学園ブログ

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常務理事便り

2025年08月04日

Vol20 小さな巨人が世界を制す!

~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~

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 先週末から欧州・ウェールズで行われていた全英女子オープンゴルフ選手権で日本の山下美夢有選手(24歳)が見事に優勝しました。日本人としては6年前に優勝した渋野日向子さんに次いで2人目の快挙でした。また、2位にも同じく日本人の勝みなみ選手が入り、天晴れな姿を見せてくれました。
 山下選手は大阪府寝屋川市出身、大阪の高校を卒業し2019年にプロ入り、20年に日本女子ツアーに参戦、22年、23年と連続して日本の賞金女王に輝き、十分に実力をつけて、今年から女子ゴルフツアー最高峰の米女子ツアーに参戦しました。本大会も場所は欧州ですが主催者は米女子ツアーです。山下選手の実力は先に述べた実績でもわかるように日本トップレベルですが、世界の強豪がひしめく米女子ツアーで立派な成績を修めることができるかどうかは未知数だったと思います。彼女は日本人としても決して体格にめぐまれた方ではありません。プロファイルを見ると身長は150cmですから、おそらく日本の女子プロの中でも小柄な方です。プロの世界ですから、体格、体力、パワー等の元来備わっている身体的能力は戦い抜くうえで重要な要素となることは間違いありません。まして、米女子ツアーでは恵まれた体格の女子プロがそのパワーを生かして大きな飛距離を稼ぎ、ゲームを有利に展開するパターンがよく見られます。山下選手は飛距離が出る方ではありません。米女子ツアーの記録を紐解くとドライバーの飛距離は全体で146位、しかしその正確性は全体4位、バンカーからのパーセイブ率は2位、パターのアベレージは10位という数字が並びます。飛距離は出ないが正確性とグリーン周りを研ぎ澄ませて世界の一流選手に伍していることが分かります。劣る部分を得意分野で覆い隠してしまう戦略です。多くの日本人選手が身体的能力に勝る欧米選手と同様な飛距離を求めてスイング改造を行い、結局、スイングを崩してしまい、正確性を失い、グリーン周りのショートゲームも不振に陥り、撤退した事例がいくつもあります。こうした轍を踏まぬよう、得意分野、秀でた分野を更に伸ばして差をつけることに徹底しているように思われます。しかし、「言うは易し、行うは難し」です。大変な努力がここには隠されているに違いありません。今回の優勝インタビューでそのことが伺える一言を彼女は発しています。「地道にコツコツとやってきたことが良かった。」何気ない、当たり前の一言ですが、そこには飛距離を追わず、正確性を高める努力とショートゲームの精度を高める努力をコツコツと徹底してやってきた成果が出た、という自負が隠されているように思えます。
 「強みを伸ばす」、そのためにはそこに集中徹底して、「地道にコツコツ」とやっていくしかないということを教えてくれた含蓄ある優勝コメントでした。