決める大会です。鹿屋体育大学との熾烈な戦いを制した日本体育大学(以下、日体大)が優勝の栄光に輝きました。日体大は優勝候補の筆頭である筑波大学(関東大会優勝)や中央大学といった強豪に打ち勝って頂点に立ちました。
 こうした戦いの中である光景に出会いました。準決勝で日体大は中央大学と戦いましたが、この戦いにぎりぎりの攻防で勝ち、決勝に駒を進めました。負けた中央大学は控えに帰り、交わす言葉も失い、悔しさに打ちひしがれているようでした。特にこの戦いで敗れた選手は号涙していました。その選手は夏の個人選手権では見事に日本一になった選手でした。勝ちを期待されている中でよもやの敗戦、しかもそれがチームとしての敗戦に繋がる負けだっただけに悔しくて、悔しくて、又チームに申し訳なく涙が止まらなかったのではないかと想像しました。
 しかし、勝負事においては、どんな強者も負けることはあります。永遠に勝ち続けることはありません。勝負に勝つということを目標に励むことは試合をする者にとっては当然のことですが、勝ちの裏には必ず負けがあるのです。もし、勝負がすべてであれば、一生懸命にやっても負け続ける者は全く浮かばれないことになってしまいます。武道やスポーツに打ち込み、心身を錬磨する目的は何でしょうか。勝負相手に勝つことは一つの目的ではありますが、最大の目的ではないと思います。自分に勝つこと、克己こそが最大の目的ではないかと私は思っています。
 きつい練習を嫌がる自分、少しでも楽をしたい自分、誓いを立てたが三日坊主で終わってしまう自分、この試合に負けたらどうしようと思ってしまう自分、上手くいかなかったらどうしようと思ってしまう自分、こうした弱い自分に打ち勝って、稽古や練習に懸命に取り組める人間になることが最大の目的のはずです。強者に敗れたとしても、昨日の自分を越えた何かを少しでも獲得できれば大勝利なのです。
 即ち、弱い自分を克服していくことが剣道の最大の目的です。ですから、試合という勝負に負けても気にすることはありません。日々、昨日の自分を越えられたかを唯一の尺度にして精進してほしいと思います。本当の勝負は自分との闘いなのです。社会に出て、仕事についても全く同じです。弱い自分が様々な場面で顔を出してきます。その弱い自分に流されず、正面から困難に向き合えるか、努力を続けられるか、が行く末を決めると言っても過言ではないでしょう。
 号涙していた彼女は勝負には負けましたが、前日の自分を越えていくなにかをきっと獲得したはずです。もしそうであれば、あなたは間違いなく大勝利者なのです。